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Overwrite~普遍世界の改編者~  作者: アルマ
二章 Patchy Parental Love : Overwriting
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♯37 大放逐レオル・ヴァンフォーレ


「大放逐…………?」


「そ。…………無駄に偉そうな、同い年の男に言い渡された称号さ。王を崇めない異端者を潰す、要は厄介払いのリーダーなんだ、俺」


「…………それで、私達のところに大勢引き連れて来たの?」


 レオルは溜め息を付きながら、腰を下ろした。


「俺としてはな? 正直あんたらを潰す必要ないと思うんだわ。あんたらみたいに俺らを敵視してる奴なんて幾らでもいるわけだし、なんならあんたら以上に厄介な集団だっている。…………だから、俺は然程あんたらを危険とは思ってない」


「じゃあ、…………ほっといてくれても」


「ま、王様が潰せっていうんだから、致し方なく狂信者連れてきたわけだ。面倒なことだがな」


 レオルはそういって、のんびりと雑談を続ける。


「……だから、こんな所で寛いでいるの?」


 鳴海は鎖を構え警戒したまま、問いかける。


「俺の仕事、黒マント連れてくるだけなんで。あんたらは好きに、黒マント相手してくれればOK。俺は適当に嘘の報告するだけさ」


「……それ、大丈夫なの」


「いつもそうして来たからな。どうにも、真面目に働きたいとは思えねぇ」


「なら、早く撤退してよ。今私達忙しいの」


「そりゃ無理だ。もうそろそろ黒マント全滅してるから、撤退するとすれば俺一人だけってことになるからな!」


 レオルはそう言って軽く笑う。


 鳴海はそんなレオルの様子に、怪訝な表情を浮かべる。


「その言い方だと、あなたのお仲間さん達は捨て駒って風に汲み取れるんだけど」


「実際そうだ。だって今日連れてきたのって、アンノウン歴数日の、戦闘に関して超絶ド素人。ぶっちゃけ、多少アンノウンとしての能力を理解してる人なら、簡単に倒せるんだわ」


「…………!」


「捨て駒……いや、そんなもんじゃない。単に、黒マント軍団を絶対に連れてかなきゃいけないから、仕方なく弱そうなのを連れて来ただけな。大勢で動くのはダルいから、早々に退場してくれる数合わせが欲しかったんだ」


「そんな、理由で…………!!」


 鳴海はレオルは睨みつける。


 レオルは意地悪く笑みを浮かべる。


「俺がここに来たのには、二つ理由がある。一つは、命令されたから。これはさっき言ったな? 命令破って面倒事を引き起こしたくなかった」


「…………もう一つは?」


「簡単な話さ。俺はさ、強い奴と戦いたいんだ。特に、力の制御を失って暴れ狂ってるようなアンノウン…………とかさ」


 ビシッ。


 鎖が思いっきり地を叩く。


 とんでもない速度でレオル目掛けて放たれた一振りは、しかしレオルには当たらなかった。


「いきなり攻撃してくるとか、あんたなかなかせっかちだなぁ」


 レオルは、いつの間にか鳴海の真後ろに立っていた。


「…………相良ちゃん狙いだったわけ?」


「そ。俺の能力の特性上、暴走したアンノウンは相手してみたかったんだわ」


 鎖の連撃がレオルを襲う。


 しかし、レオルは最小限の動きだけで全てを躱しきった。


「可能なら、始末もしたいしな」


「相良ちゃんを殺す気!?」


「そうとも言うなぁ」


 レオルはサラッと笑う。


「そんなことは……させない!」


 鎖を地面に叩きつけ、灰を巻き起こす。


「なるほど、目隠し…………か」


 鎖を舞う灰の中目掛けて振り回す。


 宙を鎖が掻き乱す。目隠しの中では、到底躱しようのない連撃。


 しかし、手応えはなかった。


「━━たとえ目の前が覆われていても、俺にはそれを見透せる目がある」


 灰の中から、声が聞こえてくる。


「どれだけ目の前が″嘘″で塗り潰されていようと、何処かで輝き続ける″真実″の光って奴を、俺は絶対見失わない」


「…………何の、話?」


「俺に目隠しは通用しないって話さ。それが精神的であろうと物体的であろうとなんだろうと、俺の目を欺くことができねぇよ」


「それが、あなたの能力…………?」


 少し考える間が空いて、


「アンノウンしての能力は、また別さ。これは俺の人としての能力さ」


「人、として…………?」


「それで、これが、俺のアンノウンしての力だ」


 灰が突如として晴れ、爆風が巻き起こる。


「っ!? …………ぁああっ!!」


 強烈な熱風が鳴海を吹き飛ばす。


 鳴海は地面を転がり、俯せで倒れ込む。


「なに、が…………!?」


 鳴海の目の前に立つレオル。


 レオルの身体から、黄金の光が放たれている。レオルの周囲にはとんでもない蒸気が巻き起こっている。


「″獅子咆哮(レオ・バースト)″」


 熱気の奔流が押し寄せる。


 なす術なく、鳴海はさらに吹き飛ばされた。


「これが、俺の能力の一つだ。どうだ、防げねぇだろ?」


「…………この鎖なら!」


 鎖を振り回し、熱気を消し去ろうとする。


「無駄だぜ」


「!? …………消えない」


 振り払っても振り払っても、とめどなく熱気は押し寄せてくる。


「その鎖、触れた異能を(・・・・・・)無効化する(・・・・・)…………だろ?」


「…………なんで、知ってるの」


「うちの組織、わりと大っきいからな…………ポンポンと情報は入ってくるさ。勿論、あんたらについてもな」


「だから、私達が此処で相良ちゃんを助けようとしてることも?」


 レオルは頷く。


「俺と同じく『大教徒』の位を持つイカレ野郎、マウルって奴の手にかかれば、仲間を増やし放題。人間ってのは多くの情報を抱えてるからな、あっと言う間に集まってくるわけだ」


「それで、こっちの事は筒抜けってこと?」


「大体はな。もっとも今日の日程のことや、あんたらのここの能力についてはタレ込みがあったから知ったんだけど」


「タレ……込み…………?」


 今日、相良の暴走の対処をすることは、本来『Trashy Rebellios』のメンバーしか知らないことである。


 アンノウンに冠する情報を広めることは、さして得のないことであり、むしろ危険である。


 メンバー外に漏らすことこそ、とても危険なことで、コミュニティを崩壊させる原因ともなりかねない。


 だが、レオルの組織にタレ込みをする輩が居たということは、何者かが情報を得ていると言うことだ。


「一体…………誰が」


「教えねぇよ? つか、聞いて後悔すんのあんたらだしな」


 レオルはさらに熱気の噴出を強め、鳴海の身体を押し出していく。


 鳴海は、細い脚を必死に踏ん張らせ、耐えている。


 だが、圧倒的な力に、徐々に後ろに押されてしまう。


「軽いな、まぁJKならこんなもんか?」


「…………う、ぐぅ…………!!」


「動けねぇだろ? それでもって、自慢の鎖も意味をなさない。早めに負け、認めた方が得だと思うぜ?」


 「殺してしまいそうだ」と、レオルは頭を掻きながら呟く。


 鳴海の肌には、徐々に火傷ができ始めていた。アンノウンが幾ら頑丈と言えど、継続的に熱風を受ければ、ダメージを負う。


 服の所々から焦げた臭いが立ち込め、次第に発火を始めた。


「…………ぁああああ!!」


 灼熱の痛みに根負けし、鳴海は吹き飛ばされる。


 鳴海の身体はかなりダメージを負っていた。


「俺は、別にあんたを殺すつもりねぇ。ただ、そうだな…………一つ聞いていいか?」


「…………」


 痛みに苦しみながらも、必死に戦意を奮い立たせようと、レオンを睨む鳴海。


 レオンは、お構いなしといった様子で続ける。


「倉田ヒロ。奴の能力を知りたい」


「…………ヒーくんの……?」


 鳴海は驚いたように、目を見開く。


「そうだ。奴の本当の能力が知りたい。…………あんたらしか知らないような、とびっきりのやつをな」


 鳴海は頭の中に疑問符を浮かべる。


 ヒロの能力は、蒼い結晶体(本人曰く『蒼鉄』)を生み出し、また操ることだ。


 『Trashy Rebellios』に加入する前も、何度かヒロは能力を使う場面があったらしい。だから、ヒロの能力に関する情報など、然程レアなものではない。


「━━大人しく教えれば、この熱気は解いてやる。もし嘘を吐けば、黙り込めば、…………この先は分かるだろう?」


 だが、レオルは本気の目をしていた。


 鳴海には、何故それほど情報を欲するか分からなかったが、だが下手に口を割るわけにはいけないということだけはなんとなく分かった。


 だから教える代わりに一言、


「教えないもんね、バーカ」


 無論、虚勢である。


 そんなからかう余裕など本来は残ってはいない。こんな事をしても、自分が危なくなるだけである。


 それでも、鳴海は存分に、苦し紛れの嘲笑と共に言い放ったのだ。


(やられっぱなしは悔しいもんね。って、私馬鹿だなぁ…………)


 鳴海は、自分の馬鹿さ加減についつい呆れる。


「━━″獅子咆哮(レオ・バースト)″」


「ああああああああ!?」


 今までとは比べ物にならない熱風が、鳴海を宙へと舞い上げる。


 咄嗟に鳴海は空中から鎖を放つも、熱風に軌道を逸らされてしまい、レオルの横の地面に刺さった。


 かなり高くまで打ち上げられた後、鳴海は地面へと急降下。そのまま地面に叩きつけられる。


「…………ぅう…………」


「次はもっと高く打ち上げる。それでも吐かなければ、もっと高くだ。死にたくないなら、早く教えてくれ」


 レオルは、いかにも苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。


「絶対……言わ、ないもんね…………」


「…………そうか」


 レオルは溜め息をついた。


 地面に刺さった鎖の先端を踏みつけ、


「これでこの鎖は固定された。あんたと鎖は繋がってる。あんたは一定距離以上、ここから離れられない」


「…………」


「そんな逃げられない状態で、さっきまでより強い熱風を受けたら、どうなるか…………分かるか?」


「…………!」


 鳴海の顔が青ざめた。


 鎖は、鳴海の右手首の腕輪と繋がっている。鎖が踏み抑えられている今、鳴海は熱風のダメージに晒され続けることとなる。


「それでも、まだ教えないか?」


「………………」


「冗談抜きで、死ぬぞ」


「…………それでも、教えない」


 鳴海はボロボロの身体を起こし、立ち上がる。


 レオルは呆れたように、目を瞑った。


「″獅子咆哮(レオ・バースト)″」


 とてつもない熱風の嵐が、灰の砂漠の上で巻き起こった。

読んでいただきありがとうございました!


前回チラッと出てきたレオルが、今回無双しておりました。ちなみに、まだ実力の半分も出してないですw


春休みの宿題が多すぎるのと、春から受験生になるのとを踏まえて、投稿ペースダウンしておりますが、これからもよろしくお願いします!

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