歩く導雷針
「でお前らのやられたやつってどんなやつなの?」
机に座った金髪のチャラチャラしたやつが、この前楽にボコられた奴らを床に座らせて聞いた。
「そいつのハイジンクスが校舎の壁とか地面とかぶっ壊すやつで、とにかくヤバいんです」
「ふーん、そいつは面白そうじゃん」
「てめぇ、面貸せや」
俺と煉と歩いてかえっていると金髪で柄の悪そうな上級生に絡まれた。
「わかりました」
「大丈夫なの?」
「まぁこういうのは、慣れてるし。煉はさきにもどってて」
「僕もいく」
「はぁ……わかったよ。ただし、俺がハイジンクスを使ったらすぐに逃げろ」
「……わかった」
俺たちはこの男についていった。そいつの後ろをついていく。要件がわからない以上こちらとしては何もできない。ファーストコンタクトからしていい要件ではないことはわかった。雷雲立ち込める中、海沿いの道を歩くとそこはコンテナヤードだった。
「俺は二年の狭間 司。雷帝と呼ばれている。今からこの前やられた友の為、お前を倒す」
狭間は、鞭状のものを俺たちめがけて打ってきた。俺たちはコンテナの後ろに隠れた。
「でどうするの、相手は強そうだけど逃げる?それとも戦う?」
煉は不安そうに俺に聞いた
「賭けるにきまってるだろ。運の悪いほうに」
俺のジンクス確約された不幸者の前では確率の良い最善策などほぼ無意味、運の悪い方にかけた方がスムーズに動ける。
俺は相手に突っ込んでいった。相手は鞭状のものを俺めがけて打ってきた。すぐさま、その前に破壊する者を出し掴んだ。
「馬鹿め、それには電流が流れている。一度掴んだら離せまい」
人は電気の流れている電線を掴むと体が硬直して動けなくなる。濡れていない状態で硬直するほど電流を出せるといことはそれなりの使い手に違いない。ただ、破壊する者には意味がない掴んだと同時に電線は切れていた。
「くそ」
相手はそういうとすぐに逃げる仕草をした。
「お前それで誘ってるつもりなの」
「えっ」
「お前が最初に雷帝といったのは強力な雷使いというのを相手に認識させるため、電線を使って雷を通したのはその雷帝であるということが正しいと証明するため」
「どうして、それを」
「根拠はそもそも、ホントに雷帝と呼ばれるほどの強力な雷使いなら相手に雷を落とした時点で勝利が確定するのにわざわざ鞭を使って攻撃していること、あとは普通能力は隠すのが原則なのにわざわざ言うのはおかしいということ。そして今中途半端な逃げる仕草は、こっちに来いと誘っているということ、つまり罠、しかも近距離でしか使えないでОK?」
「全部お見通しというわけか。けど、お前の能力も十中八九近距離タイプだろ?」
「この能力は、な」
俺にとっては嘘をつくのは当たり前だった。もし嘘がバレてもそれはそれでどうでもいい。俺は意味のない嘘もつくし、意味のある嘘もつく、ただ多いのは、真実を言うが物事の本質は答えないということだ。
「まぁ、いいけど。さっさとこいよ」
「わかったよ。今回は俺のハイジンクスでてめーのジンクスぶち壊してやんよ」
煉は空を飛び、様子をを見ていた。戦闘タイプのハイジンクス同士が本気で戦うのは初めて見る光景だった。相手のハイジンクスは雷がバチバチいっていてもろ雷タイプだった。楽と同じく人型のハイジンクス、ただ攻撃するような形ではなく、強くはなさそうに見えた。楽が破壊する者を出し近づく次の瞬間、雷が光った。雷が当たり相手のジンクスに当たった。そして、破壊する者にも感電した。俺は自分のジンクスと距離をとっていたので感電せずに済んだ。
「なるほど、お前のジンクスは自分が雷が当たりやすくなるジンクス」
聞いたことがある。雷に人生で7回当たったことがある人が雷が自分を狙ってくるのがわかると言っていた。
「――わかったどころでどうなる。近づいたら雷、そしてお前のハイジンクスはもう動けまい」
「いや、近づくけど」
「――ばかめ、落ちろ」
雷が俺の目の前に落ちる。
「馬鹿はお前だ。俺がお前の射程距離を測るのにハイジンクスを出したのがわかんねーのかよ」
「――かわしてばかりじゃ勝てないぞ」
「お前も少なからずダメージ受けるんだろ。その能力。じゃあ自滅をするまで打たせればいいだけ」
狭間はダッシュしながら雷を打った。俺はすぐにバック走をしてかわした。
「最初にそれを使えば勝てたかもしれんけど、ダメージを受けてからなら俺のバック走の方が早い。もう負けを認めれば」
「――わかった。今回は俺の負け。飽きたから帰るわ。じゃあな」
狭間はそういうと何事もなかったように帰った。