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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第六章 湖めぐり旅4
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体調を気遣いたい

「先にモーターボートを出して援護するぞ! ハイドラ、フローラ頼む!」


「ええ!」


「わかったわん!」


「あ、そうだ! アマラ、シレーヌ……をやってくれ」


「わかったのだ!」


「流石は海彦さんです!」


 とっさに策を思いつき、二人にやってもらうことにする。


 もちろん元ネタはあり、ある武将の戦法を使うのだ。



 モーターボート二艘が、ゴブリン船団へと近づいていく。


 一艘にはフローラとハイドラが乗っており、精霊魔法がギリギリ届くところで止まった。


「いでよ湖精霊、ナイアスの守り!」


 これは自分達を守るためではなく、帆掛け船にいる連中を守るための魔法だ。


 フローラ達には俺達が着くまでの、時間稼ぎを頼んでいた。


「おおっ! これは助かる」


 盾精霊が矢を防ぐと、騎士はこっちに気づいてお礼に剣を振っていた。


 しかし守るだけでは足りない。追いつかれたら終わりだ。


 そこで俺はゴブリンを攻撃する部隊を出していた。



 ただ、もう一艘には親衛隊員が一人乗っているだけで何もしてはいない。

 彼女には、あるものを運んでもらった。


 いつの間にか大樽が湖に浮かび、横からゴブリンの船に近づいていた。


 奴らは帆掛け船だけを見ており、これにまったく気づかない。アホが!


「死ねなのだー!」


「ンギャアアアアアアー!」


 樽の中からアマラが飛び出し、ゴブリンに襲いかかる!


 一撃必殺――かぎ爪が振るわれると、体を切り裂かれて絶命する。


 アマラは一匹だけを仕留めると、次の船へとすぐに飛び移り、オールを持っているゴブリンを狙って殺していった。


 他のゴブリン達はアマラの速さについていけず、同士討ちを恐れて矢を撃てない。


 これは源義経公が、壇ノ浦の戦いで使った「八艘飛び」。


 漕ぎ手を潰して、船を動けなくする戦法だ。魔物相手に情けは無用。


 怒れるアマラは強かった。さらに、


「えーい! ですのー!」


 アマラが暴れている隙に、シレーヌは泳いで小舟の(オール)を奪っていた。


 もうこれで漕ぐことはできなくなり、ゴブリンどもの船は完全に動かなくなる。


「アマラ、もういいぞー! 下がってくれ」


「分かったのだー!」


「……よーし、みんな撃てえ――――!」


「くらいな!」


 アマラが樽に入り込むのを見てから、俺は射撃の指示を出す。


 クルーザーは到着し、ボウ銃の射程内にゴブリンどもは入っていた。


 奴らの矢はコッチに届かないので、これぞ鴨撃(かもう)ち。


 小型ボウ銃の性能と威力は上がっているし、みんな練習は欠かさないので、遠くの的だろうがまず外さない。


 たくさんの矢が、ゴブリンに突き刺さる。


「アングエエエエエー!」


 ゴブリンどもは、断末魔の悲鳴を上げて船から落ちる。奴らの血で湖が赤く染まった。


 女神様、汚してすみません。一応心の中で謝っておく。


 戦いの決着はあっという間だった。ゴブリンがいなくなると歓声が上がる。



「やったわ!」

「ザマーみろ! 奈落に落ちろ!」


「海彦様、いつもながらお見事な策です!」


「これも先人のおかげですよ、雅さん。俺の知恵じゃない。それに、アマラやみんながいなくちゃ、上手くは戦えなか……どうした、ミシェル?」


 ミシェルは俺の問いかけに反応せず、ぼーっとしたまま帆掛け船を見ていた。


 心ここにあらずで、なにか気になることでもあるのか?


 おっと、それよりも早く救助をせんとあかん!


 ボロ船が沈みかかっていた。やはり作りが甘かったようである。


 俺はクルーザーを慌てずに近づけていき、船側に縄ばしごをおろして、登ってもらう……必要はなかった。


 リンダが両手を掴んで、甲板に軽々と引き上げていた。


 乗っていたのは男三人。


 一人目はラビット族で、その名の通り頭にうさ耳がある。


 あとで聞いてみたところ、獣人の一種らしい。


「助けてくれて、ありがとう」 


「ああ、まずは休んでくれ。事情は後で聞く」


 俺は水筒を手渡す。ライフセイバーの癖で、どうしても救護者の体調を気にしてしまう。


 特に脱水症は危険で命にかかわるからだ。あとでロリエに全員診てもらおう。


 二人目は人間だったのだが……。

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