番外編7 平和を守りたい
学校はないので、ラヂオでの通信教育だ。
『いんいちがいち、いんにガニ、いんさん画賛……』
同じ事を繰り返して聞くだけなので、頭に残るから覚えやすい。
雅先生の教え方も、分かりやすくて良かった。
読み書きも各村から交代で講師が来てくれるので、俺達もそれなりに文字は読めるようにはなってきた。
本当に知識は大切だ。海彦には感謝しかない。
アマラ嬢が進めている、勇者神社を建てる計画には村の誰もが参加している。
生活が落ち着いたら建築が始まるだろう。
さて、俺達獣人族も作って売り出した物がある。陶磁器である。
粘土・釉薬・窯の知識は、もちろん海彦が教えてくれたものだ。
原料はニュクス湖にすべてあり、もともと自分達で焼き物を作っていたので、コツをつかむのに時間はかからなかった。
できあがった白い皿を見たときは、感動したものだ。食器は飛ぶように売れた。
それ以上に売れている物がある……便器だ。やはりトイレはなくてはならない。
排泄物を放置するのは良くないと知ったので、各村で下水道の整備は進んでいる。
そのままにしておくと、虫は湧くし臭いからな。
そして綺麗な洋式便器が好まれる。水で流せば汚れは残らないので便利だ。
ただ焼き物なので、失敗作は必ず出てしまう。
それを壊そうとした所、買いつけにきたエルフに止められた。
「捨てるなら安く売ってくれ! 欠けたところは、貝殻パテと金継ぎすれば補修はできる。あとは樹脂を塗れば使えるんだ。公衆便所に使ってもいいし、壊すなんてもったいない!」
「いや職人としてのプライドが……失敗作を売りたくはない」
「そんなものはドブに捨ててくれ!」
こうして、便器は残らず買われてしまう。やや良心が痛む。
……次の日、俺は交易所で野菜を買っていた。
「不ぞろいで形が悪いから、家畜の餌にする? もったいないわ! 腹に入れたら関係ない。生産者の誇り? それこそ豚のエサでいい。いいから、その野菜を安く売ってくれ!」
昨日のことは、とうに忘れた。
まとまった金が入るようになり、女房達も欲しい物を買っていた。
鏡と化粧品だ。暇さえあれば鏡とにらめっこして、顔や肌に何かを塗っている。
見ていた俺は素直な心で、余計な一言を言ってしまう。
「あんまし変わんねーじゃねーか? ――へごおぉ!」
思い切りぶん殴られた。息子は……
「母ちゃん、美人だ!」
それからしばらく、息子のおかずは豪華になり、俺は余り物しか食わせてもらえなかった……シクシク。
そして子供らにも自転車を買ってやることができた。
ただ数台しかないので、交代で乗り回している。それでも不満はでない。
なぜなら、他にも遊び道具が増えたからだ。スケートボードにキックボード。
作りが簡単な物はたくさん手に入り、絵を描き込んでる子供もいる。
それとバスケットボード。球技はいろいろあって奥が深い。
場所をとらない玉入れは、村であっと言う間に流行る。やってて楽しいからな。
これもスポーツ大会でやるべきだろう。女達の試合は見たくないが……。
俺達はトレーニング方法を知り、運動器具のおかげでかなり強くなっていた。
武器もあるし、いつでも戦える……魔物?
見たら殺す! いたら殺す! 攻めてきたら皆殺す!!
俺達の平和をおびやかす者は許さん! 容赦はしない!
大軍勢が来ようと、勇者の知識と全部族の力があれば負けるわけがない。
ただ、目下の敵は……
「あークソ猪め! 畑の作物を食い荒らしやがってー! 堀を深くして柵を強化だ。おのれ鳥ども! 人が作った稲穂を食うんじゃねー! 電動こけ……案山子だ! あとは精霊に守らせる!」
……ああ、毎日忙しい。
「これにて番外編も終わりです。次の章はいよいよ……なんですか? リンダさん」
「オイ作者! アタイが出てないだわさ。ヒロインは出すって、言ったよな?」
「雅様は出番があったけど、私も少しも出てない……」
「あ…………忘れてました。ごめんなさーい! ブクマ・評価お願いしまーす!」
「コラー! 逃げるなー!」