異世界に来たら知らない男を押し倒していた件
白光が弾け、視界が開いた。
――次の瞬間、足場がなかった。
「……っ!」
重力が遅れて襲いかかる。
身体が空中に投げ出された。
「……ちっ……!」
受け身を取る間もなく、真下へ落ちる。
ドンッ!
鈍い衝撃。息が詰まる。
「……っ、いてぇ」
思ったより高さはない。骨は無事らしい。
だが――妙に柔らかい。
嫌な予感がして、視線を落とす。
「……おい」
低く抑えた声。
俺の下には、見知らぬ男がいた。
束ねられた黒紺の髪が乱れ、
鋭い銀の瞳でこちらを睨み上げている。
「っ……悪い」
慌てて身体を起こした、その瞬間。
障子が勢いよく開いた。
「マティアス様! 今の物音は――」
低く通る声。
振り向くと、灰銀の短髪に蒼の瞳を持つ男が立っていた。
一瞬の沈黙。
蒼の瞳がわずかに見開かれ――
次の瞬間、困惑へと変わる。
「……これは、どちらでしょうか」
一拍。
「退出した方が、よろしいか」
「は?」
沈黙。
視線を落とす。
下には、若い男。
――そして、この体勢。
俺が、押し倒している。
血の気が引いた。
……まさか。
そういう誤解か?
しかも、男と。
「冗談じゃない。俺にそんな趣味はない!」
「それはこっちの台詞だ!」
間髪入れず怒鳴り返される。
銀の瞳が、灰銀の男へと向く。
「ルーカス。誤解だ。そういう関係じゃねぇ」
ルーカスと呼ばれた男が、目を見開く。
……異世界初日。
結花を探しに来たはずが、
最悪の誤解から始まるとは思わなかった。
この物語の“その先”は、別の形として描かれています。詳細は活動報告にてご案内しています。




