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第7話 夏フェス行ったらデイリーガチャを回せた

 俺のステータスのスキル欄には、『デイリーガチャ』というまるで課金ゲームのような項目があった。

 そもそもそれってスキルか?

 クロエも


「初めて聞いたスキルです」


 と言う。


「それだったら、ステータス画面の文字を指で触ると説明が出るので、触ってみてください」


 クロエの指示に従い、『デイリーガチャ』の文字をクリックしてみる。

 すると小さな別画面で、デイリーガチャの説明文が浮かび上がった。


・≪デイリーガチャ≫

 説明:その日役に立つであろうアイテムがランダムで出てくる。レアアイテムが出る事もあるが、ハズレもある。毎日一日一回回せる。一回百円。



「なんだこりゃ?」


 全く持って意味不明だ。でもなんだかワクワクするのは何でだろう?

 とにかく一日一回なら、早めに回して損はない。むしろ夜回そうと思っていて日付が変わってしまったら一回損してしまう。ということで早速このスキルを使ってみることにする。


 スキル発動は、意識を集中してスキル名を呟けばいいのだろう。


「≪デイリーガチャ≫」


 すると……、


「うわっ!」


「キャッ!何ですか?」


 二人で驚きの声を上げてしまう。突然目の前に、ガチャガチャが出現したからだ!

 もう何でもありだな、この世界。

 どんなものが入っているのだろうと、横から中身をのぞく。だが金色、赤、青、銀色などのカプセルが見えるが、その中に何が入っているかまでは見えなかった。


「カイさん、これは何ですか?」


「これがデイリーガチャだろう?早速回してみようぜ!」


 二人の前に出現したガチャガチャの前に俺はしゃがみ込む。


「使いかた分かるんですか?」


「ああ、俺の世界のガチャと同じなら……」


 俺は早速財布から百円玉を取り出す。

 財布の中の百円玉はあと3枚しかない。百円玉がないとできないのだろうか?五百円玉なら一枚あるが、おつりがでないものだろうか?千円札は使えないのだろうか?

 まだいろいろ検証すべきことがあるが、とりあえず回してみよう。


 俺は百円を入れ、ハンドルを回す。

 グリンと一回転回すと、中でガチャガチャという音がし、下からカプセルが一個出てきた。


「やった!金色だ!なんとなく当たりっぽい気がする!」


 出てきた金色のカプセルを手に取ると、ガチャガチャ本体は消えた。

 俺はカプセルを開ける。

 開けた瞬間金色のカプセルは消滅し、その中に入っていたアイテムが出現した。


「おお!」


 出てきたそのアイテムは……、ナイロン製のバックパックだ!


 こんなデカいのが、どうやって手のひらに収まるサイズのカプセルの中に?

 もう何でもありだなこの世界、質量保存の法則とかも関係なさそうだな。

 小さい疑問は捨てよう。でなければこの異世界に適合できないだろう。

 自分が元居た世界の常識はここでは通用しないのだ。もしかしたらこの世界では、例えば軽いものより重いものの方が落下速度が速いかもしれない。雷を手で掴めるかもしれない。おならで空を飛べるかもしれないのだ。もしそうだったとしても、それはそういうものだと受け入れよう。


 カルチャーギャップに頭を悩ませたのは一瞬。俺はすぐに目の前のアイテムを確認する。


 当たりだと思ったけど、リュックか……。今持ってるし、二個いらないし、ダブりじゃん。

 しかもこのデザインは、俺の今使っているのとほとんど同じデザインだよ。カラーもブラックで一緒。


「今日はハズレか……。いや、待てよ、百円でこのリュックが買えたと考えたら当たりかもしれん。俺のは確か四千円くらいで買ったもんな」


 ダブりじゃなきゃ当たりだったのにな。

 くっ、それにしても、異世界っぽいアイテムが手に入ると思ったんだけどな。妙なところで現実と混ざってやがるな。


「カイさんの持ってるのと同じやつですね」


 ネコがナイロンリュックを興味深そうに見つめている。


「そうだな……」


「軽くて使いやすそうですね!」


 クロエの物欲しそうな視線を察し、俺は言う。


「いいよ。これあげるよ」


「ええっ?」


 クロエは、両目を大きく見開いて驚く。これだけリアクションが大いと嬉しくなるな。


「で、でも……、良いんですか?今スキル使って手に入れたばかりのアイテムなのに!」


「フフッ、二つ持ってても仕方ないしな」


 そのずたぶくろよりは軽くて使いやすいと思うぞ。俺とおそろいになっちゃって申し訳ないけど。せめて色違いが良かったね。

 クロエが使ってくれるなら無駄にはならないから、逆に良かったかもな。

 クロエは早速蜂にかじられて破れたズタ袋の中に入っている荷物を、俺があげたリュックに移し始めた。

 

「あれっ?!」


 するとクロエが突然大きな声を上げる。


「すごい!もしかしてこれ?!」


「どうした?」


「カイさん、ありがとうございます!」


「だからどうした?」


「こんなすごい異次元収納リュックをいただけるなんて!」


「今何つった?」


「え?異次元収納リュック、ですか?」


「何……だと……?」


「ほら見てください」


 そう言ってクロエは自分の荷物を俺があげたリュックにどんどん詰める。するとリュックの中は入れた物ほど膨らむことなく、タオルが数枚入っているかなといった程度のボリュームだ。


「持ってみてください」


 そう言ってクロエから手渡されたリュックを持つと、軽い。中身が入っていないかのようだ。


「中が異空間と繋がっていて、大きさ以上の荷物を詰め込むことができるんですよ。重量もないし、たくさんの荷物を運ぶのに最適ですよね。こんなすごいアイテム、本当にもらっちゃっていいんですか?」


 俺が異次元収納リュックだと気づいていなかったと分かり、俺に返した方がいいと思ったのだろう。

 だが、一度あげると言ったものを、やっぱり返せとは言いづらい。


「もちろんだ。クロエは女の子だし、荷物は軽い方がいいだろう?」


「わぁー!優しい!」


 ふっ。かっこつけるのも辛いぜ。

 明日はもっと良いやつ出してやるからな!

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