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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第五章 湖めぐり旅3
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波にのりたい

「……考えてみると、クルーザーを海まで持っていった方が早いな。リンダがいるから船は動かせるし、他にも下ろす物がある」


「じゃー、蒸気エンジンを暖めるわ。いでよ炎精霊サラマンダー!」


「ハイドラには小舟で、砂浜までの往復を頼む」


「わかったわん。ところで、この長い板は何に使うのん?」


「それは波に乗って……いや見せた方が早いな」


 俺はノートパソコンを立ち上げ、百科事典の動画を見せる。


「……へー、海に戻ったら遊んでみましょう」


「ふっふふふふ、俺の腕前をみせてやるぜ!」


 俺は自信満々だった……この時までは。それは無惨に打ち砕かれることになる。


 やがてクルーザーが動かせるようになり、俺は舵をとってテミス湖から海へと向かう。


 顔に当たる潮風は心地よい。やっぱり海はいいな。


 サーチライトソナーで深度を確認しながら、座礁しない所までクルーザーを進めてから、船を止めいかりを下ろした。海に一時停泊する。


「テミス湖に戻るのは夕方にしよう。リンダ」


「あいさ。海は波と風があるから、船が流されることもあるわけだな? 海彦」


「ああ、満潮になるとガラリと様子が変わる。森もそうだが、海は生きているんだ」


「なるほどねん」


 俺の言葉に二人は共感してくれたようだ。自然と暮らしているから分かるのだろう。


 クルーザーの倉庫から物を引っ張りだすと、二人が運んでくれる。


 砂浜ではフローラ達が引き上げるのを手伝ってくれたので、時間はかからずにすんだ。


「それで、『さーふぃん』とやらはどうやるの?」


「その前に、水着に着替えてくれ」


「わかったのだー!」


 みんなの準備が整ったところで、俺は説明する。


「まずはサーフボードが流された場合にそなえて、リーシュコードを足首につける。いざとなったら、取ってきてくれシレーヌ」


「はいです! 人魚にとって海は気持ちがいいですー!」


「地球のおとぎ話じゃ海の中に住んでるから、それが正しいのかもしれん」


 とっくにシレーヌは海で泳いで遊んでいたのだ。離岸流りがんりゅうも何のそのである。


 ヒレがあるので泳ぎは速いし、水中で呼吸ができるから、救助活動を頼んでおく。

 俺以上のライフセイバーだ。


「じゃー波乗りを始めるか。まずは手本を見せる」

「ええ」


 おれは海に駆けだし、サーフボードに飛び乗ってうつぶせになり、パドリングをする。


 手でこいで前へ進むのだ。力がないと波に押し戻されるので、多少体力は使う。


 あとは波のタイミングを計って立ち上がる。テイクオフ!


 久々のサーフィンだったが上手くやれて良かった。いつもなら三回に一度は失敗している。


 俺はバランスを取りながら、砂浜まで戻ってこれた。


「こんな感じだ。波がゆるいから問題はないが、あまり沖にはいくなよ」

「わかったわ」


 言うなり女達は海に走り出す。やってみたくなったのだろう。しかし、


 くっくくく、いくら亜人とは言えど、サーフィンは訓練をせねばまともには乗れまい……と思っていたのだが、


「……ああ、一発で決めやがった。やっぱり理屈が通用しない」


「あっははははは!」


 リンダは高笑いし、フローラ達もボードに乗って笑っている。


 スケートをした時と同じく、バランス感覚が優れていて運動神経がよすぎる。


 しかも、これだけでは終わらない。


「これは面白いのだ!」


「そうだね、アマラちゃん!」


 なんと、アマラとシレーヌは二人乗りをしていた。


 ロングボードでもないのに、タンデムサーフィンをやっている。


 プロのサーファーでもやれる人は少ないのに、余裕よゆうしゃくしゃくだ。


 逆立ちアクロバットまでされたら、何も言い様がない。


 さらに俺の精神メンタルにトドメを刺す光景が、目に入ってくる。


 リーシュコードをくわえた犬のヨーゼフが、ボードを引っ張って海に入っていく。


「おいおい、まさか……」


 俺の予想以上の展開が起きる。


 ヨーゼフがボードに飛び乗ると、その背中にリーフが飛び乗ったのだ。


「キュ、キュ、キュー♪」


「ワンワ、ワンワ、ワーん♪」


「……歌ってるよ」


 二匹のサーフィンを見ながら、俺は驚いて呆然ぼうぜんとなる。


「俺は犬にも負けるのか……しくしく。もうこうなったら!」


 俺はバンガローに戻ってデジタルカメラを持ち出し、皆の様子を録画する。


「日本に帰ったら、動画サイトの『ようつべ』に投稿して、再生回数を稼いでやる!」

 

 百万は堅いだろう。

 夜にみんなでビデオ観賞すると、大いにうけた……主に俺の失敗シーン。

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