表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第4話

予定より少し早く、列車は中央駅――すなわち、チェリー家の領地へと到着した。


ここまで来るのも、なかなか疲れたわ。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫よ」


「おっと、平気かい?」


「まだ大丈夫です」


「このあと、少しだけ列車で移動してから本邸に向かうよ。我慢してくれ」


「はい」


私たちは駅のホームで列車を待ち、それほど待たずに次の列車が到着した。


そして、本家の屋敷へ向かうために乗り換えた。


その屋敷は、他国の王城に匹敵するほどの大きさだった。


敷地内には小規模な駅が設けられていて、わざわざ馬車での移動をしなくても済むようになっている。


列車が屋敷内の駅に着くと、そこから馬車で本邸まで移動した。所要時間は約5分。


「ゆっくり休んでおいで」


「はい」


私は自室へ向かった。後ろには荷物を抱えたエメリーがついてくる。


部屋に入ると、豪華なベッドが目に入った。


疲れた……

私はそのまま、ふかふかのベッドに身体を投げ出した。


本来なら、こんなに疲れるはずじゃないのに。

でもこの病気のせいで、昔より疲れやすくなっている。


しかも昨晩は列車のトラブルで乗り換えもあったしね。



コンコンッ


「母さんよ」


荷物を整理していたエメリーがドアを開けに行く。


「ジェン、具合はどう?」


母は美しいブロンドの髪と丸い眼鏡が印象的な人だ。


その顔には、どこか焦りがにじんでいた。


「お父様に聞きましたか?」


「ええ、聞いたわ」


母は少し悲しげな顔で、私のベッドの横に腰掛けた。


「私は、そんな簡単に死んだりしないわ」


「生き延びてみせる」


「ジェニファーは本当に優秀な子。

成績も良くて、王立学院を飛び級で卒業して……」


「だって、早く外の世界に出てみたかったんだもん」


母は優しく私の頭を撫でてくれた。


「今日はお父様、いくつかの王国へ出向かないといけないの」


「戦争の件ですよね?」


「ええ」


「戦争、早く終わるといいな……」



「ロバート、戦争を宣言した王国に関する資料をすべて用意してくれ」


「かしこまりました」


執事が部屋を出て行った。


現状、宣戦布告した側はかなりの策略家のようだ。

戦争を宣言しておきながら、敵が誰かを明言していない。


じゃあ、誰と戦うつもりなの?

また北方諸国と……?


私は新聞を手に取り、戦争に関する記事を読み直した。


――グランド王国は、一体何を考えているの?


まさか……


「こちらが関連するすべての資料です。情報部からのものも含まれています」


「……で、諜報部は?」


「こちらです」


1枚の紙が手渡された。


光の加減で、文字が見えにくい……

紙を手に取ると――


「これは……!」


「すぐにアレスクラザス行きの列車を用意しろ!」


「かしこまりました、旦那様!」



昼食の時間。私は食堂で食事を取っていた。


父はテーブルの上座に、母はその左隣に、

私は父の右隣に座っている。


「どこの王国へ向かうつもりなんですか?」


「まずはアレスクラザスだ。その後は様子を見て決める」


「アレスクラザスの王は、どう反応すると思う?」


「例によって中立を保つだろう」


「でも……」


「でも、何?」


私はそう問いかけた。


「もし父の予想が正しければ――

アレスクラザスは今回の戦争で中立ではいられないはずだ」


「じゃあ、今回の戦争って……これまでで一番大きなものになる可能性があるってことですか?」


「その通りだ。さすが俺の娘、鋭いな」


「今回は、アレスクラザスが我々の側に立つことになるだろう」


「我々の側って……?」


「……父の予想が当たっていれば、の話だ」


「そろそろ時間だな」


昼食を終えると、父は出発の準備に向かった。



屋敷の正門前――


「行ってくるよ。夜には戻れると思う」


そう言い残し、父は馬車に乗って屋敷の駅へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ