第54話 殺さぬ誓い
「……かなり、酷いな、これは。」
そう言ったのはアメリアだった。
ヨンガンの告白があり、俺たちはより一層絆と救わなければならない義務感を深め、地下の奥へと足を進めていた。
日記を見た書斎の他には、もう一つの部屋しかなかった。
その先に入る他なかった。
本が大量に保存されているのならそれは“書斎”と呼ぶのだろう。
この部屋にも同様に一般的に名前がつけられるような特徴がある。
乱雑にばら撒かれる紙、ファイル。
黒い机、その上には高価そうな道具。
試験管、フラスコ。
緑色の液体。
そして、ガラス張りの部屋が隣接する。
大量のキメラが鎖に繋がれ、地面に倒れ伏している。
──それは紛れもない“実験室”だ。
「……彼らをどうしましょうか。」
このまま放置していいのか。
そもそも彼らは生きているのか。
あの日記によれば彼らは未完成のDDを打ち込まれた被験者、いわば、この悪夢の被害者。
死んでいなかったとしたら、あまりにも報われない。
「あまりいい気分はしないな──っ!ユウキ!後ろ!」『〜〜!』
耽る俺に向けて、アメリアとスズは突然大声を出して背後に警戒を促す。
思わず振り返った俺が目にしたのは、微かな声だけを垂れ流す、一体のキメラ。
研究者のキメラとは別種のDNAを取り込んだのか、羊のようなモコモコの体毛と女性の肉体が不気味に混ぜ合わさられている。
それは、俺たちが入ってきた扉から顔を出し、こちらをじっと見ていたのだ。
尾けてきたのか?敵意はないのか?
どうか無害であってくれ、その願いは、一足遅れて俺たちに反応し、人間全てを殺すべく動き出すキメラによって打ち砕かれた。
最も酷いのは、殺害のために動いたことじゃない。
あの研究者のように反応できないほどの速度で俺を殺そうとしてくれたのなら、何も考えなくて済んだんだ。
そのキメラは、足の片方がなかった。
動き出した瞬間に崩れ落ち、そしてまた、立ち上がり、崩れ落ちる。
感じるのは殺意だけ。
あぁ、心底腹が立つ。
彼女ではない。これを生み出した人物。
荒唐無稽な夢を語る、ここのボスに。
「……どうしますか。」
ヨンガンはそれでもなお戦闘の構えを解かない。
殺されてもおかしくないのだから、それはこの世界に生きる彼の行動としては何も間違っていない。
俺は彼の前に立った。
「いや、大丈夫です。──〈成長〉。」
彼らの前では初めて見せる、ありのままの俺の能力。
誰も傷つけない、今はその制約が救いだった。確かな愛があった。
伸ばした植物の茎でキメラを優しく包み込む。
最初はわけもわからず抵抗するように見えた。
だがキメラは敵をその目だけで認識していたのだろう。植物が視界を遮り真っ暗闇を作り出した時、彼女は動きを止め、安心するように眠り出す。
「……へぇ。それが秘密か?」
「それは……〈土魔法〉ですか?」
やはり二人も疑問に思うだろう。包んだキメラをゆっくりと脇によせ、簡単には出てこれないように、せめて暗闇の中で眠れと固めながら応答する。
「これは【異能】というものです。俺は【異能】のスキルで死ぬことはありません。有り余るHPを使ってこうやって植物が武器になります。説明が難しいかと隠してました。……レベル1ですが、俺は、戦えます。ハヌルさんを助けて、そしてボスも絶対に捕まえます。」
ようやく俺は決意を口にした。
もともと人攫いが心配だとか、出回る薬物が気になるだとか、興味本位でここに来ていた。
しかし今はもう違う。
ヨンガンさんの事情、DDが産んだ全ての悲劇を目の当たりにして、戦わなければならない理由が生まれた。
『よく言った。我はその道を共に歩み続けるぞ。』
カルナはふふん、と気丈に笑い、頼もしい限りだ。
ヨンガンさんは〈異能〉という存在を知っているのか、おお、とだいぶ驚いたように見えどこか納得していた。
その一方で俺の隠す『秘密』をずっと気になっていたアメリアは、初めて聞く〈異能〉に疑問と多大な興味を示しながらも、「それは今じゃないな」と抑え、俺の言葉に乗っかった。
「アタシはまともな武器もないが……、これを見て何も思わない腐った奴じゃあない。ユウキについてくぜ。」
その返事に、彼女も、俺も笑った。
ローブ越しにちらちらと覗く、不敵な笑みが美しいと思った。
そうして、また一つ三人の絆を深め、他に役立つ資料は眠っていないか、研究室の中を探しはじめたその時だった。
──轟音が響く。
地震の地鳴りか。いや、これはどこかが崩壊する音。瓦礫が落ちる音。
そしてそれは鳴り止まない。
どころか、どんどん、早く、近づいてくる。
聴覚だけが感じる異常ではなかった。
ひどく揺らいで地面を伝う触覚が。
そして最後に、研究室の地面が丸ごと崩れ去る光景を捉える、視覚が。
──床が抜け、俺たちはさらに下の階層へと落ちている。
◇
「ッ!なんだこれは……!アメリア!ヨンガンさん!無事!?」
落下でどのくらい体力が削れたかはわからない。俺ならば死ぬことはないが、他の二人、特にアメリアはどうなのか安否を心配して叫び続けた。
床が崩れて埃が舞い、空からは紙だとか変な道具が降ってくる。ボロボロの空間では視覚も人探しには頼りにならなかったが、案外近くにいたのか五体満足の声が返る。
「あぁ!生きてる!」
「こちらも大丈夫です!」
よかった、そう安堵して深呼吸をしながら、瓦礫をどかした時、降っては来てほしくなかったものが共に降ってきてしまったことに気づく。
隣接されたガラス部屋。
実験のために閉じ込められた被害者たちが、鎖から外されている。
自由となった身。
死んでいたように動かなかった彼ら。
人間が間近にいるから、空気があるから、光が届くからか。
電池が再び入ったかのように、一斉に蠢き出す。
「──ッ!」
最悪の状況。
一体で破格の力を誇るキメラが、八体、同時に無力化しなければならない。
「これは、死ぬ気でいかなければなりませんね。」
流石の【龍人】、ヨンガンもこれには慌てる様子。
同時相手では苦戦してしまうのか。それとも、彼に比べればまだ幼い俺たちを無傷で守るつもりでそう宣言したのか。
どれから行動すべきか、迷っている俺の視界に、突如ウィンドウがポップする。
なんだこの忙しい状況に。睡眠不足か空腹か?それなら後にしてくれよ、と思いながらその内容を一瞥する。
しかし、それはシステム側ではない、一通のメッセージ。それも俺の唯一のフレンドからの。
[トラ:子供たちが危ない!崩壊の原因はオレや!聞こえてたら音の近くまで来て子供を助けてやってくれ!これからゼノンと死ぬまで戦う!任せたで!]
それはトラが蹴りを入れた後に、速攻で打ち込んだ布石。
「……わかったよ。トラさん。」
最優先事項が彼の言葉の中に出てきている。
子供の救出が、DDを完全に作成されるまでがタイムリミット。迷っている時間もキメラに手間取っている時間もない。
俺は引き延ばされた時間の中で、思考し、そして判断する。
「──!ヨンガンさんッ!崩落したその場所に子供が、おそらくハヌルさんがいる!早く、助けに行ってください!ここは俺が絶対になんとかしますから!」
全て彼に守ってもらうなんて思っていない、むしろ俺が彼を守りたい。そして彼は彼の守るべき存在を守って欲しい。
そう願って、トラのメッセージを丸ごとヨンガンに返し、この場所の敵を一手に引き受ける。
やれるか、じゃない。やるしかないから。
「あぁそれなら行ってやれ!アタシらが引きつける!」
事情を一瞬で理解したアメリアも賛同して彼を送り出す側だ。
「…………わかりました。音の方向へ突き進みます。必ず助けますから。……死なないでくださいね。ユウキさん、アメリアさん。」
苦渋の決断か。最後の決め手は真っ直ぐに彼を見つめた俺たちの瞳だった。
なんとかできるはず。
仲間の絆が生まれていたからか、そんな確信がヨンガンにも芽生えている。
背中を向けて全速力で走り出す、その前、彼は俺たちに釘を刺した。
「死なないで」。トラベラーは本当の意味で死ぬことはないと知っているはずだし、俺は異能で死ぬことはないと告げた。
しかし、それでも彼がそう呪ったのは、生を尊ぶヒトであり、正しい方法での世界の平和を望んでおり、年下に慈愛を持つ、父であるからだった。
二人で大きく返事をする。
小さく笑ったようで、確認する暇もないまま、あっという間にヨンガンは走り去っていってしまった。
レベルの低い初級職のトラベラー二人VS異なる種族を掛け合わされたキメラ八体の戦いは、ユウキの号令で火蓋を切った。
◇
「随分ッ!便利なもんだな【異能】ってのは!」
アメリアは現実でも運動が得意なのか、十分なステータスは持ってないにも関わらず、速すぎるわけではないとはいえ、キメラの飛びつき攻撃を軽々と避けて言葉を交わした。
今は戦いの最中だ。
正直、作戦を考える暇もないほど唐突に戦闘が始まり行き当たりばったりで行動を起こしている。
とりあえずアンの【異能】で植物を育て、彼らの動きを止められないかどうかを試す俺の不可思議な現象をもう一度目の当たりにして彼女はそう言ったのだ。
「便利だけど、万能じゃない!アメリア!後ろに!」
呼び声に反応し、彼女は俺の後ろへ全力ダッシュで転がり込む。
それほど知能は感じないキメラたちは、八体まとめて同じ箇所に誘導し、円状に伸ばした植物の罠にハマる。それを縛りあげれば一気に行動不能にできる。
『……文字通り一筋縄ではいかないか。』
数秒、彼らの動きを抑制することはできたが、すぐに抵抗され植物を次々に引きちぎられてしまった。
もちろん行動している俺自身も、そんな簡単に拘束出来るとは微塵も思っていなかった。
それでは、どうしようか。
万策が尽きたとまではいかないが、現実的な解決案を思い浮かばずいる時、カルナの提案よりも早くアメリアは俺の肩をつついた。
「お荷物のアタシじゃないぜ。いったろ?戦闘は好きだって。武器じゃあないが……[道具]は持ってる。」
彼女はそう言って、俺の頭の上から何かを投げ込んだ。
白く丸い……球?
運動会の玉入れの玉のような道具を使い、そして地面に弾むと同時にその効果が現れる。
一帯を大きく包む、白い煙。
紛れもなくその球が生み出している。
煙幕か、と思ったその瞬間に煙は消えて無くなってしまった。
こらはなんのためのものだとアメリアに尋ねようとした時、いわずともすぐに答えはわかった。
ここにきてからずっと感じていた、腐敗臭。
それが消えて、全くの無臭になっている。
「これは魔道具、[瞬間脱臭玉]。冒険者だけでなく主婦にも人気の商品!使い切りにしては高価だけど!」
軽い口調で彼女は宣伝するように解説を続ける。
「あいつらがアタシたちを認識する仕組みはなんだ?視力か?地上のガラス張りの部屋は光を通しているにもかかわらず反応が一切なかったのに?視力が意味なく音で反応している?じゃあなぜ同志討ちしない?」
そこまでヒントを出し、彼女はさらにもう一つの球をキメラたちの奥の奥へ投げ込んだ。
「感覚器官はおそらく匂い。──ほいっ!こちらは[香気誘導球]。ペットの遊び道具として大人気!部屋において香りを楽しむこともできます!お値段脱臭球と同価格!」
二つ目の魔道具の説明をして、その効果が現れると、アメリアの考察が正しいことを示すように、面白いほどキメラは匂いのする方へ純直に従った。
腐った臭いに眼中はなく、良い匂いに進む……通りで迷いなく生きている人間に襲って来れるわけか。
「すごい……。ありがとう、アメリア。」
襲ってくる敵を捩じ伏せる方法ではなく、そもそも敵意をなくさせるという考え方で、安全は確保され、一方的に攻撃できる状態を作り出した。
背後を見せた彼らにゆっくりと植物を絡ませて、種を何十にも重ねる。一つじゃ心許ない強度も、時間をかけて強く結べば無力化できる。
「いいってことよ、役に立てて良かったぜ。──!ユウキ、まだ一体残ってるッ!」
順調で正解に思えた行動だったが、八体のキメラのうち、一体だけは匂いに釣られず、じっと俺たちを見つめ、そして、襲いかかる。
『あれは……ヒアリングバットの耳じゃないか。鼻はない、おそらく聴覚で動いている。混ぜる素の種族によって本能的な能力も異なるのか。』
幸い、一対一ならばおそらく俺の異能で簡単に制圧することができる。
向かってくる彼をどう対処しようか。死なない俺の体で受け止めてそれからゆっくりと捕まえようか。
そう考えて相手の行動を待つ俺だったが、またもアメリアが先に動き出す。
「[即霧加湿器]!そして![瞬間冷却スプレー]!」
彼女は新たな魔道具を二つ取り出し、一つにボタンを押し、そして缶状のもう一つのトリガーを引いて地面に吹きかけた。
スキル名や必殺技のように彼女が言ったのは、おそらくそれらの商品名だろう。
猛進してくるキメラだったが、アメリアの行動で地面に突如形成された氷によって、勢いは殺され、無様に転げ落ちる。
困惑しながらも俺は倒れ伏したそれをすぐに植物で締め上げ、他のキメラと同様に無力化して傍に置いておく。
アメリアがいたからこそ、彼らを暴力で傷つけることなく、この場を切り抜けることができたのだ。
「……ふぅ。とりあえず、なんとかなったね。」
「あぁ。たぶん一発でも喰らってたら死んでたぜ……、スリル満点だ。……ほら、ユウキ。」
ほっと息を吐いて、お互いに称え合いながら、アメリアは手のひらを俺に向け、差し出した。
それは握手ではない、昂った気持ちを共有するための、いわばハイタッチを求めているのだ。
鈍感に応えない俺ではなく、戦闘が無事に終わった喜びを、彼女と勢いよく手を重ね合わせることで音を鳴らして表現する。
「それで、その床を凍らせる魔道具はどんなものなの?」
息を整えたのち、ヨンガンが出て行った道の先を歩き出しながら、俺は彼女が持つ二つの魔道具についての説明を求める。
「よくぞ聞いてくれた。壺っぽいこっちの方は[即霧加湿器]。読んで字の如くボタンを押せば、一瞬で湿度百パーセントに!これを地面に向けて、あたり一面を水滴まみれにする。そしてその後、吹きかけたものの温度を氷点下まで急速に下げる、こっちのカンカン[瞬間冷却スプレー]を地面に向けてトリガーをひけば、スケート選手もびっくりの即席アイスリンクが完成するってわけさ。」
全てがファンタジーだからで片付くのではなく、ちゃんとした物理の原理も働くこの世界の中で、まだ始まって一月も経ってないうちにここまで知的な戦い方を編み出しているのかと、説明を聞きながら単純に彼女に感心する。
「滑るのに慣れてない奴らは転び放題。……ま、これを思いついたのは昨日のことで実行したのは今回が初なんだけどな。」
『ほう、この組み合わせを一からか。なかなかセンスがある。』
魔法か何かで水滴を噴射して、それを凍らせるという戦術は恐らく五百年前の時代でもあったのだろう。
しかし魔道具での再現を自分の力で思いつくことは、カルナからしても興味深いことであるようだった。
「もともとクソ暑いこの砂漠ん中、涼しくありたいと買った冷却スプレーだ。これ結構便利だぜ?噴射口調節すれば、温度も風量も拡散量も変えて軽いエアコンにもなるし、魔力を込めてわざと破裂させれば冷気が充満して部屋が一瞬で冷蔵庫の中みたいにもなる。ほら、余ってるからユウキにも一本やるよ。」
物欲しそうに無意識に見た俺の視線に気付いたのか、彼女は一本のスプレーをアイテムボックスから取り出して手渡した。
瞬間で氷点下まで下げるだけではなく、広範囲の温度を少し下げることもできるのか。
腕の体感温度を下げるブレスレット同様、かなり便利なものだと、無理やり押し付けられたそれをみてそんな感想を抱いた。
善意で貰ったものも断るのはよくない……とは思うが、彼女について一つ気になっていることがある。
「ありがとうアメリア。……ねぇ、どうしてそんなに魔道具を持っているの?これとかって多分結構高いよね?来たばっかりだしレベルだって低いのに……」
その疑問に「あぁそれか」と答えるように、さも当たり前のように彼女は答えた。
「ん。全部ポーカーで手に入れた金。」
「へぇポーカー……、ポーカー!?ギャンブルの結果占えるってそういうこと……。」
走りつつの会話であるが、思わず顔を見てしまうほど驚いてしまった俺にヘラヘラと陽気に笑って彼女はやんわりと否定した。
「ははは、ちがうちがう。勝ち負けにアタシは占いを使ってないさ。実力実力〜!この世界に来てから最初に持ってたお金全部賭けに費やしたら、面白いぐらいにうまいこといっちゃってなぁ。……千倍以上にはなったんじゃないか?」
俺が驚いた場面より、さらに驚く勝負強さをもっていて、より深く彼女がAWを始めてから今までの話を聞きたいと思うようになった。
ちなみに最初に俺が持っていたお金は10000G。レートは現実の円とほぼ同じだとすれば、だいたい一千万円以上を彼女は持っていたこととなる。
そんな大金があれば魔道具を買いたい放題であるし、そこまで勝てばやめ時もなかなかないだろう。
戦闘になかなか赴くことができず、アメリアのレベルが実力よりも低いのも納得がいく。
「……今度、勝つ方法を教えてよ。」
誘うように呟いたのは紛れもなく俺の言葉だった。賭け事にこれといって強い興味はなく、まだしてないが、金策はアンの異能で簡単にできるだろうから困ってはいない。
しかしそれでも彼女に声をかけたのは、今この戦いが無事に終わることを望んでいるからか。はたまた、これが終わってもまた彼女と会ってみたいと思っていたからか。
ずっとフードを被り続けて本当の素顔はわからないままのアメリア、しかし、きっと恐らく、彼女は満面の笑みを浮かべて返事をする。
「あぁ!もちろん、ユウキ。」
そう誓った地下の中。
彼女が持つ他の魔道具の効果や、それを使ってできそうなことを聞きながら、俺たちは歩みを止めず、そしてついに別れ道に辿り着いた。
崩壊した音の方向はどっちからだったか。
地下のさらに地下のそのまた地下。
この場所の構造が本当に意味がわからないほど複雑なことに苛立ちながら、どっちに進むべきかを二人で話し合った。
少し待っても両の奥からはなんの音も聞こえてこない。
トラと仮面の戦闘はそれほど遠いのだろうか。
ヨンガンさんは無事に辿り着けたのだろうか。
結局、俺たちはアメリアの直感に従い、二つに分かれる道を分担して探すことはせず、一本に絞って進むことにする。
この先に、何があろうとも、想いは変わらない。
俺はキメラの姿を思い出す。
日記の内容を思い出す。
反吐が出る思想。その果ての犠牲者たちの姿。
脳から溢れてやまなかった熱い怒りが、6秒も経てば冷たくなっていた。
しかし、それは怒りが安らいだわけではない。
より激しく、強く圧縮された怒りの感情になっただけ。
憎しみも嘆きも全てを詰め込んだ瞳でこの先を見つめ続ける。
──必ず、ボスを止める。
殺すことはできない己の約束を心に誓いながら。
定型分:感想、高評価等励みになるので、お願いします!!!
本当に、お願いします。
毎日、19:00更新。ストック尽きるまで。
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