砂浜を散策したい
夜が明けて次の日には、嵐は過ぎ去って小雨になる。
外に出てみると精霊さんは消えて、精霊界へ帰っていった。
暴風雨から俺達を、一晩守ってくれてありがとう。
午後になると太陽が顔をだし、美しい青い海が戻る。とはいえ海は荒れており、今日は波が高いので釣りはしない。
雅とフローラ達はフルーツ採りにでかけ、俺はアマラと動物達と一緒に砂浜の散策。
たまには何も考えず、のんびり過ごすのもよい。海を眺めてるだけでも満足だ。
「キュキュ!?」
「はっははは!」
リーフはカニと遊んでいた。可愛いので、見ているだけでホッコリする。
歯も生えて、少し体も大きくなってきていた。好き嫌いなしに、たくさん食うからなー。
それでも生物は食わないので、調理したエサを与えている。
「きゃははははは!」
「うん?」
近くでアマラとシレーヌが砂遊びをしていた。二人とも海の生活にすっかり慣れていた。
シレーヌには海でいろいろと助けられ、アマラはヤシの実を採るのに活躍してるので、みんなの評判は良い。
高いヤシの木を登るのは大変なのだ。
それをアマラはロープも使わず素早く登っていき、ヤシの実を落としてくれる。
流石は身軽な獣人族といったところである。
二人は大きな砂山を作って固めて、何やら作り始める。
お城でも作るのか? ……いや違う! できた物に二人は柏手を打つ。
「海彦が子種をくれますように」
「元気な子が生まれますように」
「なんだそりゃー!」
アマラとシレーヌが手を合わせて拝んでいるのは、砂で作った「道祖神」。
いわゆる巨大な○根だ。
俺はエルフ村でのエロ雪像事件を思い出す。あんときは全身像だった。
今回は砂像。それもかなりのリアル感があり、実物ソックリである。
ただ俺のは、こんなにデカくないようー。
亜人はどの種族も手先が器用……いや、そんなことはこの際どうでもいい!
問題なのは、日本の神道を俺は教えた覚えはないのだ。
武器同様に成人コンテンツはなるべくフィルタリングしていたはず……子供達を有害コンテンツから守りましょう。
となれば、いかがわしい知識を二人に教えている何者かがいる。
パソコンを使える雅か? ……真面目なのでそれはない。となると誰だ?
「あ! 注連縄に紙垂という物を飾るんだったな、海彦?」
「そうそう、御神体に巻き付けるように……て、何を言わせるんじゃー! アマラ、一体誰から聞いたんだー!?」
「ハイドラに聞いた。面白いことを一杯教えてくれるのだ!」
「うんうん。聞いてて楽しいですー!」
「あいつか――――!」
思い当たる節はある。時々ノートパソコンをいじっていたし、俺や雅にもよく質問していた。
男女問わず色気をふりまいているが、ハイドラはかなり頭が良く、写真記憶能力があるようで一度見た物は忘れない。
本人は黙っているが、どうやら日本語をマスターしたのだろう。
ハイドラは人をダマしたりウソを教えたりはしないが、覚えた危ない知識をみんなに広めて、遊んでいるのだ。
からかい癖があるので、質が悪い。
アマラとシレーヌはスッカリ毒されており、二人の世話役を頼むんじゃなかった、と俺は後悔する。
悪いことを教えてるわけではないので、責めようもない。倫理感はヘスペリスでは、あって無いようなものだ。
あとで問い詰めてみるが、ハイドラは開き直って悪びれなかった。
「海彦、私は愛の伝道師になるの。ヘスペリス中に広めるわん!」
「えーい、やめんかい! 『エロ』の間違いだろうがー!」
風俗文化は怪しい宗教になりそうで、非常によろしくない。
日本の伝統が間違って伝わるのも腹立たしいので、父親のアランさんや族長達に言って、拡散を防いでもらうことにしよう。
もう人頼みだ。でも……エロは止められまい。どうしても人が求めるから……。
「獣人村に勇者海彦神社を作るのだ。ごしんたいがいるから、粘土で〝ピー〟の型をとらせてくれ海彦」
「アマラ……勘弁してくれ」
俺のナニがみんなから拝まれるのは嫌だった。