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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第四章 湖めぐり旅2
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命がけの引っ張り合い

『カウボーイ作戦』


 輪投げと馬を見て、俺が思いついた作戦だ。


 野性馬ムスタングや牛を投げ縄で捕まえたように、フタバ竜の首にワイヤーをかけて、陸地まで引っ張っていくのだ。


 ただ輪投げのように簡単ではない。猫の首にネズミが鈴をつけるような、無謀で危険な作戦だった。


 まず人とフタバ竜では体格差がありすぎた。

 首が長いので頭部は見上げるほどの高さにあり、近づくだけでも難しいのに、首を登るなんてのは無茶もいいとこである。


 作戦を思いついたまでは良かったが、実行するには問題がありすぎる。


 それでも、他のアイデアは思い浮かばなかった。二頭を同時に倒すという条件は厳しい。


 女達と相談した時にアマラが危険な役目を買って出てくれなければ、作戦は成り立たなかっただろう。

 アタワルパさんと獣人達も引き受けてくれて、見事にやり遂げてくれた。


 アマラ達は体に重りをつけて、厳しい特訓を毎日していたのだ。


 今日、その成果が出たといえる。本当にありがとう!



 金属ワイヤーの輪っかは、投げ縄結びをしてあるので、引っ張れば輪がしまる仕組みだ。

 これで首からは絶対に外れない。


 二頭は首に手錠をかけられたようなもので、引っ張り強度はおよそ五十トン。


 チャールズさんとオグマさんが、丹精たんせいこめて作った金属ワイヤーが切れるわけがない!


 あとは二頭を陸地まで引っ張っていくだけである。


『係留ロープを引っかけろ!』


「おお!」


 二頭の首をつないでいる金属ワイヤーに向けて、フックをつけた縄が投げられる。


 次々と縄はワイヤーに絡まり、船とむすばれた。


 もう俺の指示は必要はない。やることは決まっている。


 船同士も連結して、エンジンをぶん回し陸地へと向かう。基地とは別な場所だ。


 チャールズさんとオグマさんが待っている場所で、木を切り倒して広場を作り、土地を削ってなだらかな斜面も作ってある。


 フタバ竜を打ち上げるために、小島の近くに作ったのだ。


 そこで肉弾戦を仕掛ける予定なのだが……まだ遠い。



 火と雷の魔法使いは気合いをいれて精霊に魔力を送る。雷撃部隊(ショッカー)は解散していて、この勝負にかけていた。


 全艦隊が二頭を引っ張っていこうとするが、奴らは近くの船を蹴散らして、連れて行かれまいと大暴れする。


 俺達が仕留めようとしているのが分かっているからこそ、二頭も必死で抵抗してくる。


 暴れ馬ならぬ暴れ竜。やるか、やられるかの勝負だ!

  

『くそ! そう簡単にはいかんか。エンジンをもっと回せ! ぶっ壊れてもかまわない!』


「おおー!」


 二頭の巨体は重く少しずつしか船は進まない。ゴールがさっぱり、見えてこなかった。


(オール)も使えー!』


 俺達だって死に物狂いだ。もう後はなく何でもやるしかない!


 魔法使い達はさらに精霊を召喚して船も押させる。魔力を与えれば力をだしてくれるのだ。


 じょじょにではあるが、船は前進していく。それでもフタバ竜二頭の抵抗も激しい。


 一進一退の攻防が続いて、陸地がようやく見えてくる。


『あと少しだー! みんな頑張ってくれ――――!?』


「駄目だー! エンジンがいったー!」


「モーターが焼け焦げたー!」


「くそっ! あと少しなのに」


 俺達は全身全霊で戦っていたが、ここにきて体力・魔力はつきかけ、とうとう船にも限界がくる。


 かなりの無茶をしたのは分かっていたが、フタバ竜の底力が想像以上だったのだ。


 奴らの粘り勝ち、フタバ竜の雄雌が逆に俺達を引っ張っていこうとする。

 もう打つ手がない……。


『まだじゃ! あきらめるな海彦!』


「ドリス!?」


 陸地からドリスの声が聞こえてきた。別の拡声器で大声を張り上げている。


 よく見れば巨大な何かがあった。作戦計画にはなかったので、俺は知らない。


「あれは何だ!?」


「いくぞ、父様ととさま!」


「飛べ! ドリス!」


 細長い柱が空にそびえ立った瞬間、何かがコッチに向かって飛んでくる。ドリスだ!


 俺は何が起きたか理解する。これは人間ロケット。


「チャールズさん、投石機トレビュシェを作ったのか!? でも娘を飛ばすなんて無茶だ! 大体こっちまでは届かんぞ!? ドリスは湖に落ちる……」


 艦隊までの距離は約五百メートル。投てき距離は半分もいけばいい方だ。


 案の定ドリスは手前で落下を始める。くっ! 怪我だけですめばいいが……


 俺は顔をゆがめるが、


「いいえ、大丈夫よ海彦。いくわよ雅!」


「ええ、フローラ!」


 二人が目配せし、呪文を同時に唱えだした。

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