表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

犬の冥途

作者: 竹中時雄

 車に轢かれたのははっきり覚えていた。自分の周りがおびただしい血の海になったのが見えて、うわー血だらけだ。ああ~こりゃ死ぬわと思った。暢気なのではない。諦観とでも言うものなのだろう。

 そして目の前が真っ暗になって、ふと気がつくと寒々しい草原に私は立っていた。それまでの経緯から、自分は死んで、冥途とやらにいるのだろうと思った。

 さて、何をすればいいのだろうと思っていると、遠くから何かがやってくるのが見えた。

 犬であった。五匹の犬が、こちらに走って向かってくる。

 私は噛まれると思った。五匹の犬に襲い掛かられては、たまったものではない。死んでしまう……ああ、私は既に死んでいるのだった。そうなると、犬たちに噛み引き裂かれたら私は一体どうなるのだろう。

 そうこうしていると、ついに犬たちが私を取り囲んだ。

「どうして人間がここにいる?」

 なんと一匹の犬が口をきいた。

「どうしてって言われても、車に轢かれて、死んだらここにいたんだよ」

 知らない人には基本的に敬語で話す私だが、犬に敬語で話すというのもおかしいので敬語はやめた。

「ここは犬の冥途だぞ。人間のくるところじゃない。閻魔様に言って、人間の冥途に移してもらおう」


 そういうわけで、私は無事、人間の冥途にいくことができた。いわば私は、犬の冥途を垣間見た貴重な亡者なわけだ。


 そして君自身は気づいていないようだが、その亡者の話を聞いている君は、今、冥途にいるのだ。


即興小説トレーニングというサイトで出された「犬の冥界」というお題で、即興で十五分で書いたものを若干手直ししたものになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ