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Special Bowline collaborated with 蓮  作者: 時任 & 夜神
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風香と雄二

大我に恋する風香に雄二が優しく恋のアドバイスをします。


なかなか一歩を踏み出す事が出来ない恋愛初心者の風香に、美紀とのデート前にふらっと現れた雄二がどう指南するか?


風香を夜神 蓮さん。雄二が私、時任が担当。今回は、性別通りに担当致します。

「はぁ……」


昔馴染みの公園のベンチに座りため息をつく。部活が終わってから少ししてからの公園だ、もう子供はいない。

小さい頃大我と椿とよく遊んだこの公園を見渡す。


(こんなに小さかったっけ?)


「可愛い子にため息…似合わないよ」


 声の方に顔を向ける風香。会ったことも見たこともない男の子が両肘を同じベンチの背もたれに掛けて座ってる。


「何、見てんの? やっぱ俺ってそんなに格好いいかな?」


「あの……どなたですか? あと、格好いいかどうかは……」


いきなり話しかけられ、しかもなんかちょっとナルシストの男の子に……これってナンパ、なのかな?椅子から立ち上がりスクールバックを抱えてちょっと構える。


「あっいやいや! んな怖がらなくても…。俺…雄二って言うんだ」


 ブラウスの第二ボタンまでキッチリ閉めて化粧けもない、こんな子に、息なり声掛けたら引かれる。由美から真面目な子なんで気を付けてねって言われてた。頭を掻く雄二。


「こ、これ間違ってもナンパじゃないから。は、話せば…複雑な話なんだけどさ。俺…由美って子に君と話してこいって言われてさあ」


雄二君は私に静かに笑いかけた。とりあえず悪い人じゃなさそうかも。


「雄二君? 大我の友達かなにか? だったら今は話したくない。それに由美なんて人、私知りません。」


そう言いながら雄二君の隣に座り直す。


 由美が何故、俺をここに送ったかよく分かる。もしタケルなら、風香に引かれた時点で、「ああそうかよ」って逃げちまう。智喜なら…。ま、あいつは顔見られただけで相手に逃げられちまう。思えば、美紀との出会いも、美紀のドン引きから始まった。由美は、先ず風香が引くって読んでたんだ。引かれた相手を呼び戻す。それが俺の得意技だって、由美は分かってたんだ。「可愛い子と喋って来て」。由美の言葉に一瞬ニヤけた俺だった。そう言う事か。苦笑いで、俺は髪を掻き上げた。


「俺は大我の友達じゃない。ま、大我と由美は友達同士かもしれないけど…」


 俯いていた風香がキリッと瞳を上げた。「大我と由美が友達」。その言葉に風香が反応した。大我の事…まんざらでもなさそうだな。


「安心しなよ。俺も由美も現実には存在しないんだ。由美の気まぐれが原因で別世界から遊びにきただけさ。だから、仮に大我がいくら由美の事が好きでも、二人は付き合えない。君がいくら俺を好きになっても、君は俺と付き合えない」


雄二はそう言いながら外人がするように首をすくめた。

大我が由美とかいう子と友達で、その友達が雄二君。


「あの、よく意味がわからないんですけど……それに違う世界って? 大我がその由美って子好きなんですか!?」


 雄二は腕組みし、空を見上げた。


「要するに…。普段は住む世界が違うけど、悩んだ時はお互い様ってやつさ。世の中には色んな高校生がいる。たまにはタイプが違うもの同士の方がお互い新鮮なアドバイスをし合えるって事あるだろ?」


 肘をベンチの背もたれに戻した雄二。風香に笑顔を向けた


「俺には…君に負けないくらい可愛い彼女がいる。だから、ナンパなんてしないよ」 


 分かってくれたのかどうか? 漸く、風香が笑顔をこぼした。


「それに…大我は由美を好きじゃないし。由美は…大我を弟みたいに思ってる。安心しなよ」


 風香の肩を軽く二回叩いた雄二。軽いスキンシップに慣れていない風香が雄二を睨み付ける。ヤベ! ついつい、由美達と話してる時の癖が出ちまった。


「そ、そう。俺達はこう言う感じの高校生。普段は、風香達とかけ離れた存在さ。由美もこんな感じなんだよ。大我みたいなタイプは苦手だろ? 由美みたいなタイプ」


 口に手を当て、再び、風香はクスッとこぼした。


アドバイスをしあえる存在か。なんだか分かったような分からないような感じ。でも、気にしないでおこう〜

それに雄二君悪い人じゃなさそうだし、なんだか安心する。


「可愛い彼女さんを置いて私なんかのところに何しに来たんですか?」


スクールバックを膝に乗せてベンチの背もたれに寄りかかる。だって、たとえ頼まれたからって雄二君みたいな美形な高校生が私のところに来るわけがない。

それとも、私の悩みなんかを聞いてくれるのかな?


 風に靡いた髪を耳に掛けた風香。まだ恥ずかしいのだろうか? 若干視線を下げて微笑む。フローラルな髪の香りがその風に乗り雄二の臭覚に入り込む。風香かあ…。その名前にぴったりって、いかんいかん! 首を小刻みに振る。「言っとくけど、1ミリでも変な考え起こしたら美紀にチクるからね」。ニヤけた俺に釘を刺した由美の怖い顔を思い浮かべる。


「と、当然、悩み事を聞きに来ただけだよ。溜息は何の解決方法にもなんない。吐き出さないと」


 普段、喧しい女に囲まれてると…新鮮だね。こう言う子は…。いかんいかん! まだ小刻みに首を振る雄二。


私の悩み、か……

確かに吐き出した方が良いかもしれないけど。

でも、雄二君ならいいかな?

彼女さんもいるし、いいアドバイスくれるかも。なんか小刻みに首振ってるけど……


「あのね……今日、大我と喧嘩しちゃったの……別に気にしてるってわけじゃないんだけど、やっぱり気が重くて……」


 雄二は遠くを見詰めた。


「喧嘩かあ…。仲が良い証拠じゃん。俺の親友でタケルと彩って奴らがいるんだけど、そいつらも喧嘩やりたい放題の仲だったよ。そいつら今どうなってると思う?」


雄二君はにやにやしながら私を見た。


「喧嘩仲間ってことですか? どうなってるんですか?」


鷹虎君と元君は喧嘩仲間だけど、仲がいい。そういう関係かな?


「ラブラブのカレカノ関係さ。あれは好きあってるどころじゃねえよ。愛し合ってる。良かったら…その付き合いの内容言ってやろうか?」


 雄二はニヤニヤしながら、風香に軽く指を差した。


喧嘩仲間がカレカノ?

そんなカップルあるの?


「仲がいいんでしょ? そりゃいいカップルなんでしょ〜今後の参考に聞きたいな〜」


 躊躇すると思ったけど、聞きたそうな風香。言ってしまったからには仕方ない。フッと笑って、雄二は内容を始めた。みるみると赤らむ風香の顔。風香は視線を下げてスクールバックを強く握る。まだまだ、序盤の方だけど、もう限界だな。


「てな感じで、ほぼ毎日のように愛し合ってるよ。あいつら」


聞くんじゃなかった……

顔が熱い。そんなこと高校生はやってるの……

でも、その彩って子は毎日幸せなんだろうな……思いが届いて、いつも一緒にいれて。


「あの……雄二君。私が好きな奴はとっても鈍感でバカで私の気持ちに気が付いてないの。どうしたらいいかな?」


 由美から聞いた話じゃ。大我も相当、風香が好きって話。全くタケルと彩と一緒。タイミングが会わないだけ。にしても、その大我って野郎はこんな可愛い子ほっときやがって…。んなんなら、俺が…って、いかんいかん! また小刻みに首を振り、美紀の可愛い顔を思い浮かべた雄二。


「喧嘩の理由は…何?」


 綺麗な瞳を上げる風香。マジ、腹立つ野郎だな。大我。


喧嘩……

思い出すだけなのになんだか涙が出そう……


「あのね。他愛もないことなの。私が隣のクラスの子と話してたら、大我が“あいつ、お前のこと好きなんじゃないの?”て笑いながら言ってきたの。それが私なんか悲しくて……つい“あの子、大我なんかより断然良い”って言っちゃって……そしたら喧嘩になった……」


大我と私は小さい頃から一緒にいるからお互いの事をよく分かってる。分かってるからこそ、分からないことがある。それが恋愛関係だ。


「なるほどねえ…」


 雄二は膝の上に肘を着いて頬杖する。にしても可愛い喧嘩の理由だな。売り言葉に買い言葉。まあ、微妙な関係の男女によくある現象だ。


「風香は…大我のこと好きなんだろ?」


いきなりの核心ついた発言。


「なっ! 好きって言うか……そりゃ……好きって言ったら好き……かな。」


なんだか素直になれないよ……大我のこと好きなのに、好きって言えない……



 雄二はまた髪を掻き上げて、静かに笑う。


「んな遠慮しなくていいじゃん。さっき俺が大我と由美の事を話した時。その時の風香の前に鏡置いて見せてやりたかったなあ…。顎を引いて奥歯を噛んだ風香の表情。嫉妬に狂った女の顔だったよ」


 素直じゃない子を素直にさせる方法。先ず、その子を嫉妬させろ。数多い女を見てきた雄二の経験が活用され始めた。


「で、風香は俺に『私が好きな奴はとっても鈍感でバカで私の気持ちに気が付いてないの。どうしたらいいかな?』って言ったよね。それから、俺は一度も大我の名前を出しちゃないよ。でも、風香は大我の事を話した」


 素直じゃない子を素直にさせる方法。その二は、何気にその子を好きな奴に導いてやる。


「好きかなじゃなく。もう、気が狂いそうになるほど大我が好きなんだよ」


 そして、最後は、優しくその子の心の中を代弁してやる。もう一度、髪を掻き上げた雄二。静かな笑顔を風香に向けた。


気が狂いそうな程好き……

私が大我を好き?

そうだ、私は小さい頃から見てきた大我が大好き。

大好きな大我と喧嘩……しちゃった。

大我、なんか物凄く怒ってた。


「雄二君……どうしよう。大我を怒らせちゃったよ……好きなのに……好きな相手に嫌われるようなことしちゃった……」


泣きそうだ。いや、実際涙がこぼれているから泣いているのか。スクールバックを握り締め別れ際に見た大我を思い出す。

椿と帰って行く大我。そのまま私から遠ざかっていくのが怖い。


「どうして、こんなくだらないことで喧嘩なんかしちゃったんだろう。素直になれない自分が嫌い。」


きっと大我は私なんかのこと嫌いなんだろな……


 ヤベ! 泣かしちゃったよ。雄二はポケットからオレンジジュースの缶を出し、風香に差し出す。風香が黙って受けとると、反対側のポケットからコーヒーの缶を出した。


「別に…喧嘩は悪い事じゃないよ。俺だって、タケルだって、よく彼女と喧嘩する。好きだからする喧嘩もあるんだよ。大我も…風香のこと好きで好きで堪らないはずだ。だから、野郎は風香を水族館に誘ったりするんだよ」


昨日大我からのメールを思い出した。

普段必要以上にメールをしない大我からのメールに始めは驚いたけど、その内容は涙が出るほど嬉しいものだった。

雄二君からもらったオレンジジュースを一口飲んで落ち着く。喧嘩するほど仲が良い。ほんとうかな?


「でも、昨日大我からメールくれたのに、当日のことまるで他人事のようになんにも考えてないんだよ……なんか誰かに指図されて行かされてるみたいに、なにを話しても“ふ〜ん”しか言わないし……」


今日朝大我に当日の予定を聞いてみたら「未定」としか言わなかった。本当に行く気があるならいろいろ考えちゃうものじゃないの?


 誰かに指示かあ? 雄二の頭に由美の顔が浮かぶ。一々、浮かばせてもしょうがねえな。コーヒーをグイッと飲んだ雄二。


「風香の気持ちは分かった。彩のように…やっちゃうか?」


コーヒーをごくごくと飲んだ雄二君を少し驚いて見る。彼は至って真面目に話している。


「やるって……なにをよ……」


私に彩ちゃんみたいな勇気はない。


 両手で握り締めたオレンジジュースの缶を微かに奮わせる風香。何か大胆過ぎること考えてんじゃねえの?


「い、いやいや。さっき話したようなことをしろって言ってんじゃないよ。何せ、住む世界が違うから。要は、風香が主導権を握ればいい。女ってのは男の数億倍賢い生き物だ。自慢じゃねえが、俺は、いや、俺達は嫌ってほど、それを実感してる。風香、賢い女ってのは…男を手のひらで転がすもんだよ」


 雄二はコーヒーを飲み干した。


「転がし方…教えてほしい?」


女の方が賢い、か〜

確かに、うちのお父さんはお母さんに頭が上がらないときがある。手の平で転がす?


「どうやるの? 私にも出来るかな?」


 涙が乾いた風香。表情がパッと明るくなった。ベンチの上で風香は雄二に擦り寄る。意外にノリいい子じゃん。


「大我のような一直線で照れ屋なタイプは簡単に操れる。先ずは、大我に格好つけさせてやりゃ良いんだ。風香。先ず、大我と一緒にしたいことはエッチ以外になんだ?」


格好つけさせる?

どういうことなんだろう。

大我とやりたいことか……

そりゃたくさんあると思ってたけど、改めて考えると悩んじゃう。でも、一番は……


「手、繋ぎたい……」

やっぱりこれ……かな?


「そりゃもう、風香、キスって言っちゃおうよ。せっかく、俺がエッチ以外って言ってんだから」


 雄二は頭を掻く。期待としては、「それでもエッチ」って欲しかったなあ。


「そっ、そそそそんなこと……そりゃしたいけど……」


出来ないよ……

大我が私なんかを受け入れてくれるわけがないもん。


 そんなに動揺されると、こっちまで照れる。雄二はは眉間を摘まんでクスクス笑う。


「分かった。じゃ、目標はキスでいこ。その為には、水族館行きを確実にしねえとな。ここが一歩目だ。そこで手を繋いで、出来ればキスだ。照れ屋な男に学校みたいな所で、そんなメールの話ししてもまともに取り合わないよ。周りを気にしてそっけなくされるだけさ。今頃、大我の野郎は今日の傲慢を後悔してやがるはずだ。携帯握り締めて、風香に、謝ろうかどうしようか、モヤモヤしてやがるはず。風香…。賢い女、男を転がす女は、ここで男を助けてやるんだ」


 雄二は風香の肩を軽く叩いた。風香にもう違和感はなかった。


キスを目標。

うん、がんばろう!

付き合ったらそれぐらいするよね。

でも、照れ屋の大我がそんなことしてくれるか……なんか心配だ。


「大我がそんなに後悔するかしら……まぁ、してると仮定して男を助けるって、どうするの? 普通ほっとくんじゃない?」


首を傾げて雄二君に聞いてみる。っと言うより、なんで雄二君はこんなに女子のことに詳しいんだろう……

 風香の髪からまたいい香りが漂う。世の中に、まだ風香のような純水な高校生が存在した。それとも、俺達のような奴らが珍しいのか。感慨深く、雄二は自分の頭を撫でた。


「ほっとおいたら、大我は逃げてくばっかりだ。風香…。お腹が減ってどうしようもない時、テーブルの上にリンゴが1個ある。どうする? 取りに行くだろ。でも、お腹を空かせているのは風香だけじゃない。そう言う場合は早い者勝ちになる」


 真剣に雄二を見上げる風香。その健気な眼差し。一回あいつらに見せてやりたい。苦笑いを混じらせて、雄二はまた自分の頭を撫でる。


「男はねえ…。困った時にそっと手を差し伸べてくれる女の子に弱いんだ。俺もその内の一人。で、助けられた男は、『この女は俺が守ってやんねえと』って格好つけるんだ。大我にそう思わせよう。野郎またいな照れ屋は間違いなく後悔してる。証拠に…大我に電話してみりゃいい。絶対に、野郎はワンコール以内に出る」


雄二君の例えはわかりやすかった。大我は結構モテるし、クラスの子が狙ってない訳がない。そうなると、早い者勝ち……

もし、私より早く大我に告白した子がいたら……もしその告白を大我がOKしちゃったら……考えただけで泣きそうになるよ。


「そんなものなの? でも、大我私が世話やくとふいってしちゃうよ。」


椿や元君は照れてるって言うけど、本当なのかな?


「でも、一回連絡取ってみようかな……」


スクールバックのポケットから携帯を取り出し電源をいれる。


 風香がのって来た。雄二は少し俯いていて微笑む。


「そうそう。電話してやるといい。自分が電話しようかどうしようか迷ってる時に電話かけてくれる子。助けてくれる子に男は弱いんだ。で、風香の方から、水族館行きを確約する。『日曜日、9時に家に迎えに行くから、ちゃんと起きててね』って。これでOK。野郎の嬉しそうな顔が目に浮かぶ。絶対にワンコール以内に大我は出る」


 風香に手を差し向けて、雄二は電話をかける事を促した。


電話……

アドレス帳から大我の番号を出して、あと一回ボタンを押すと通話出来る。


「よし……頑張ってみます! 雄二君そこにいてよ!」


目の前の携帯を凝視していた目を横の雄二君に向ける。


「 そんな心配しなくても、ちゃんと見ててあげるよ」


 雄二は笑顔で軽く頷いた。


「ワンコールだ。野郎はすぐ出る」


優しい笑顔で雄二君は微笑んでくれた。

逆にそこまで言い切られてワンコールででなかったら、どうしよう……


「よし、じゃぁかけます!」


通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。横で雄二君がニヤニヤしながら見ていた。


 ほら、言った通り。ワンコールで大我が出た様子。背もたれに肘を掛け直した雄二は公園で遊ぶ子供達に目を向けた。


本当にワンコールで出た。


「あっ、大我? 今週の日曜日9時に迎えに行くから起きといてね。……えっ? ………うん、分かった。じゃぁ、また明日ねぇ〜」


携帯を切って雄二君を見る。


「本当だったよぉ〜本当にワンコールで出た! あと夜ご飯の約束もしたよぉ!」


 野郎…。出し抜けに夜の飯まで約束しやがったか。やるじゃねえか。苦笑いの雄二は頬を指で掻いた。


「んなもんさ。男なんて。今頃、ほっとして風香に感謝してるよ。あと一つ…大我が困った時にする癖って分かる?」


雄二君はニコッと優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。


「うん、よかったよぉ! えっと、困った時はうなだれながら髪をガリガリって掻くよ。」


これは、小さい頃からする癖。椿と探し当てた、本人には言ってないから本人は気付いてない。


「その時がチャンスだ。その時に、『どうしたの?』って優しく声を掛けるだけでいい。大我は恐らく、『何でもねえよ』ってそっけなく返すだろうけど…。内心はバリバリ喜んでる。男は単純。困った時に声をかけてくれる女に弱い。いざと言う時に助けてくれる女に弱い。自分の事を理解してくれる女に弱い。大我が弱くなるって事は風香が強くなるって事。その内、大我は風香オンリーになる。風香の言う事しか聞かなくなる。風香に頭上がらなくなる。風香のお父さんとお母さんもそんな感じじゃない? そうやって男を転がしてやればいい」


 雄二はゆっくり立ち上がった。


そうか……

優しくなればいいのかぁ!

そうすれば、大我はどこにも行かなくなる。


「ありがとう、頑張ってみる! いきなり立ち上がって、どうしたの?」


 雄二が振り返る。


「大我の奴、もしからしたら、キスも仕掛けてくるかもな。もし仕掛けて来なかったら、風香の方から仕掛けちゃえよ。何なら、また由美に…いや、キスは彩の方が上手いかな。言っといてあげるよ。風香にアドバイスしてあげてって。でも彩なら…その先までアドバイスするかも」


 チラッと腕時計を見る雄二。


「悪い。これから彼女とデートなんだ」


そっ、それは嬉しいけど、そんな心の準備がぁぁぁ!

でも、大我も男の子だし。分かんないよね……



「うぅ、頑張ってみる……彼女さんとのデート楽しんできてね。私も頑張る!」


私もベンチから立ち上がり立ち去ろうとする雄二君に手を振る。なんだか、初対面なのに昔からの友達みたいな感じだ。


 振り返えらずに、黙って手を振る雄二。あんな可愛いくて純粋な子…。何、大我の奴は勿体ないことしてやがんだ。公園の夕日に、雄二の背中が染み入り、やがて消えてなくなった。


なんか、別れ方格好いいじゃん〜そのまま雄二君は姿を消した。

少しの間公園でぼーとしていた。


「帰ろ〜と。」

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