煙
赤い室内灯、ビーッビーッとうるさい警告音が宇宙船に響く。
どうやらこの宇宙船はどうにかなってしまったらしい。
原因はわかりきっているが。
わたしは8本の足をパネルに上げたまま、先ほどのタバコをふかして煙を眺めた。
このタバコの煙は赤い室内灯に照らされピンク色に染まり、色も形も、わたしにそっくりになって見え、換気扇にすうっと消えていった。
ようやくわたしは、いつもと違うこの宇宙船に、強い不安を覚えた。
もしこれが宇宙船の故障だというのなら、母星に帰れないのかもしれない。
見つけた星の発表もできないのかもしれないと思うと、つらさがこみ上げてきて、今すぐに帰りたくなった。
わたしは、ボタンを押すために、パネルの上の3本の足をどかし、ふたつめの緑色をした母星に帰るボタンを押した。
途端にうるさい警告音は消えて、元の宇宙船に戻ったように感じた、室内灯は赤いままであるが。
もう、今は星を探したりしている気分ではなくなってしまった。
だからといって、何もすることがないので再び3本の足をパネルに乗せ、計8本の足を見ながらふと思いついた。
今日はベッドではなく、このビーッビーッと騒がしい運転席に座って寝よう。
短くなったタバコを灰皿にやり、換気扇を止め、
目を閉じた。