俺の物語は終わらせない!
まだまだ宴会は続いている。祭りはたぶん一晩中続くので、基地内ではうるさくて眠れん。
俺はメイン甲板から、ロワーデッキに下りてベッドルームに向かう。
スライドドアを開けて中に入り、室内照明をつけると、
「なっ!」
寝室にアマラとシレーヌがいたので、俺は少し驚く。
ここで引っかかっていた答えがでる。外の広場に二人の姿が見えなかったからだ。
なぜか居なかったので、気になったのだろう。
どうやら二人は俺をずっと待っていた……いや、待ち構えていたようだ。
問題なのはその格好で、バスタオルだけをつけてベットにいたのだ。
二人は俺に近寄ってくる……この状況はマズイかもしれない。
いくら何でもナニをしにきたのかは察しはつく。寒い鈍感キャラではない。
それでも俺は空しい期待をこめて、白々しく聞いてみることにした。
「あー、二人ともどうしたんだ? 宴会はたけなわだぞ、いなくていいのか?」
「……海彦。神怪魚を倒してくれて本当にありがとう。アマラ、お礼をしにきた」
「私もです!」
「いやいや、みんなの力だ。俺は何もしとらんから、気にしなくていいぞ」
「それでは気が済まない。だからアマラをもらってくれ!」
「はーい、海彦さん。私達といいことしましょ! 今日は危険日だからバッチリです!」
「バッチリじゃねーよ! やめれー!」
「あれー? 全然のってこないです……あ! 私の誘い方が悪いんだ」
「たぶんそうだな、シレーヌ」
「シャチョサン、シャチョサン、Hしよ! ワターシ、子種ホシイ、アルね」
「ぶっ!」
どこの外国人パブだー! そもそも、何でそんな言葉を知ってるー!?
俺は気前のいい金持ちのオッサンじゃねー!
「お願いだ海彦、子種をくれ。危険な狩りをする生活はもうすぐ終わる。これからは交易と耕作の時代だ。ならば力よりも、海彦が持っている知恵がいる。アマラ賢い子を産みたい!」
「私達人魚も男性を選ぶことにしました。頭の良い海彦さんは、子作りのお相手として最高です! 他にはいません!」
二人とも部族の将来を、第一に考えているとこは偉いと思う。
フタバ竜と何度も戦ったのも村のみんなのためで、そこに自分の欲はない。
この行為もそうだろう。アマラとシレーヌは立派だ。
……だからといって、童貞をやる気はないぞー! 気持ちは分かるが情には流されん!
ドワーフ温泉以来のまずい状況だが、俺は何とか説得してみる。
「まてまて! はやまるな二人とも!」
「どうしてダメなんですか? 気持ちいいと思うんですけどー」
「そうだ、そうだ!」
「うむ、それには海より深い事情がある」
「なんなのだ海彦?」
「それはだな、性行為をしてしまったら、『なろう』からアカウントごと作品が消されてしまうからなんだー! 垢BANとも言う。運営さんは甘くない。日本には帰りたいが、その前に存在ごと消されたら洒落にならん。噂では濃厚なキスシーンを書いただけで、消された作品もあるそうだ……」
「……アマラ、海彦が何を言っているか分からない」
「じゃー、男性向け18禁の『ノクターンノベルズ』に移りましょう。それなら問題ないですね?」
(じょ、冗談ではない! 俺は健全なラノベを書いてるんだー!)
何やら作者の声が聞こえてきた。俺同様、相当焦っているらしい。
とにかくこの場を何とかしないと、マジに運営さんから消される!
「あーもう面倒くさいのだ! シレーヌ、海彦をおさえてくれ!」
「分かったわ! アマラちゃん」
とうとう力尽くできやがった。一人でも俺に勝ち目はなく、二人がかりでは手も足もでない。
ハイドラとドリスのように、やる順番でもめたりはしないだろう。
ああ、これまでか……
さようなら『なろう』、さようなら読者の皆様、今まで応援ありがとう!
感謝、感謝。
作者の次回作にご期待下さい……て、終わってたまるかー!
「海彦、いい加減に観念するのだー!」
「そうですー! 私達と○Pしましょう!」
「いやだー!」
俺は必死で暴れまくる。久々にスキル〝火事場の馬鹿力〟を発揮した。
このまま、やられるわけにはいかない!