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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第五章 湖めぐり旅3
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女神の結界

 俺はあわててフローラに近づくが、手を振って大丈夫だと合図される。


 シレーヌとハイドラは顔をしかめながらも、ゆっくり泳いで浮上していった。


 俺は雅の親衛隊員と見守りながら、後から海面へと向かう。


「みんな大丈夫か!?」


 俺がクルーザーの縄ばしごを登って甲板に上がると、フローラ・ハイドラ・アマラ・シレーヌが座りこんでいた。


 リンダの水着が濡れているので、体を持ち上げて引き上げてくれたのだろう。


 辛そうな顔をしている四人にロリエが薬を配り、ドリスが水の入ったコップを手渡していた。

 ……はっ! 一人足りない。


「雅は!?」


「甲板でいきなり倒れたから、あたいが寝室に運んだ。今はミシェルがついてる」


「そうか……」


 巫女達に異変が起きたので、女神の啓示けいじというやつだろう。


 これは何かが起きる前兆ぜんちょうで、俺は警戒する。


 そこにフローラとハイドラが手招きした。



「大丈夫か? 二人とも」


「何とかね……もうすぐ動けそうよ」


「今回はそんなにキツくなかったわん」


「そうか、良かった」


「女神のお告げは一言、『……破られた』だけよ」


「それって一体――――あっ!」


 俺は沖を見て、その啓示の意味を理解する。


「女神の……霧の結界がない!」


 正確にはまだ霧は残っているが、海の水平線が見えるようになっていたのだ。


 あきらかに霧が遠くに離れて、薄くなっている。


 景色が良くなったのを喜べる状況ではなく、俺は嫌な予感しかしない。


 ……それは、すぐに当たることになる。


 すかさず双眼鏡で周りを確認すると、遠くに何かが見えた。


「海彦お兄ちゃん! 何かくるわ!」


「大きい背びれがたくさん! 何だいあの生き物は!?」


「サメだ――――!」


 海においてもっとも警戒すべき生物だ。地球じゃ毎年人が襲われてるし、漁業被害も大きい。


 こいつらとだけは絶対に共存はできない! 人類の敵だ!


 およそ数百匹のサメの大群がこっちに向かってきていた。



「やばい! ひとまずテミス湖に逃げるぞ!」


「あいさ!」


 俺は操縦席に駆け込んで舵を持ち、リンダは蒸気エンジンをぶん回して、スピード全開!


 プリプリ号も親衛隊員らが動かし俺達の後を追ってくる。


 ただサメの泳ぎは早く、あっと言う間に近づいてくる。


 それでも船には向かってこずに、手当たり次第に魚を襲って食い始めていた。


 綺麗な青い海が血に染まる……。


 正に海のギャングである。高いジャンプを繰り返し、その巨体が見えた。


「ホホジロザメにタイガーシャークにオオメジロザメ、その他たくさん……鮫の品評会かよ。別種がこんなに集まるなんてありえねーぞ。しかもでけーし、五メートル級がゴロゴロいやがる。襲われたら一溜まりもないな」


「これが人食い鮫というやつね? 多分、女神の結界が突然消えたから、一堂に集まってしまったんでしょ」


「なるほどな」


 案の定、鮫同士の共食いも始まっていた。


 その隙に俺達はテミス湖に入り、奥の岬へと向かう。


 着くと同時に船を並べて〝へ〟の字になる。サメを後ろに回り込ませない防御陣形をとった。


 全員ボウ銃を持って待ち構え、俺達に緊張が走る。


 やがてテミス湖にもサメの集団が入ってきて、魚を追い始めていた。


 もうすぐ、船の近くまでくるだろう。



「ちっ! 淡水でもおかまいなしか。奴らは獰猛どうもうだから、大きな船だろうが関係なく襲ってくるぞ! フローラいけるか?」


「ええ、ナイアスの守り!」


「ミシェル、雅は?」


「まだ眠られたままだ……」


「そうか……」


 あと精霊バリアを使えるのは、親衛隊員一人だけなので守りは心許ない。


 それでも逃げ道が塞がれてしまったので、もう俺達は戦うしかなかった。


 ついにホホジロザメの一匹が、クルーザーに向かってくる!


 ドガン! と派手な音がする。


 サメが巨体をぶつけてきたが、盾精霊さんが完全に防いでくれた。


 まともに体当たりをくらったら、船は大破していただろう。俺は冷や汗を流す。


 バリアに跳ね返されたサメは、動きが鈍って遅くなる。


「いまだー! 撃てー!」


 すかさず俺達は反撃に出た。

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