第10話 異世界のお城へ行く前に関所で入場検査
俺たちを乗せた馬車は夜中も走り続け、翌朝王都へと辿り着いた。
馬車の中で眠っていた俺たちは、外が薄明るくなってきて目覚める。
窓の外を覗くと、田園地帯の向こう側に高い城壁が見えて来た。
「あそこが王都ですかね?」
俺は先に起きていたファランさんに質問すると、その通りだと教えてくれた。
グリセリア王国最大の都、王都ブルームバーグ。
ファランさんたちの住んでいる村は、バーガンディ領の中でも隅っこにあり、王都から近いらしい。ファランさんも若いころに王都に住んでいた事があったそうだ。
王都に近づくにつれ、田園で働く農民の人たちの姿がちらほらと見え始める。やはり農家の朝は早いのだろう。その姿を見てふと気づく。俺の服って浮いてないかと。
「ファランさん……。俺の服装っておかしいですかね?」
ナイロンジャケットに短パン。俺はフェスの時の服装のままだ。馬車で移動することを考えるに、この国にはまだ自動車はなく、文化レベルは日本より確実に低い。
「ちょっと違和感はありますが、王都にはいろんな格好の人がいますし、大人しくしてれば大丈夫だと思いますよ」
俺はナイロンジャケットの前のファスナーを開ける。下に来ているのはフェス会場で買ってすぐに着替えたTシャツだ。Tシャツには、大きな盾の形の絵の中に『J.G.R』と文字が、その下には『LOVE & PEACE』と書かれたリボンのデザインがプリントされている。フェス公式Tシャツの内の一つだ。
そのTシャツを見せると、ファランさんは目を細めて渋い顔をすると、
「それは見せない方がいいと思います……」
と、アドバイスをくれた。Tシャツにプリントする文化はなさそうだ。
それから間もなくして、俺たちは王都の城門へと辿り着いた。
城門では、入国審査のような受付をやっていた。俺たちも馬車から降ろされ、列に並ぶ。
俺たちの順番になると、お城からの使いのマトンさんと俺たち四人がまとめて受付室に通される。
マトンさんが、俺たちの事を衛兵に紹介すると、衛兵から指示があった。
「王女様の治療にやって来てくれたのだな。ご苦労様である。それでは身元の確認のために、ステータスプレートに手をかざしてくれ」
そう言われて、受付のテーブルの上にある、大理石のような材質の平らな石を指さされる。
最初に使いの人がそれに手をかざすと、石の表面にマトンさんのステータスが浮かび上がった。
「ファランさん、あれは何ですか?」
「あれはステータスプレートと言って、本人の意思とは関係なくステータスを見れる道具です。前科があればすぐに分かりますし、盗賊や暗殺者などの犯罪職業持ちはその場で逮捕されます」
「ええっ?!」
出かける前にファランさんが俺のステータスを見せてって言ったのは、これがあったからか。
俺前科なくてよかった……。
それにしてもステータスで前科が分かるなんて、便利な世界だな。それだけ悪いことはできないってことだな。気を付けなきゃ。
個人情報のため、一人一人別々に確認される。
ファランさんのステータスを確認した時は、係員から「おおっ」という声が聞こえた。なんかすごいんだろう。
俺の時も、会社員という職業やデイリーガチャという謎のスキルも特に指摘される事なく、無事に完了した。
そう言えば日付が変わったので、今日もデイリーガチャできるな。後で人気のないところでやらなきゃ。
そうして俺たちは無事に門を通過し、お城へと向かった。




