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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第六章 湖めぐり旅4
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城を作りたい


 ゆっくりとした行軍で、俺達は休みながらアルテミス湖に入った。


「おお、広い。女神の湖では一番大きいのう。まるで海のようじゃ」


「ですね。ちなみにアルテミス湖は日本の琵琶湖に似ています」


「なるほどのう。世界は違えど、どこか同じなのかもしれん」


 エリックさんは、後方のプリプリ号に移乗していた。


 前線で暴れたかったようだが、アンドレさんと騎士達から猛反対されて、下がるしかなかった。


 ゴブリンの数は多く、万が一のことがあってはならないからだ。


「王よ、部下の手柄を奪うのはめていただきたい」


「そうです、そうです! あははははは!」


「うむむむむ……」


 こうして王様は、後陣に引っ込むしかなかった。

 前線指揮は、将軍であるアンドレさんがることになる。



「陸地にゴブリンを発見!」


「他に敵影なし! 湖に小舟は見当たりません!」


 見張りの兵士が知らせてくる。


 作った双眼鏡のおかげで、遠い対岸の様子は丸わかり。


 ゴブリン側から、俺達は見えまい。


「よし、全速前進!」


 アンドレさんは急いで戦闘準備をさせると、ガレー船の速度を上げて向かっていく。


 奇襲攻撃だ!


 奴らが気づいた時にはもう遅い。


 雨のような矢が一気に浴びせられ、うめき声も出せないまま、ゴブリンは倒れ伏す。


 岸辺一帯の制圧が終わると、


「よし、重騎兵は小舟で上陸、橋頭堡きょうとうほを作れ! ゴブリンどもを近づけさせるな! ボウ銃隊は上陸を援護しろ!」


「イエッサー!」


 騎士を乗せたモーターボートが次々と、陸地へ向かっていく。


 全員が甲冑を着ており、さらに魔法士が盾精霊を召喚して守らせていた。


 これなら上陸前にやられる心配はない。


 小舟が止まると騎士達は陸にかけ上がり、槍と盾を構えて、湖を背にした防御陣形を組む。

 


 異変に気づいたゴブリンが、遠くから駆けつけてくるが、


「くらえ!」


「ギョエー!」


 遠くのガレー船から矢で撃たれ、近づく前に倒される。正確な狙撃だった。


 生き残った数匹が、慌てて逃げ去っていく。


 敵がいなくなったところで、第二陣・第三陣の上陸が始まる。


 工兵が桟橋を新たに作ると、ガレー船が横付けされて船腹が開いた。


「どうどう、暴れるなよ」


「ヒヒーン!」


 目隠しをされた騎馬が、手綱を引かれ船から出てくる。


 弓矢を防ぐのに馬鎧がつけられ、光り輝いていてカッコいい。


 騎士達は次々と馬にまたがっていく。重騎兵が勢揃いすると壮観だ。


 アンドレさんが先頭に立ち、号令をかける。


「出撃!」


「ウオオオオオオオオー!」


 いななきの後に、馬蹄ばていの音が響き渡る。


 砂塵さじんを舞い上げて、重騎兵の一団が駆けていく。


 逃げたゴブリンの後を追って、攻撃をしかけるのだ。



「急げ、急げー! もたもたするなー!」


 陸地では工兵と職人達が、小さい砦を作っていた。


 教えたプレハブ工法で、建材は加工済み。見る見る間に組み立てられていく。


 これぞ、豊臣秀吉公の一夜城。


 いや、それ以上に早く出来上がった。一時間ポッキリです!


 人海戦術でやればあっと言う間。


 あとは砦を囲む丸太の壁に油が塗られ、背の低いゴブリンは登れまい。


 やぐらも建てられて、兵士達は砦に入ってボウ銃を構える。



 やがて、アンドレさんが騎兵を引き連れて戻ってきた。


「……うーむ、やっぱりえぐいな。いくさはきれい事じゃない」


 騎士と馬はゴブリンの返り血を浴び、血まみれであった。


 ついさっきまでは綺麗だったので、このギャップは大きい。


 ヘスペリスに来る前の俺だったら、大量の血を見ただけで卒倒していただろう。


 化け物の相手ばかりしてきたから、今は感覚が麻痺している。


「ああ、修羅場に慣れていくんだ。自分でも分かる……」


 困ったものである。

 もう俺は開き直っているので、PTSDにはなるまい。


 アンドレさんの後方から土煙が上がる。新手のゴブリン軍団だ!

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