美樹
「おかえりー!」
チャイムを鳴らすと美樹が笑顔で出迎えてくれた。
「ただいま!プリン買って来たよー」
「プリン!!!!」
目を輝かせ、私のもっているコンビニの袋を持っていく。
そんな美樹がとても可愛らしくて、私は微笑んだ。
「今日はどうだったのー?」
プリンのふたをめくりながら美樹が尋ねる。
「んー3本」
スエットに着替えながら、私は答える。
「30代と20代後半のリーマンと、でぶのおっさんだったよー」
「で、どやった?」
「んーふつう………かな?」
「そか、お疲れ様」
「疲れたよー!やっぱ三本が限界です!」
化粧を落とすと、既に布団にくるまっていた美樹の隣に入り込んだ。
既にプリンは食べ終えたらしい。さすが食いしん坊である。
「あ、歯磨かなきゃ!」
するり、と布団からでて美樹は洗面所に向かった。
私より、少し背は小さいけれど、ショートですっぴんの美樹は、まるで男の子みたいだ。
六畳1Kの小さなアパートの一室で、私と美樹は暮らしていた。
―――とはいっても、美樹にはちゃんと他に、自分の1人暮らしの家があるのだけれど。
美樹とは、大学のサークルで知り合った。
当時は大して仲がいいわけでもなかったのだけれど、とある事件がきっかけで今では一緒に暮らせるぐらいの仲になったのだった。
普段からコンビニ飯ばかりで、私とあわないと男の家をわたりあるいている美樹をほっとけないでいるうちに、いつの間にか美樹は私の家にいついてしまった。
お互いに寂しがりで、1人でいることが嫌いな私たちにとって、二人暮しはとても心地いいものだった。
他にも仲のいい友達は数いれど、今のバイトの話ができるのは勿論美樹だけだった。
私も常に美樹を必要としていたし、美樹も私を必要としていた。
他人から見ると、付き合っているの?とかレズなんじゃないの?といわれたりするけれど、決してそういう関係ではなかった。
横で一緒に毎晩寝ているけれど、お互いにそんな感情は抱いたことはないし、お互いに彼氏がいた時期もあった。
友情とか恋愛を越えた、家族愛のようなものが私たちにはあった。