占いは外れない
家の奥から出てこないので、フローラが呼びかける。
「大丈夫よ、ロリエ。こいつが何かしようとしたら、私が始末するから」
「……おいおい、そりゃーねえーだろ。でも、俺は挨拶をしにきただけだから、本当に何もしないよ。出て来てくれないか?」
「……本当? じゃー座ってて」
ロリエと呼ばれた少女は、ゆっくりと歩いて……こない。
一歩進んで、二歩下がる――後退してるじゃねーか。
やっぱり俺を警戒してるようだった。見ず知らずの男が来ては、無理もない。
ロリエは三角帽子を被ってケープを羽織り、カボチャのパンツをはいていた。
これは魔女ではなく、魔女っ子というべきだ!
魔法少女とは言いたくない! 言ってはならない! 俺のこだわりである!
ロリエの服装は青で統一されて、かわいらしい。
かなり時間はかかったが、ロリエは俺の前に座ってくれた。
おどおどしており、小動物を思わせる。つぶらな瞳で俺をじっと見ていた。
「初めまして、俺は幸坂海彦」
「私はロリエ。あなたは勇者様?」
「違うわ、変態の異界人よ。ロリエも注意しなさい。気をつけないと、手込めにされるわよ!」
俺は頭を抱える。
初対面で悪口を言いふらされたら、仲良くしようがないじゃないか!
流石にフローラに文句をつけようとすると、ロリエがかばってくれた。
「フローラ、少し言い過ぎじゃない。今までに訪れた異界人に、悪い人はいなかったわ」
「こいつの場合は少し特殊なのよ。初の大悪人になるかもね」
「ひどい、それじゃー占ってみるわ。やっていい? お兄ちゃん」
「えっ! 占い?」
「そうね、ロリエの占いは絶対に当たる。こいつを見定めるにはいいかも、悪人だったら殺しましょう」
「……ひでーな、俺は本当に何もしてないのに。まあいい分かった。占いとやらをやってくれ、ロリエちゃん」
これで俺の潔白が証明されれば、フローラの態度が少しはマシになるだろう。
俺はやましいことはしてないので、占いに期待する。
あと、お兄ちゃんと呼ばれて、俺は気分が良い。
山彦から呼ばれるのとはまた違う……あれから、弟はどうしてるだろうか?
ただし、俺はロリコンではない。ましてやペドフィリアでもない。本当だよー!
少女の仕草をみて、純粋に可愛いとは思った。
ロリエはカードを取り出して、テーブルにおいた。
「お兄ちゃん、山札の上に手をおいて、目を瞑って願い事を頭に浮かべてみて」
「わかった」
願いは一つ、日本に帰りたい。ただそれだけである。
「もういいよ」
俺が手を離すとロリエは山札の上から、上から順にカードをめくり、時計回りに十二枚のカードを並べた。
絵柄がありタロットカードのようだが、別段変わった様子はない。
「アルカナよ、幸坂海彦の真実と、未来を見せ賜え!」
「おおっ! すげー!」
カードが輝いて、垂直に立ち上がったのだ。
山札を中心に、カードが回り出す。これも魔法なのか?
ロリエは手を触れてはおらず、勝手にカードは動いていた。
やがてカードは、止まって倒れる。方向も位置もバラバラだ。
それを、じっとロリエは見ていた。占いの結果を読んでいるのだろう。
「えー、嘘!? こんなのって! やだ、恥ずかしい!」
顔を赤らめたロリエを見て、俺は不安になった。
やばい結果だったら、俺の命が危ない。神怪魚と戦う前にフローラに殺される。
固唾を飲んでいると、
「フローラ……お兄ちゃんは嘘は言ってないよ、良い人だよ」
「嘘!? 信じられない! コイツは変態よ!」
お前……さっき絶対に当たるって、言ってただろうがー!
俺を不埒者と決めつけて思い込んでいるから、どうしてもフローラは認めたくないのだろう。
「あんまり、お兄ちゃんを苛めるとひどい目に遭うわよ。もう止めなさいフローラ」
「う……分かったわ」
俺はホッとして、胸をなでおろす。少なくとも直ぐに、殺される心配はなくなった。
助けてくれたロリエは続けて言った。
「お兄ちゃんの望みは、これからの行い次第で叶うよ。だけどね、最後に決めるのはお兄ちゃんだよ」
「占ってくれてありがとう、ロリエちゃん。おかげで少しは希望が持てた。その言葉、心にとめとく」
「うん」
この時の俺は、その重大さに気づくことはなかった。
「ひょひょひょ、話は済んだかえ?」
突如、しゃがれた声が聞こえてきた。




