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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第五章 湖めぐり旅3
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素潜り漁をしたい

 また一日が過ぎる。


 今日は俺の提案でクルーザー二隻を出して、海にでることになった。


「海彦様、それは良い考えですわ!」


「百科事典で見せてもらってたから、早く捕って食べてみたいわ」


「捕るのを頑張ります!」


「シレーヌ頼んだ」


 俺達は素潜り漁をやろうとしていた。魚以外の物を捕るのが目的だ。


 フルーツや魚で味をめたので、さらに別な物を食いたくなったのだ。


 ダイビング用品はクルーザーに少しあるし、雅がアルザスで作らせた物もある。


 ゴム・樹脂・ガラスがあれば、マスク・シュノーケル・フィンは作れた。


 ないのはウェットスーツと酸素ボンベくらいだが、特に必要はない。



 俺は簡易潜水器具を使ってみることする。


 それは「人工エラ」で、水中から酸素を取り込むことができるのだ。

 つまり海の中で呼吸ができる。


 流石は海運財閥の海神わだつみ家。開発は不可能と言われていたが、新素材の開発に成功したのだろう。


 ただ、軍需品ぐんじゅひんたぐいらしく、かなり裏がありそうだった。


 試作品でも実用可能なので、素直に凄いとは思う。まあ短時間しか使えないが。


「海彦様、ぜひ一つ下さい!」


「……分かった」


 雅が滅茶苦茶欲しがったので、渡す事にした。


 クルーザーの物は勝手に使ってきたので、いまさら穂織に遠慮する気はないし、人の役に立てばよい。


 ドワーフの技術や精霊さんの力があれば、ヘスペリスでも良い物が作れるだろう。



「よし、みんな準備はいいな?」


「ええ、道具は持ったわ」


「ばっちりよん」


 俺達は二班に分かれる。潜って捕獲するチームと、船での引き上げ作業をするチームだ。


 俺とシレーヌは水中でみんなの監視役。もちろん獲物もとる。


 船上に残されるドリスと雅は残念そうだった。


 雅はミシェルから止められ、ドリスは泳げるようになってきているが、まだ潜水はさせられない。


「仕方ないのじゃ、わらわは網かごの引き上げをする」


「ドリス、それも大事な仕事だから頼む。リンダもな」


「あいよ」


 実際、船上での作業は大変である。


 捕った物を入れた重い網を引き上げるのに力がいるから、リンダには残ってもらったのだ。


 選別し、生けやタライに移す作業も面倒なのだ。二人なら安心して任せられる。


「よし、行くぞ!」


 俺は紐付き石を抱いて、海にドボンとダイブする。


 重りのお陰で潜水は苦労しない。海だと浮力が強いので、重しがないと潜るのは大変なのだ。


 すぐに海底が見えてくる。光が届く浅い場所なので、辺りの景色は丸見えだ。


 いやー、もうねー、綺麗としか言いようがない。これぞ絵にもかけない美しさ。

 

 汚れた海しか見たことがなかったので、しばらく俺は感動に打ち震える。


 フローラやハイドラ達も同様だった。


 落ち着いているのは人魚のシレーヌくらいで、何度も海中に入って、獲物のいそうな場所を下調べしてくれていた。


 俺がハンドシグナルで合図すると、みんなうなずいて狩りに動き出す。


 全員初めてのダイビングでも問題なく泳いでいた。これなら心配ない。


「海彦さん、あそこにいます!」


(おう)


 俺は親指を立てて心の中で返事をし、泳いで手を伸ばして大エビを捕まえた。まずは一匹。


 シレーヌは水の中でもしゃべれるので、ほんとに助かる。人魚さまさまだ。


 自らも素早く泳いで獲物をとり、船から吊り下ろされている網かごに入れていった。


 みんな次々と捕った物を持ってくる。網かごが一杯になるのに時間はかからない。


 別にあるヒモを引っ張って俺が合図すると、網かごが引き上げられていく。


 狩りに慣れてくると、みんな夢中になって楽しんでいた。

 


「ぷはあー!」


 時々、海面に上がって息継ぎをする。


 亜人の肺活量は多く長い時間潜っていられるが、俺は無理はさせないように、合図を送って休憩させた。


 海中では水圧があり自分が思っている以上に、体力を消費するので注意しなくてはいけない。


 俺はナイフとトングを使って、ウニやアワビやカキをとった。


 美味いから食うのが楽しみだ。ただ貧乏性なので、売った値段が頭に浮かぶのは悲しい性である。

 日本だったら超高級食材です! 一財産稼げます!


 今のとこ、クラゲやウツボなどの危険生物とは出くわさずに済んで、ホッとしている。


 みんなには警戒するように事前に教えていた。



 楽しい時間はあっと言う間だ。


 防水腕時計を見ると二時間が過ぎており、俺は漁を切り上げることにする。


 アマラはまだまだ捕りたそうにしていたが、低体温症になるのはまずいので、手をふって要望は却下。


 全員が海面へと向かう……


「うっ!」


 突然シレーヌが頭をおさえ、フローラとハイドラも苦しそうな表情をしている。


 巫女達に異変が起きた。

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