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Another World 〜【勇者】が愛した仮想世界〜  作者: 明日乃灯
第一章 【勇者】の残光

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第18話 解放

 「……これで、いいんだよね。おやすみ。アルス」


 大きな洞窟の一部であるこの町の外れの端、墓場に来ていた。

 アルスが語った、救世主を願い待ち続ける人が眠るこの墓で俺は、彼がつけていた右眼の傷跡を隠す黒い眼帯を、その土の下に埋めた。


 彼の体は、俺が持っていくにはあまりにも大きすぎるもので、抱えて山を降りて、埋めることは叶わず悔しかった。

 だからせめてもの弔いとして、俺は託されたその誇りと願いを守り抜くことを誓い、彼が身につけていた眼帯だけを埋めることにしたのだ。


 「……ごめん。…………助けたかった。」


 顔を上げ、腰を上げ、広がる膨大な数の墓を見て俺は無意識にそう呟いていた。


 簡素な作りの墓だ。折れてしまいそうな木材のものだってあるし、生命を吸い取るかのように植物のつたに無秩序に巻き付かれているものだってあった。

 

 それでもそこは、名前が刻まれる誰かの墓であったし、奴隷として生きながらもいつかの希望を持ち続けていた誰かのベッドでもあった。


 どうか、安らかに。


 俺は、アルスと、心臓に宿るアンと、そしてこの街に住んでいた全ての獣人に、目を瞑ってそう祈った。


 町は燃え尽きて、死体で埋め尽くされた凄惨な状況だ。

 けれど、この墓場は立地のおかげか戦いのダメージを負っているようにはみえず、まるで彼らの願いによってこの場所が守られているようにみえたんだ。


 深く息を吸った。


 大きな、墓を作ろう。

 アルスだけでなく、この町自体の大きな墓を。


 そう考えたあと、俺はアルスの眼帯を埋めた土の横に、小さな植物が宿っているのを見つけた。


 「……ふふ、新しい、生命だ」


 誰もいないのに俺はそう呟いていた。

 誰かの命が尽きて、それを糧にして新しい命が生まれる。時に非情だけれど、美しいその過程が、俺に次の行動を導かせた。


 その新芽に、触れる。



 「……っ!」



 俺の手と共にその植物が光る。


 その輝きとともに、新芽は双葉となり、根を広げ、茎を伸ばし、そしてさらに成長し続ける。

 自分の背丈を超えるほどに、大きく太くなり続けていても、その植物、いや、一つの木は成長を止めることはない。


 日の光がない洞窟の中。

 それでも大きく強く在ろうとするそれは、まさにファンタジーとも言えるほど、不思議で、圧巻で、そして美しいものだった。


 天井にまで届くほど大きくなると、横に枝を伸ばし、白色の花を咲かす。

 まるでそれは、あの山の上でアルスと共に見たような、アンの心臓から発せられた光と同じようで幻想的に街全体を輝かせていた。


 その急成長を引き起こしたのは、自分を蘇生できる不思議な俺の能力ではないということが、なぜか直感的に理解できた。

 それでも俺が触ることで、何かが起きて、この植物はここまで成長したのだ。


 「───あぁ、本当に、綺麗だね、アン」


 答えはすでに分かっていた。

 白狐の心臓は恵みを与える。

 これはきっと、俺の心臓と一つになった、アンの力なのだ。

 眠らせてやりたいという俺のわがままにアンも答えてくれたのか、その大木はこの街全体を包み込んでから成長を止めた。

 

 「もう少しだけ、ここで。」


 墓地は少し盛り上がった丘の上にある。だからこの場所から広く大きな街を見渡らせる。

 見える景色はゴミの山と積み重なる死体。

 だけどその木が生み出した光の葉はそれら全てを浄化しているようで、不思議な魅力を持っている。


 そして、俺は木の根本、アルスの墓の横で座ってその光景をずっと眺めていた。


 『………ケ。封…ヲ解…。ト…ベラー…我ヲ……セ』


 不意に、頭の中で謎の声が響く。

 小さな音でかつノイズがかかっているかのようであり、詳しく聞き取れなかったことから、最初は空耳かと、ただの幻聴だとそう思っていた。


 『トラベラーよ。我の封印を解け』


 それは聞き間違えなどではなかった。

 立ち上がって後ろをすぐに振り返る。


 そこには誰もいなかった。


 「誰、?」

 声に出しては見たもののもちろん俺にその返事は返ってこない。しかし、頭の中には何かノイズのようなものがずっと響いていて、あの声が幻聴ではないことを証明している。


 一通りぐるっと見渡して誰も見つからないことを確認してから、俺は思考を整理する。


 封印を、解け……?

 一体何を言っているんだ。この声はなんだ。この墓の亡霊か。封印ってなんだ。解くためにどこに向かえばいいんだ。


 そこまで考えたところで、俺はあるひとつの場所を思い出す。


 「……っ、『封印の間』……!」


 アンに案内された、あの場所。

 そう、トラベラーについて書かれた石碑の奥には大きな黒い岩があった。

 なぜ封印の間という名前か、アンはわかっていない様子だったが、あの岩は明らかに異質で、本当にその名の通り何かを封印していても別におかしくはない。

 

 頭の中にもう一度、封印を解け、という男とも女ともとれないノイズがかった声が響く。

 

 封印、か。

 これは何かの罠ではないか、なぜ俺にそれが聞こえてくるのか、いろいろと思うことはあった。


 だが俺がその行動をすることで、なにか、ほんのわずかな一部でも、この島の謎と、ユナに託された世界の終焉についての秘密につながるものが見つかるかもしれない。

 それに俺が望む世界は、誰にも、神にも縛られることのない自由な世界だ。

 それが本当に邪悪なものだったとしても、自由を望む俺が縛られているものを見捨てることなんて、信念に矛盾している。


 そんな本心の言い訳と共に、少しの好奇心を携えて、俺は封印の間へと歩き出した。


   ◇


 『手に触れて、念じろ。お前ならできる』


 一度見たあの大きな黒い岩の前に、薄暗い光と不気味な音が響く小さな穴を抜けて、ようやく辿り着くことができた。

 その近くに刻まれる石碑と、アンと誓ったあの時の記憶を重ね合わせて物思いに耽っていると、やはりまたどこからかその声がした。


 「……君は、誰なんだい?」


 それは決まった言葉だけを喋るわけではなく、ここまでの道中その声はたびたび俺に話しかけてきて、別の道を行こうとすれば『違う!そっちではない!』と嘆願するように叫んできたこともあった。

 それが少し面白くて、封印されている割に、かなり外の様子を見ることができているのでは?、と思うところもあり、俺の中の警戒心は薄れていたのだが、その声があまりにも人間味あるものだと言うことに気づくと、ますますその正体はなんなのだ、という疑問が強くなる。


 『……封印を解いたら教えてやろう。我の全てをな』


 まあそうだろうな、という返事に納得しつつ、俺の身長の二倍ぐらいの大きさの狭い洞窟の空間で、天井スレスレまで埋め尽くす漆黒の岩を見上げる。


 一体何が解放されるのか。

 まあもう迷いはしないさ。

 厄災だったらそれまでだ。


 深呼吸をした後、俺は選択を決めた。

 伸ばしたその手が、岩に触れる。


 「自由になれ。」


 ビカッと、俺の手が、木を成長させた時のように、洞窟全体を照らすようにまばゆく光る。

 不思議とその光は目に痛いものではなく、その逆の安らぎを与えてくれるかのものであり、光が収まり始めてその岩をもう一度見ると、薄く、一枚ずつ、全体を覆う殻が剥がれはじめていた。

 

 それはまるで孵化する卵のようで、何がそこから生まれるか全く想像つかない。


 岩の破片は散って儚く地面に落ちていき、そして、ようやくその全貌が明らかになる。


 封印。

 岩の中に隠されていたのは、その大きさのわりにあわない、小さなもので。

 神話に出てくるような、目を疑うほど美しく、そして奇妙な、


 ───黒い髪の女の子だった。


 「……ふふふ、はははっ、はーはっはっ!我、復活!500年ぶりの外だ!手足があるって素晴らしい!……コホンッ!さぁ礼を言おうトラベラー!助けてくれてありがとう!」


 それは、なんというか、10歳程度の少女の姿そのものと違和感なく一致する、非常にハイテンションな喋りから始まり、封印されるものと言えば禍々しい怪物や筋骨隆々な男性をイメージしていた俺からすれば呆気に取られるものであった。


 彼女の話を困惑と共に聞きながらいろんな情報を整理している。


 やはり何かが封印されていたのは本当だった。

 しかし、この子は、どうみても少女であるし、とても彼女が言う500年以上ものの間を生きていたようには思えない。

 けれど彼女のこの喜びようからみれば、解放されることというのは非常に望んでいたもののようであり、俺はひとまず自分の行ったことが良いことだったのだと、そうまとめる。


 が、しかし、そこまで考えたところで、彼女が、今一糸纏わぬ姿であることと、その事件性について気付く。


 「ど、どういたしまして。君は……っと……………ごめん、……俺の服を貸します。」


 もちろんそれをはっきりとは見ていないし、まるで授業で見た彫刻のようだ、と素直な感想を抱いたが、男子高校生特有の気恥ずかしさもあるし、なにより俺の倫理的に直視はダメだ。

 初期装備の自分の衣服を脱いで彼女に押し付ける。


 「ん?……あぁそういうことか。そう恥ずかしがるな人間。我は別に見られても構わん。……だがそうだな。人間界のモラルというやつで昔怒られたな。その衣服は自分が着たままでいいぞ。我は魔力で作り出せる。」

 

 すると彼女は「ほっ」という掛け声と共に、自らの体を白く光る紐状のもので纏い、そしてそれをさらに整ったものとして形成し、色をつけ、一瞬の間に服を作った。


 それはまさに貴族が着るような黒い豪奢なドレス。

 スカートをふわっとたなびかせるようにターンをする、息を呑むほどの優雅な立ち振る舞い。

 俺はその凄技に感心と安心をし、一度脱いだ自分の服を着直しながら、魔力とはそんなことも可能なのかと、その概念についてますます興味が高まっていく。


 「それに我は人からモノを奪うことなどせんよ。まして、この世界にやってきたばっかのかわいい子羊からとは、心あるものとしての風上にもおけんからな。」


 自ら生み出したドレスの出来栄えに満足するように、微笑みながら彼女は言った。


 「別に奪われるだなんて。ただ貸すべきだと思ったか……ら……、」


 俺は彼女の発言に大きな謎があることにつっかかってしまった。


 「『世界にやってきたばっか』って、もしかして、俺のことがわかるんですか?君は一体……」


 ここまで呼んだ『封印を解け』という声もそうだ。トラベラー、と俺を呼ぶことも。

 まるで彼女は俺の行動や正体を全て知っているように。


 「あぁわかるとも。自由にどこでもとはいけないが、外に干渉できないことを条件に、この島の中ならばその様子を見たりすることはできる。……そう、我は全部見ていた。お前の覚悟も、失ったものも、手に入れたものもな。」


 見ていた。ということは、もちろん彼女はこの島の地下で起きた悲劇の、経緯も結末も、全て知っている。

 俺はたくさんのものを失ったのは確かだ。大切なものはぜんぶ手のひらからこぼれ落ちた。だが、彼女の言う手に入れたものとは、一体。


 「封印を解放したこともだが、我は、もう一つここに縛られた獣人を助けようとしたことも感謝している。あの者たちとは直接の関係はないが……、人間によって虐げられているのをみて何もできないのは辛かった。これほど、憎しみを連ねたのは久しぶりだった。……だが、お前があいつらに立ち向かったのを見た時は胸が震えたぞ!面白い人間を見つけた、とな!」


 はっはっはと小さな体で豪快に笑いながら、俺の背中を強めに叩いて彼女は言った。

 俺は誇らしくなることをしたわけでもないため、どんな顔をしていいか困惑しながらただその言葉と衝撃を受け止めていた。


 「おっと、あなたは一体、とか言ったな。答えてやろう。」


 ひとしきり彼女が笑った後、俺の正面に立ち向き直して、いま一番気になる彼女の存在について説明しようとしていた。

 彼女の佇まいはまさに少女と形容できるあどけないものだったが、その奥には、なにか、全貌が掴めないような、無意識な畏怖を感じさせる禍々しいオーラのようなものが立ち込めている……ような気がした。


 「我は【魔王】カルナ!真の名をアグラ=カルナ=シラヌイという!うーん五百年ぶりの自己紹介だな!実に気持ちがいい!よろしく頼む!」


 その元気溌剌な自己紹介は、俺を再び困惑の渦に叩き落とすようなそんな言葉だった。

 今、聞き間違えがなければ、魔王という単語が聞こえたような気がした。

 果たしてそれは真実か、いや頼む本当にただの聞き間違えてあってくれ。


 「【魔王】といっても、一度死んだからもう元【魔王】か!はっはっは!」


 本当だった。

 その言葉が虚偽でないことは、この稀有で異常な事態からなんとなくわかる。


 それになにやら仰々しい名前……、シラヌイ、不知火、こんな偶然もあるものなのか、我が家の苗字とも同じなことにもまたすこし困惑を深める要素だ。


 「ほれ。次はお前の番だ」


 後手に回った自己紹介ということに、つい先日のアンとアルスの初顔合わせの出来事が脳裏に浮かぶ。

 相手が魔王であるとしてももちろん自己紹介は返すのが礼儀だ。

 差し出された右の手を握り返して、言った。


 「ユウキです。真の名前……かどうかはわからないけど、不知火悠生が本名で、俺もシラヌイって名前にあります。……えっと、よろしくお願いします、アグラ=カルナ=シラヌイ……さん?」

 

 記憶力はそれなりにいいと自負しているはずだが、もしその長い名前を間違えていたらどうしようと怯えながらそうやって挨拶の締めを括った。


 「あぁよろしくなユウキ!それにしてもシラヌイとは……、シラヌイ……ユウキ……、やけにしっくりくる名前のような……。まあいいか!あとユウキ!我のことはカルナと呼べ!そして畏まった言葉遣いをやめろ!我が真名は大変威厳ある名前で気に入っているが長いしなんか親しみにくいだろう!距離を感じる!」


 そう異次元のテンションを維持したまま彼女はまるで自分と友達のように話せと言わんばかりの要求をする。

 はたして、かつて、ファンタジーの世界にこんなにもフレンドリーな魔王がいただろうか。

 小さな、幼い体に悠那とアンの面影を重ね、彼女がそういうのならと、楽な喋り方に変える。


 「……わかった。よろしくね、カルナ」


 まだ状況こそ飲み込めてないが、確かに距離が縮まったような気がして、すこし嬉しかった。


 「あぁよろしく!適応力が高い……ふふふ、やはり見込んだ通りの人間だなユウキは!……と、挨拶は済んだことだし、さっそく、我のこと。我がユウキに封印を解かせた理由と、その果ての目的を説明せねばな!」


 カルナのこと。なぜここに封印されていたのか、それがいま一番ほしい情報だ。


 「我は、簡単に言えば、同意の上でこの島の地下に我自身を封印させたのだ。五百年もの間をな。我の尽きた力の回復と、いずれ来る『救世主』を待つために」


 そうきたか、とそれは予想外の展開だった。

 封印という言葉から自然と誰かに敗北して閉じ込められることを想像していたが、自分自身で力のために封印。興味深い内容。……それに、救世主、か。

 もしかして、と俺は横に彫られた、アンが読んだあの石碑をちらりと見る。


 「ずっと、運命に選ばれた、強い願いを持つ一人の『救世主』を探していた。そして、ようやく、本物の『救世主』を見つけた。」


 彼女は言葉を一つ、溜める。


 「──それはお前だ。ユウキ。」


 告げられた言葉に心臓がどくんと跳ねる。


 「地面に倒れ、あの子を失いそうになった時、ユウキは何を思った?何を望んだ?……きっと強く何かを願ったのだろうな。そこでユウキは確かに目覚めたはずだ」


 あの時俺は何を願ったって、何に目覚めたって、心当たりが一つあった。


 「世界の理をも変えられる【異能】がな」


 【異能】。それは、それを持つ俺自身でさえも把握しきれていない、AWというゲームのシステム。

 俺は『自身が望む限り何度でも生き返る』という、不思議な現象を体験した。

 

 それはきっとこのゲームを遊ぶものなら、誰もが手に入れるものであろうと思っていた。


 しかし、もう一度この世界にダイブするまでの間、ネットで調べた情報に、【異能】の文字は一言も載っていなかったのだ。


 謎が多い、【異能】。

 俺のそれは【不倶退転】という名を持っていた。


 「我はその【異能】の誕生を五百年と待っていた。それが突然目の前に現れたのだ。今しかないと、ユウキを呼び寄せて封印を解かせた。本来外界との接触は何もできないはずだがな、ユウキとあの子の魂が育てた大樹の影響か、なぜか声が届いたのだ。」


 大樹が育ったのが原因ならば、あのタイミングで声が聞こえ始めたことに納得がいく。


 「そうして今に至るのだが…….、これから話すのは、封印をユウキに解かせた目的。……図々しいとはわかっている。だが、この目的には、ユウキの助けが必要だ。」


 言いにくそうに、さっきまでの迫力が嘘のように真剣な表情で彼女は俺の右手を両の手でぎゅっと握り、下から上目遣いで見つめる。

 そのいじらしい身振りが、やはり、どことなく悠那と似たようなものを感じてしまう。


 「我にできることならなんでもしよう。これは、我が願う一生涯、最初で最後の望み。それにはどうしてもその【異能】が必要なんだ!……だから、お願いだ。……我と共に歩んでくれないか。」


 会って間もないのに彼女らしくないと感じるほどに塩らしい、まさに外見相応の内面で縋るようにそう懇願する姿が、俺の心を強く締め付ける。

 相手が魔王だからだとか、途方もない願いがふっかけられそうだとか、そもそも【異能】もなにもわからないだとか、そんな考えが後から浮かんだ。

 しかし、些細なことなんてどうでもいい。


 返事はこの世界に来た時から決まっている。

 

 「いいよ。こんな俺でも力になれるなら、本望だよ。……でもそれはどんなお願いなの?カルナ」


 もしかしたらかなり時間がかかるものかもしれない。少し、悠那の願いを叶えるのが遅くなるかもしれない。

 けど、悠那なら困っている人を見過ごせるわけがないよな。

 そうこの目の前の少女と悠那を重ね合わせて俺は思う。


 「ほ、本当か!?……あ、あぁそういえば内容をまだ言ってなかったな。すまない、それを話してから、改めて返事を聞くことにしよう。」


 嬉しそうな顔をして喜んだ後、気が早すぎたのを自覚し、反省してか、コホンと咳払いをしてその内容をカルナは言った。


 「我の願いは、世界の終焉を止めること。」

 

 彼女の話に、思わず息を呑む。

 『終焉を止める。』

 その願いを、俺は、聞いたことがある。


 記憶を遡る。いや、遡るまでもない、俺の頭にその願いは深く刻まれているから。

 

 ──『世界が壊れて、記憶がなくなる』。

 それはあのビデオの中で、彼女が言っていたことだ。

 やはり、それはカルナの願いと全くの無関係ではないように思えて。


 「そして、それを止めることのできる唯一の人物を復活させること。


 人の、復活?

 一体誰を。そんな人が、いるというのか。

 世界をも救える、存在が。

 ……いや、ひとり知っている。

 もしかしたら、それは、彼女のことで。


 「我が親友であり、世界を変えられる【異能】を持つ者。その者は───」


 顔を上げる。俺の瞳とカルナの瞳が互いに交差する。

 カルナと彼女の姿が、完全に、一致する。






 「───500年前の【勇者】、シラヌイユナ。」



メインヒロインです。少なくとも私の中では彼女が一番メインヒロインです。

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