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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第六章 湖めぐり旅4
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番外編4 部族対抗バレーボール大会

 会場内には、まだ一般に売っていない物が展示され、色んな機械があった。


 体験こーなーで、俺は息子を遊ばせるのに小金貨を払う。


「自転車はえー! おもしれー!」


 息子はヘルメットを被って靴を履き、ペダルをこいでいた。幼い子供の脚力でもかなり速い。


 本気で走ればついていけると思うが、いくら獣人でも長い時間は無理だ。疲れてしまう。


 ドワーフから使い方の説明を受けたあとは、転びもせずに自転車を乗りこなしていた。


 流石は俺の息子。女房もニコニコしながら見ている。


 仮設コースを何周かした後、息子は戻ってきた。


「父ちゃん、自転車欲しい!」


「分かった。金を稼いだら買ってやる」


「うん!」


 とは言ったものの、直ぐにはむりだろう。


 他の子供達も同じように親にねだっているし、大量生産には時間がかかる。


 柵の外にある別コースでは、蒸気・電動バイクの試験走行が行われていた。


 こっちは若者らが夢中になって走らせている。


 HAEEEE-! 目では追えるが、これは走って追いつけるものではないな。


 乗り物の種類もドンドン増えていく。ヘスペリスの発展はめざましい。



 昼、俺達はアリーナに入る。


 客席につく前に、3人分の弁当と飲み物を買う。入場料と合わせて金貨一枚だ。


 入場口から中に入ると、


「うわあー!」


 野外に作られたバレーコートがあり、その周りを階段状の椅子が囲んでいる。


 ここで部族対抗バレーボール大会が行われるので、俺達は観戦にやってきたのだ。


 選手は未婚の男達が、抽選で選ばれている。各部族2チームで控えの選手も多い。


 部族代表を選ぶにはかなりもめたが、予選をやっていたら切りがないので、勇者と族長達が相談して決めた。


「婚活の場にしましょう。試合で格好いいとこを見せれば、女性もなびくかも」


 海彦の言葉は大きい。常に俺達のことを考えてくれている。


 なので青年らは本気で毎日特訓をし、この日を迎えた。


 今はコート内での練習時間。かなり気合いが入っている。


 この間に観客が続々とアリーナに入ってきて、席が埋まっていく。


 俺達家族は座席に座り、弁当を食べることにする。自由席でかなり広い。


 座席の脇には板があって、これを肘掛けに乗せるとテーブルになる仕組みだ。


 ドリンクホルダーもあって、海彦の工夫には恐れ入るばかりだ。


 あとから聞いた話だと、


「日本は映画館も体育館も座席が狭くて、見とられん! 大きくしよう!」


 うっぷん晴らしに、指示をしたらしい。そのお陰でゆったりと座れている


 アリーナには風や日光をさえぎる屋根があるべきだが、俺達は気にしない。


 試合とはいえ戦いならば、自然の中でやるべきだ。


 狩りなら自分に都合のいい状況はなく、それでも勝たねばならない。

 


 コイントスのあとに試合が始まった。


「そーれ!」


 速いサーブに鋭いスパイク、見事なレシーブにブロック。


 試合は白熱して盛り上がる。俺も大声を上げて応援していた。


 三セットマッチ、我が獣人Aチームはボールを拾いまくって粘ったが、惜しくも敗れた。


 優勝候補のオークチーム相手に健闘した方だろう。


 すばらしい試合に、拍手が鳴り止まない。選手らは頭を下げて手を振ってくれた。


 両チームが退場すると、鉢巻きをした子供らが入ってくる。


 今度はドッジボールの試合が行われるのだ。



 すぐに試合が始まり、投げられた速いボールを、見事に受け止めると歓声があがる。


 選手の子供らは上手く避けては喜び、ボールが当たると泣く。実に微笑ましい。


 親の応援合戦には熱が入り、すさまじかった。


「うー、父ちゃん。おいらも試合に出たい!」


「もう少し大きくなってからな」


 まだ六つの息子は出れない。


 今大会は安全を考えて十歳以上、十五歳未満の子供が参加資格を持つ。


 子供でも力があるので、怪我をする恐れがあったからだ。可哀想だが我慢させるしかない。


 その代わりに女房の分も含めて、お菓子とジュースを買ってやる。


「あー、あとビールとつまみも」

「はーい」


 俺は売り子さんから食い物を買う。


 試合を見ながら飲むビールは格別だ。これはたまらん!


 やがて子供らのドッジボールの試合は終わり、残りはあと一試合。女子バレー。


 コート整備のあとに女子選手らが入ってくると、会場の雰囲気がガラリと変わる。


 練習からして、殺気だっていた。顔も険しくて恐ろしい。


「なんなんだこれは?」


 女子は九人制バレーで、こっちは参加に条件はなく、年齢制限もなし。


 ただ代表選手を選ぶのに、血みどろの戦いがあったらしい。


 噂なので、本当かどうかは知らん。そして女子の試合が始まる……。

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