第11話 異世界のお城で第2章登場人物登場
案内されたのは、王様が住む城ではなく、同じ敷地内にある大きな館だった。
王女は現在、ここで病気の治療をしているらしい。
王女と会う前に、なかなか面倒くさい面接が待っていた。
俺たちが通された大きな部屋には、正面に六人の人が並んで座っていた。見るからにどの人も上流階級の人と言った感じだ。扉から入った俺たちは、その六人と向かい合うよう部屋の真ん中に用意された椅子に座った。
俺たちが椅子に座ると、横に立っているタキシード姿の白髪の男性が話し始めた。
「私は、この屋敷で王女様の執事をさせていただいていますロベルトと申します。皆さま遠いところをお越しくださり、ありがとうございました。わざわざお越しいただいておいて申し訳ないのですが、これから必ず王女様の治療をしていただくわけではございません。まずは一度治療方法などのお話を聞かせていただいた上で、治療をお願いするかどうかをこちらで判断させていただきます」
ロベルトさんの説明によると、もしこの面接で既に試した治療法だとか不適切な治療法だと判断された場合、このまま帰ることになるそうだ。
そして俺たちに自己紹介をするよう求める。
ファランさん、俺、クロエの順で名前を名乗る。ファランさんは村で診療所をしている薬剤師、俺とクロエはその下で修行している手伝いだと名乗っておいた。
次に座っている人たちの紹介が始まった。
・一人目
「まずは中央にお座りになられていますのが、この国の国王の、アトラス・グリセリア国王陛下でございます」
「アトラスだ。この度は遠路はるばるありがとう。どうか娘エリスの力になってくれ」
そう言って、中央に座る威厳のある風貌の中年男性が挨拶をする。
えっ?この人が国王?!この国で一番偉い人?
国王は黒髪短髪で、刈り揃えられたアゴひげを蓄えていた。貴族とか偉い人は威厳を持たすためにひげを伸ばすと聞いた事がある。ひげをそったら若く見えそうだ。恐らく40代半ばくらいじゃなかろうか。
いきなり国王陛下と会ってしまって、びっくりしてしまった。
病気の王女の父親か。娘が心配で仕方ないんだろうな。
この人が国王だとすると、隣の女の人がが王妃かな?
・二人目
「隣にいらっしゃいますのが、ヒルダ・グリセリア王妃殿下でございます」
「ヒルダです。この国の王妃としてではなく、一人の母親としてお願いします。娘のために、皆様どうか力を貸してください」
当たりだった。
そう言って王妃は悲しそうな表情で頭を下げた。娘が何年も病気で苦しんでいるのだ、心境は計り知れない。
王妃はおそらく国王と同じくらいの年齢なのだろうけど、一見20代にも見えなくもない綺麗な人だった。あまり化粧もしていないのは、この面接が公のものではないからだろう。
二人の挨拶から、なんだかこの国の王族はあまり威張り散らすタイプではなく、誠実な人そうだなあと感じた。
・三人目
「お次がエリス王女殿下のお兄様にあたります、ロデリック・グリセリア王太子殿下であります」
「ロデリックだ」
国王アトラスのひげを取って若くした感じ。年齢は俺と同世代だろう。精悍な若者という印象だ。
王太子というからには、この人が第一位の王位継承者で、次期国王ということだろう。
王女の治療をする医者の面接に、おそらくこの国の国王一家全員が出てきたと思われる。王太子の病気ならまだしも、王位継承予定の無い王女の医者ならこの三人のうちだれか一人いれば十分な気がする。そこに敢えてこの三人が同席するということは、王女はよほど家族から大切に思われているのだろう。国王一家と言っても仲の良い普通の家族なのだろうなあと感じた。
・四人目
「その隣が、王家お抱えの侍医であります、ミハエル・スプルース氏です」
「ミハエルです。よろしく」
白髪交じりの髪をオールバックにしているその人は、医者とは思えない高貴な服装をしていた。貴族っぽい。貴族で医者なのかな?
真っ白なコートには黄色い刺繍で縁取られ、その素材の光沢も国王一家と劣らない高級感を漂わせている。
王家お抱えの医者という事は、この国で最高レベルの医者なのだろう。
ちなみにこの国の医療のレベルも気になるところだ。ファランさんは薬草を処方する専門のようだが、この人は手術とかするのだろうか?それとも呪術みたいな非科学的な事をするのだろうか?後で聞いてみよう。
・五人目
「続いて反対側におりますのが、コーネリウス王国の王子であらせられ、エリス王女の婚約者でもあります、ヴェゼル・コーネリウス王子殿下であります」
「ふん!ヴェゼルだ」
誠実そうな人たちが続いていたが、突然ムカつくタイプの人間が現れた。
キツネ目で、外巻きの髪の毛、その外見から第一印象でムカつく感じだったが、声を発したらさらにムカつき度アップした。今まで会った中で感じ悪いナンバーワンだ。
というか王女は婚約していたのか。感じの良いグリセリア王家が、なんでこんな感じの悪い王子と結婚しなきゃいけないのか気になる。何か理由がある気がした。政略結婚なのかな?
・六人目
「そのお隣が、ヴェゼル様がコーネリウス王国からお連れになられた名医、ゴライアス様です」
「ゴライアスです。よろしく」
なんだか怖そうな顔をした人だが、医者らしい。がっちりした体つきと坊主頭に彫の深い視線の鋭さから、暴力団の人かと思っちゃったよ。
ミハエルさんと違って、この人は真っ黒な詰襟の服を着ていた。医者って普通白衣じゃないのかな?それは俺の元の世界の常識であって、この世界では違うのかな?
とにかく、人を治すしごとよりも、人と戦う仕事の方が向いているかんじの人だった。めっちゃケンカ強そう。
そして、以上の六名の前で、簡単な面談が始まった。なんだか威圧感がすごい。




