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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第四章 湖めぐり旅2
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おにぎりは美味い

 蒸気砲の元ネタは捕鯨砲、ただ火薬がないからもりを発射するのに蒸気を使ったのだ。


 発射したのは、平頭銛へいとうもり――先端をとがらせずに平面にしたものだ。


 ボウ銃の矢のやじりも同様に先端を削ってある。


 これだと飛距離は落ちるし、奴には刺さらないと誰もが思うだろう。


 ところが丸みを帯びているフタバ竜は、とがっている矢ほど刺さりにくく、ほとんどの矢が滑って弾かれてしまうのだ。つるりんとね。


 そこで「刺す」ことよりも、「当てる」ことを重視する。

 この点も鯨漁くじらりょうと同じだ。


 蒸気砲の威力と速度があれば、先端が平面でも関係なしに突き刺さるのだ。


 さらに俺が注文をつけた点は、砲筒に螺旋状らせんじょうの溝をってもらったことだ。


 銃身の中にあるライフリングである。


 これで銛は回転しながら飛ぶので、安定性がまして威力が上がるのだ。



 蒸気砲の唯一の弱点は連射がきかないことで、蒸気が蒸気タンクに溜まらない内は撃てず、クルーザーでは蒸気がなくなってエンジンが止まってしまう。


 そこで主力船には動力を二つつけた。移動用の電動機モーターと攻撃用の蒸気機関。


 あとは火と雷の二人の魔法使いが精霊を召喚し、それぞれ動力を動かしてもらう。


 これで砲手は攻撃に専念できる。


 良いことずくめに見えるが、主力船にも弱点はあった。


 やはり船体が大きく小舟よりは重いので、船足はやや遅く小回りが利かない。


 操船ミスで離脱が遅れた一隻が、フタバ竜に追いつかれそうになる!

 そこに、


「やあああああ!」


「ブオオオオ!」


 小舟に乗っていたアマラが、フタバ竜に飛びかかって新たな武器で斬りつけた。


 武器は今までの骨爪ほねづめにあらず、手にはめているのは鉄のかぎ爪で、鋭い切れ味をもっている。


 アマラの怪力も加わり、フタバ竜の皮膚を切り裂いた。リンダ製は半端ではない。


 反撃される前にアマラは素早く飛び去る。


「アマラちゃん、こっち!」


「うん!」


 水の中にいるシレーヌが大きめのたるを抱えていて、それに向かってアマラは飛ぶ。


 樽を踏み台にし、ジャンプして小舟に戻った。


 俺が考えた作戦は、「ぴょんぴょんゲーム」だった。獣人族の跳躍力を生かした戦法である。


 プール遊びの応用で人魚達が樽を支えてくれれば、ドボンと湖に落ちることもない。


 まあ兎というよりは、見た目はひょうだが。


 獣人と人魚のコラボレーションだ。人魚達が樽を移動させて、獣人達に声をかけていた。


 アマラはあしで足場を作って戦ったようだが、何度も同じ場所に着地したので、そこを狙われてやられてしまった。


 たった一人だけだったのも、まずかったと言える。


 そこで人魚達には樽をランダム移動してもらい、的を絞らせないよう工夫した。


 跳ね回る獣人達にフタバ竜は翻弄ほんろうされて、どこを攻撃すればいいのか分からなくなる。


 人魚を狙っても、樽を囮にされて逃げられてしまう。


 獣人達は主力船が攻撃に戻ってくるまで陽動し、ダメージを与えていた。


 こうして連続攻撃は永遠と続く――絶対に奴を休ませる気はなかった。


 一時間おきに部隊を交代させるので、俺達は休めて余裕がある。



 昼過ぎ、主力部隊の面々は昼食を食べながら、戦況をながめていた。


「もぐもぐ、なかなかしぶといのう。まあいい、ありったけの銛をぶち込んでくれるわ!」


「でござるな、ここまでは勇者殿の作戦通り。それにしてもコレは美味いでござる!」


「がつがつ、アマラもっと切り刻む! アイツが倒れるまで!」


「パクパク、うんうん!」


 飯を食いながら、過激な発言をしている。みんな血の気が多すぎるわ。


 食べているのは、「米」の握り飯。竹の皮に包まれみんなに配られていた。


 弁当を作ってくれた、アマラの婆さんと奥様達に感謝だ。



 ニュクス湖にきて稲を発見した時、俺は涙した。


「こんなに嬉しい物はない!」


 やはり米は日本人のソウルフードであり、毎日の食事にはかかせない。


 あえて言おう、麦飯はまずいと!


 ちなみにクルーザーにあったお米は、全部女達に食われました。大食らいどもめー!


 もし女達が大食い選手権にでたら、誰が優勝してもおかしくはない。


 俺は自生している稲を刈り取ってもらい、脱穀だっこく脱稃だっぷして精米した。


 手間がかかるので、手ではやっとられん。


 機械を動かしてくれる、精霊さんがいて本当に良かった。


 獣人達は稲が食べられる物とは知らず、採集もされていなかったが、これからは田んぼで作られる予定だ。


 炊いた米はモチモチ感があって甘く、日本米に引けを取らなかった。


 こうしてみんなが美味そうに、おにぎりを食べている……中の具についてはノーコメント、聞かないでください。


 ここに梅干しはありません……。

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