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Overwrite~普遍世界の改編者~  作者: アルマ
二章 Patchy Parental Love : Overwriting
20/43

#17 歓迎会 Ⅱ

今回から三人称視点に変えますw今までの作品も少しずつ直していきますよー!!

よろしくお願いします!


 金髪美少女・煌上によって、剣士ガール・霧島さんと衝突したヒロ。


 浴びせられた殺意の睨み、提示された決闘の申し込み!


 果たして、ヒロは無事に家に帰れるのか!?


 と、どうでもいい前回のあらすじは置いといて。


 降ってかかったこのよく分からん展開を、どう呑み込めばいいのか、とヒロは思う。


(ぶつかったぐらいで、決闘まで話が進んでいくとか、ちと過激すぎませんかね。しかも歓迎会の真っ只中で。)


(もしかしたら、このコミュニティのメンバー、かなり短気で戦闘狂な奴らばかりなのだろうか。だとしたら、即刻抜けたいんですけども!)


(いや、もしかしたらこれは霧島さんなりのジョークなのか…………?)


「霧島は冗談言えねぇぞ?」


「どわぃ!?え、口に出してませんけど!?」


 突然うなじ辺りに乗っけられる重み。同時に、柑橘系の爽やかめな香りが鼻孔を擽る。少々きつめだ。


「顔でそれくらい分かるわ。霧島は正直者の突進系だからな、虚言の類は吐かないぜ?」


「え~と、あ………あ、後藤さん」


 不意打ちで肩を組んできた大学生━━後藤が、「うぃすうぃす」と軽快に相槌を打った。


「霧島に手合わせを頼まれたんだろ?だとしたらおまいさん、相当地雷踏んだんじゃね?あいつにとっての手合わせって大抵はガチの斬り合いだから」


「うえぇ…………?」


「生真面目で頑固で馬鹿正直な委員長タイプ。おまけに異常にデレ難い。俺がもっとも苦手なタイプの女子だぜ、アレ。落とそうとして何度も殺されかけたからな!まぁ、そもそもこのコミュニティの女の子全員落とせてないんだけどな、俺」


「は、はぁ…………」


 後藤さんのトークに流されるまま、曖昧な相槌を打つくらいしか、ヒロにはできなかった。話の内容の大半が、正直反応しがたい内容だったということもあるけれど。


 この話だけを取ると、後藤はただの糞野郎なナンパ師か何かにしか思えない。だが、後藤さんの外貌は滅茶苦茶整っている。普通にイケメンなのだ。


 明るめの茶色に染め上げられ、左瞼上で左右に分けられ、ワックスで程よいバランスに整えられた髪。顔立ちも整っている。


 服装は水色のシャツの上に紺色の長袖ジャケット、白いズボン。派手ではないが、体型のよさと相まってえらく格好良く見える。


 会話も上手っぽいし、さぞ大学ではおモテになるのだろう。女子を落とせる落とせないの尺度で語っているのも、経験が豊富だからだろうか。羨ましいなおい。


「ま、霧島ってそんな女の子だから。手合わせではまず手を抜いて貰えない。というか″手を抜く″って行為自体が霧島にとってはありえない行為だからな。やるならとことん、相手が降参するまでやるね」


「えっと、なんで僕戦わなきゃいけないんです?」


「そりゃあ、さっきも言った通りなんか地雷でも……「後藤」へーい」


 割って入った図太い声の主は、信永だ。


 鉄色のパーカーにジーンズを履いた大男は、厳しい目で後藤を睨みながら、


「……あまり新人をからかうな。間に受けてるぞ」


「…………へーい。怒られちった」


 後藤は肩をすくめると、ヒロにチロッと舌を見せる。


 信永は溜め息をつきながら、


「ちょっとした模擬戦、というだけだ。あくまで、倉田の戦闘能力を測るという目的の」


「そそ。さすがにぶつかったくらいで殺しに来るような野蛮な奴はいないっての。てかそんな奴居たら真っ先に牢獄行きだわ」


「牢獄…………?」


「……アンノウンの特異すら封印できてしまうとはれる牢獄。監獄長が罪ありと認めたアンノウンは、どんな手を使ってでも牢獄に入れられる。入れば最後、脱獄は絶対にできない。アンノウンの死地という奴だ」


 信永の説明を聞き、そういえば煌上も似たようなことを言っていたな……。ヒロはそう思う。


(アンノウンの特異を打ち消す、か…………)


 その″牢獄″が一体どういうものなのか、ヒロには到底想像し得ないけれど。


「ま、話を戻して戻して。つまり、霧島の手合わせは小手調べみたいなもんだから。さすがにヒロっちがあまりにも防御も回避もできない雑魚じゃない限りは死なないから安心して。最悪怪我は茜っちが治してくれっから」


「は、はぁ…………。え、マジで戦うんですか。てかあと、ヒロっちって……」


(それ、僕が雑魚だったら即死ってことじゃ……)


「大丈夫だって。茜っちが側に居る限り、死んでも(・・・・)死なないから(・・・・・・)


 そう笑いながら、後藤はフラフラ~っと向こうの方へと歩いて行った。


 ヒロは信永に、質問を投げかけた。


「あの、鳴海も僕みたいに模擬戦するんですか?」


「そういうことになるな。倉田が戦い終わったら、鳴海は団長とやることになる」


 団長とは、神谷のことである。団長って言う程だ、相当に強いのだろう。つい、ヒロは鳴海のことが心配になってしまう。


「あともう一つ質問で、どこでやるんですか?まさかそこら辺の原っぱでやるわけじゃ、無いですよね?」


 アンノウン同士の戦いは、当たり前だが一般人同士の戦いとでは破壊の規模が違う。生半可に小さなスペースでやり合えば、周辺の建物をも壊しかねない。また、とんでもない音量の戦闘音も考慮しなければならない。


「ここだ」


 そう言って、信永は右手人差し指で下を指差す。


 ここって………?


「地下だ」


「ち、地下……!?」


 地下て。一階二階の広さ的に、地下に十分な広さの部屋があるとは思えない。


「…………大丈夫なんです?」


「その心配は杞憂だ。それに……」


 そう言ってフッと信永は小さく笑うと、


「建物が壊れても、泣くのは現家主の団長だけだ」


(んな阿呆な。団長が可愛そう過ぎるぞおい)


「霧島も、まさかほぼ素人相手に能力まで使うことはないだろう。見ての通り刀による超接近型(インファイター)だからな、刀のリーチ外から攻めればどうにかなるだろう」


(ほほう。中~遠距離攻撃とな)


「え」


 思わず声が漏れる。


「あの、ノブナガさん?」


「なんだ」


「僕、近接攻撃しかできないんですけど」


「…………」


 目前の大男は、そうだった、と苦々しげな表情を浮かべていた。


 そう、ヒロの能力はあくまで、まだ覆うこと(・・・・)にしか特化していない。武器だって、そう何度も戦闘中に作れるほど場数踏んでいないし、棘の罠に関してはまだまだ威力速度も足りない。


 詰まる話、ヒロも十分超接近型(インファイター)なわけで。


 せっかくの信永のアドバイスが、恐らくは活きることがないのだろう。


 何たることか。せめて棘を自在に出せれば、まだ刀のリーチ外から攻められるのに。


 ヒロと信永との間には、まさにお通夜のようなしけた空気が流れていた。


 今からヒロ死ぬんじゃ……? 目で信永に問いかけると、


「…………頑張れ、お前ならやれるさ」


 肩をポンと叩かれた。


 嘘でしょう?もう打つ手なしなんですか。


(明らかに僕より戦闘の場数を踏んでるであろうノブナガさんすら諦めざるをえない状況なんて、もうどうすればいいんですか。僕ド素人ですよ、マジで)


 落胆しきった顔で、天井を眺める。ヒロの脳裏にはもう、″諦め″という単語しかない。


 もうこうなったら、戦闘開始と同時に降参(サレンダー)しちゃいましょうそうしましょう!


 そんな考えすら抱いてしまった、その時だった。


「ちょっと話、いいかい?」


 振り向けば、団長こと神谷。


 これはまさか、素晴らしいアドバイスを貰えるのでは? 胸中が期待埋め尽くされ、自然僕の思考は前向きに━━。


「模擬戦、あと三十分くらいしたら始めていいかな」


 ヒロの期待は、あっさり崩れさった。


 中途半端に期待させんなよ、団長ォォォォォ!!


「…………はい」


 伝えることだけ伝えて、サーッと場を離れる団長。その足で鳴海に話しかけているところを見ると、鳴海にも伝えているのだろう。


 うん、なんかもう、どうにでもなれ……。


 ガシャンッ。


 向こうで鳴海が「ええーーっ!?」と叫んでいる。その拍子に、グラスを落としてしまったらしく、オレンジジュースやグラスの破片が地面で撒き散っている。どうやら、団長の突然な話に驚いたらしい。まぁ、そりゃそうだわな。


 撒き散ったグラスを、すぐ傍に居た煌上がパパッと掃除している。どうしても綺麗な金髪に目が行ってしまう思春期真っ盛りなヒロは、自然、その周辺の破片も視界に入る。


━━━━━━━━!。


 頭に浮かぶ光明。


 ヒロは煌上の傍に屈み込み、破片を集め始める。


「あぁ、先輩。可愛い幼馴染の過失の後始末ですか」

 

「いちいち可愛くない後輩だなぁ、君は」


 唖然としている鳴海に代わって、ヒロは破片拾い。煌上の言うとおりである。


「私は自分のことを可愛くないなんて思ったことないですけどね。少しはモテるんですよ、私」


「うわっ、自意識過剰だな。そういう所が可愛くないんだよ。てか羨ましいな、モテるとか!」


「こっちこそ『うわっ』ですよ、僻みですか何ですか。小さい男はモテませんよーだ」


(うわっ可愛くな!ホントにこの後輩可愛くないよぅ!)


(……あと、鳴海ずっと呆然としてるけど大丈夫なのかコレ。そんなにも模擬戦嫌なのか。うん、僕も嫌だ)


「ま、その、なんですか……死なないように頑張ってくださいね」


 ボソッと呟かれた一言。


 煌上は破片を集め終わったのか、そそくさと退散して行ったので、顔を見ることはできなかったけど。


(もしも照れた顔だったら、満点ですね! 先輩グッと来ちゃいますよ!)


 とりあえず、呆然としたままの鳴海をどうにかしなければと、ヒロは鳴海の目の前で手を振ってみる。


「お~い、鳴海?」


「━━ワタシハダイジョウブワタシハシナナイシナナイシナナイシナナイシナナイダカラダイジョウブダカラダイジョウブワタシハシナナイ…………」

 

 …………そっとしておこう、そうヒロは思った。


 無理もないだろう。なにせ、鳴海は正真正銘初めての戦闘なのだから。


 ヒロは、胸中の緊張を強引に押し殺しながら、残された時間、絶品料理をたらふく食べることに専念した。


(━━今日が最後の晩餐になりませんように)


読んでいただきありがとうございます!

初めての三人称視点、かなり苦戦しました。と、いうのも、僕の力量では一人称視点にすると、視点が安定しないんですよね。これについては結構ご指摘いただいたので、いっそ三人称視点にしちまうか、と。その辺のことは、活動記録にも書いておきましたのでチェックしてくれると助かります!

次回は水曜日か木曜に出せたらなぁと思います。時間は昼くらい?もしかしたら部活終わってから出すかもしれない……


これからもよろしくお願いします!

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