第23話 飛来する物体
『いた!およそ10メートル先右斜方向……!慎重にいけ!』
目では決して視認できない暗闇の中、コウモリから得られたエコロケーションによって、俺は鬱蒼と生え並ぶ森の中を、目を瞑りながら歩くことができた。
カルナの声が聞こえるのと同時にまた、俺も右斜方向に、木ではない何かに音が反射して、そこに生き物が存在していることをくっきりと示しているのがわかった。
その何かというのは、俺たちが求めている、鳥のようなシルエットではなく……。
「……ホーンラビットだね」
『ええい、仕方ないではないか!?なぜか鳥が全然みつからんのだ!』
なぜかずっとうさぎを追い求めているカルナの声を聞きながらも、確かにそれに賛同する。
虫やうさぎは度々いるのがわかるが、他の生物、特に鳥類がどこにも感知できないのだ。コウモリを求めて浅い洞窟を探してみてもまだ1匹も見つかっていない。
「とりあえず、うさぎも捕まえてみる。──〈成長〉」
実は種を成長させるのにわざわざ声を出す必要はないのだが、スキルを発動する時にイメージしやすいように呼ぶようにしている。
その成果があったかのように、俺の手のひらから急成長した植物は、それほど狂いもなく、数メートル先のうさぎの体を確実に捉えた。
だが、植物がうさぎの体を巻き付いている最中だった。
いとも簡単に抵抗され、振り解かれ、またも森の奥に逃げられてしまう。
「……強度に問題、というかがっちり固定する前に逃げられちゃうね」
『そうだな。逃げられたのは残念だが、良いことを学べたな!当てやすい方法もこれから一緒に考えてみよう』
その言葉はとても前向きなものであり、一度失敗した出来事も次に繋げられるように考えることをやめなかった。
俺一人ではきっとこうもすぐに立ち直ることはできなかっただろう。
カルナのおかげで俺の考えも変わり始めているのを実感して、少し、嬉しい気持ちになる。
……そうか。
今俺はこのゲームを楽しんでいるんだ。
悠那にために訪れた世界、アルスとアンへの贖罪のために行動する目的。
どれも忘れているわけではない、だが、俺はカルナと共に試行錯誤して、夜の森を探検する、この不思議な体験を、『面白い』と、確かにそう感じている。
「でも本当に鳥、見つからないね……。そろそろ海の魔物を探しに行く?」
『プランBだな!あぁ、もう夜になってからしばらく経つ。まさか1匹も見つからないとは思わなかったが……ここらが潮時か』
プランBとカルナが呼んだもの。それは鳥を捕まえて空を飛ぼうとしているものとなんら変わりがないものであり、内容は、魚を捕まえて背中に乗せてもらって大陸を目指そう!というこれまた穴だらけの理論である。
「じゃあ海へ行こうか。そういえば、この子どうしようか。……ごめんね、仲間を探せなくて」
俺は当たり前のように右肩に座るコウモリを見て、撫でながらそう言った。
この子はかなり賢いようで、暗闇で目が見えない俺のために、こまめに〈超音波〉を放ち探索を担ってくれている。
短い旅の間だったが、かなり愛着を感じてしまった。
『……この子、ユウキに着いて行きたそうにしているぞ?ひとまず海まで来てもらったらどうだ?』
俺は一生コウモリを服従者、奴隷として従えるつもりはなく、森を抜けたら解放するつもりだったのだが……、俺の肩を一向に離れる様子がない。
「ふふっ、じゃあもう少しだけ着いてきてもらおうかな」
俺がそういうと、その子はクルルっと嬉しそうに鳴いた。
『ははは!仲間も増えたことだし、次は海へ───』
その瞬間、思わず耳を塞いでしまうほどの大音量が、鼓膜を揺らした。
たちくらむほどの音圧。
爆発音?いや、何か、大きなものが崩れ落ちたような音。
俺は海へ向かう足を180度転換させた。
なぜならその音の発生源を〈反響聴〉がはっきりと捉えたから。
そして、その音によって、森に住む全生物の位置が確認できたから。
「なんだッ、これは……!」
『……っ、おいユウキ!上の音を聞け!何かがいるぞ!』
〈反響聴〉で捉える視覚。今まで感じなかった方向からその存在を示しているのが、カルナのおかげで分かった。
何かが上空にいた。
そう、その生物は、飛行していたのだ。
「いたんだ鳥が、この島にも……!……まって様子が、おかしい」
目で見えないため何が起こっているかいまいち把握できない。しかし、その飛行する生物は、まるで何かから逃げるように全速力で天まで登っているようだった。
飛び方もおぼつかない、生きるためだけに動いているような、そんな焦燥感。
そして、その飛行は、突然に止まる。
生物が堕ちてくる。
地上から放たれる何かによって。
「死ん、だ?いったい何が、」
困惑する俺を正気に戻したのは、脳内に響く声だった。
『……ふふふ、はっはっは!面白くなってきたなユウキ!これはこれ以上ないチャンスかもしれないぞ!今すぐその音の発生源にいくのだ!』
心配性で臆病者な俺を明るく笑い飛ばすカルナ。
そうさ、戸惑っている場合じゃない。
これは冒険だ。危険な道に、求めるものがある。
「あぁ!さぁ走るよ!聞こえた方角は山の麓からだ!」
山。この島には中心に大きな山がある。その周りには森が広がり、外側には平原、そして海沿いには人間の住んでいた街という分布になっている。
街から遠ざかるがそれでも気にしない。俺はその中心に向かって必死に走り始めた。
ちょ、短すぎるので追加であげます。




