3話 目覚め
「どこだここ……? たしか──」
アッシュが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋の中だった。彼は気を失う前の出来事を思い出そうと、ベッドを降りて腕を組みながら部屋の中をぐるぐると歩き回る。
「そうか……ルナってやつの魔法でぶっ飛ばされたんだっけ。てことは、ここはあの屋敷のどこかか?」
そんな彼の部屋の戸を、誰かが叩いた。
「失礼するよ。やぁ、目は覚めたみたいだね」
「えっと……」
「初めまして、僕はリンダ。このパーティーで、回復担当をしている者だよ。君、名前は?」
「俺はアッシュ。お前が治してくれたのか……。ありがとうな」
「いえいえ。それより、お前じゃなくて、リンダって呼んでね? 僕も君のことをアッシュって呼ぶからさ」
「わかったよ、リンダ」
「うんうん。よろしくね、アッシュ。──なに? そんなにジロジロ見られるとちょっと困っちゃうな」
アッシュはリンダを凝視していた。
短髪銀髪。細身で、身長は百六十程度。街の憲兵団が来ている様な、黒い装束に身を包む彼。
いや、彼なのか? という疑問がアッシュの中に生まれているのだ。
声は中性的で、聞きようによっては男にも女ともとれる。同じく顔立ちも中性的で、端的に言えば美形という一言に尽きる。
「嫌な気にさせたらごめんな……男? 女? どっちなのか聞いてもいいか?」
「ふふーん。 ナ、イ、ショ」
「……。」
口元に人差し指を当てて、可愛娘ぶる様は女に見えるが、アッシュは生まれてこの方、一人称が僕の女の子に出会ったことがなかった。
「……なるほど、コレがいわゆる男の娘ってやつか……」
アッシュはそこで考えることをやめた。
「──そういえば、リシェリと……あと、俺をぶっ飛ばしてくれた魔法少女はどこだ?」
「? ああ、ルナのことかな。二人とも今の時間は食堂にいると思うよ。他のメンバーもね。うちでは、皆んなで食卓を囲むんだ」
そういうリンダの顔には影がかかっているように、アッシュには見えた。
「そうか。なぁ、リンダもこのパーティーのメンバーってことはさ……やっぱり、不死身なのか?」
「そうだよ? もちろん、他のメンバー全員がそれぞれ異なる条件下で不死身だよ」
「そう……なのか……」
「なに? もしかして、アッシュって不死身じゃない感じ?」
「死んだことないんだよな、俺」
「なるほど……。ねえ、アッシュ。僕たちが、自分が不死身だって、どうやって気付いたと思う?」
「そりゃあ、死んだ経験があるんだろ?」
「そうだね。もちろん死んだ経験はあるよ。でも、じゃあどういう条件下でなら、不死身だって気付いたかはわかるかな?」
「……いや。わからんな」
リンダは椅子に腰掛け、足を組んで話し始めた。
「試したんだよ、色々とね。そうやって、自分がどんな時に死なないのか、あるいはどんな時に死ぬのか」
「試すって言ったって……。どうやるんだよ」
リンダは、「ふふっ。それは、僕の口からじゃなく、カインから聞くといいよ」と言い、アッシュの手を引いて部屋を出る。
「ちょっと!? どこ行く気だよ」
「決まってるでしょ、みんなの所にだよ? 言ったでしょ。うちでは皆んなでご飯を食べるの」




