表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼兵  作者: tama
2/5

一話

 東鬼兵高等学校――俺が通うことになった学校だ。

 ここは鬼が占拠している東日本大陸(この世界には日本以外の国は存在していない)と人類の領土となる中央日本大陸の境目付近に位置する。

 鬼兵とは鬼と戦う為の兵士、略して"鬼兵"と言うわけだ。この学校に通うものは少なからず最前線で鬼と戦わされる為、それなりの覚悟と実力を持った者ばかりだ。


 俺たち新入生は先日入学式が行われたばかりで寮から支度して学校へ行くはじめての日だ。

 寮から校舎へはそこそこの距離があり、五分ほど歩かなければならない。

 俺は支度して二十分ほどの余裕をもって寮を出た。人はいない。

 校舎までは一本道なので人がいないぶんどことなく淋しい雰囲気である。何本か木がはえていて、風に揺れて音をたてている。チュンチュンと小鳥が歌い、空もまだ淡い。

 そんな清々しい朝の道を歩いていると横にある物置小屋の中から女性の声が聞こえた。

「きゃあっ!!」

「おい!静かにしろっ!」と男の声が聞こえる。しかしそれは一人ではない。複数人いる。

 俺は急いで物置小屋へ行きドアを開けた。すると制服の乱れた女性、そしてその女性を囲む男たちがいた。

 全員この学校の生徒である。女性は名札の色から一年生でそのほかの男たちは二年生だ。


「んだてめぇ!?」と左の男が言う。

「こんな所で何してるんすか?」と俺は言った。

 てめぇには関係ねぇだろ、そう右の男が言った瞬間

「助けて!!!」と女性が言った。

「このアマ……!余計なこと言いやがって!!」と三人目の男が女性に手をあげようとしたその時、俺はその腕を右手で掴みに行った。男は驚いたように目を見開きながら俺を見やる。


「こんなことやめてください。彼女、嫌がってるじゃないですか。」と俺は言った。

「おいお前……あんま調子のんじゃねぇぞ……こちとら成績は学年でも上位なんだぜ?痛い目会いたくないんだったら消えろ。おっと、この事は言うなよ?チクったらどうなるか……分かるよな?」

 脅迫気味に男が言ってくる。

「チクるもなにも、この物置小屋には監視カメラが仕掛けてあるって生徒手帳に書いてありましたよ?」と俺は言った。

 すると男たちは汗をかいて焦っていた。どうやら知らないようだ。監視カメラがついてない(・・・・・)ことを。

「く……じゃあ仕方ねぇな。証拠隠滅にまずはお前から痛め付ける。」と男が言った。どうやらカマかけは意味をもたなかったようだ。

 男が俺に殴りかかってくる。俺はそれをかわして腹の溝おちに膝げりをかます。男は悶え苦しみ地面に頭をつけた。

「てんめぇ……やりやがったな……?」と右の男。

 苦しんでいる男は殺す、と囁くように言った。そして全員の腕に光を帯びた。これは超能力の一つ"アームストロング"、腕を硬質化させるものだ。

 初歩的な超能力である。だが、鍛えると充分な威力を持つことになる。人を殺せる程に。

「待ってください。こんなとこで争うんですか?教師や生徒たちに気付かれるかも知れませんよ?」と俺は言った。だが男たちは後に退けなくなったのか、やけくそになって俺に攻撃を仕掛けようとする。

(……争いは避けられない…か。入学早々入院は避けたかったのだが、まぁ仕方ないな。)

 ここで暴れてもらえれば教師も黙ってはないだろう。少々痛いだろうがここは彼女の為に我慢しよう。

「コラァ!!貴様ら何をしてるんだ!!」

 後ろから怒鳴り声が聞こえた。教師だった。



 その後、二年生の三人組が教師に連れていかれた。まぁ停学にはなるんじゃないかな。

 時間を見ると10分前だ。そろそろ急がなければならない。そう考えながら小屋を出ようとすると

「あ、あの…!」と彼女が声をかけてきた。

「?」

「お、お名前を…教えてくれませんか…?」と彼女が聞いてきた。

神谷雷樹(かみやらいき)。」と俺は簡潔に答えた。

「あ、ありがと。ぁ…私は霧島加奈子(きりしまかなこ)です。」と彼女は言った。

 俺は仲良くする理由はなかったがとりあえず俺はよろしく、と言っておいた。そして霧島の返答を聞かずに小屋を後にした。



 今日の授業は東鬼兵高等学校の入学試験である超能力"アームストロング"でのパンチ力測定をもう一度する。ちなみに、合格ラインは100㎏だ。

 "アームストロング"では元々の力関係なく超能力の精度によってその威力が変わってくる。精度次第では女性が男性に勝ることも珍しくないのだ。


 この学校には超能力を使う為だけに作られた部屋がある。その部屋で俺のクラスは男女に別れて一列に並んでいる。

 測定する機械はサンドバッグのようになっておりそこに向かって思いっきりパンチするのだ。

 一人ずつパンチしていき俺の番が近付く。

 ふと、隣を見ると霧島がいた。

「あ。」と霧島がこちらに気づき声を出した。

「一緒のクラスだったんだな。」

「だね。あ、今朝は…ありがとね。」

「おう。」

 少しの沈黙。

「あ…あの、下の名前で呼んでいい…かな?」と霧島が言った。俺はうなずく。

「ありがと!…雷樹くん!」と彼女は嬉しそうに言った。その後に私のことも下で呼んでいいからね、と付け加えてきた。

 俺としてはあまり人と深く関わろうとしないつもりだったのだが…まぁ、彼女が恩を感じるのも無理はない。

 そうこうしているうちに俺の番がきた。

 平均は男女あわせたものでだいたい140㎏程だ。

 俺は腕に意識を集中させ"アームストロング"を発動させる。そしてサンドバッグに向かってパンチした。

 146㎏

 まあまあだ。

 ちなみに霧島は105㎏だった。まぁ体を強化させる基礎のものは精度をあげることができる為、まだまだ希望はある。



 一日の授業を終えて俺は寮に戻ろうとした。すると今朝の二年生三人組が入り口付近で待ち構えていた。


「おい、てめえのせいで俺らは停学処分をうけたじゃねぇか。」

 睨み付けながらそう言ってきた。恐らく俺に恨みを持ったのだろう。腹いせに痛め付けにきた、そんなところだろうか。

 さて、どうすればいいだろうか。基礎系の超能力では確実にこの三人には勝てない。そうなると『オリジナル』を使わなければならないが……。

 周りを見る。人はいない。これなら地面が歪む(・・・・・)程度で済むだろう。


 オラァ、等と叫びながら三人が"アームストロング"を発動し向かってくる。


 俺は詠唱する。心の中で。


 全知全能の神よ。その力を我に与えたまえ。



 雲が上空にたちこめる。

 ゴロゴロと音がなる。


 バチッ


 三人は目を見開き驚いている。腰を抜かして口をあんぐりさせ言葉を発せずにいる。


 ――何故か。それは……



 俺が手に雷を纏っているからだ。



「オ……オ……オリジナル……!」一人の男が言った。


「…安心しろ。死にはしない。」

 そう言って俺は右手を前に出した。

「"スパーク"」

 その時、三人の周りに無数の雷が巻き起こった。


 三人は気絶して倒れている。雷で地面が歪んでいる。この技の良いところは音が小さいことだ。だから周りには気付かれていない。


「ふぅ。殺さずに使うのは難しいんだよ。」


 ()に授けられしこの超能力は加減が難しい。更に副作用のようなもので、目が蒼くなったり気分が高ぶってしまう。だからあまり使いたくないのだ。


 入学二日目から色々あったが今日も生きて過ごすことが出来た。




 ――――おい――

 なんだ。

 ――――そろそろ貴様の日常が非日常に変わる頃が来たみたいだぞ――

 もうそんな時期か。

 ――――覚悟せよ。鬼は本気で人類の領土を奪還しようとしておる――

 分かってるよ。だから今日はもう眠らせてくれ。







 ゼウス。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ