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平和主義の秘密

 戦争にはいろいろな欠点があるが、兵器の持つ力や輪郭、エンジンの駆動音を美に還元することができてしまうのもその一つだろう。夜が明け、曙光が空に切り込むと同時にピンを抜いた手榴弾を真上に放り投げ、宙で爆発させたことのあるものならば、誰でも知っていることだ。手榴弾など飢えを癒す観点から言えば、塩抜きしていない干し鱈以下なのだが、そのすべすべした表面や爆発音は人の心を打つのに十分な資質を持っていた。戦争に美が潜んでいることは平和主義者たちは絶対に認めたがらなかったが、そもそも彼らが平和主義を唱えることができるのは、別の誰かが暴力を行使し、戦争が広がるのを防止しているからなのだ。その根本を理解しないがために、平和主義者たちには自分たちが美と善を占有しているという幻のみしか与えられないのだ。兵士たちは風の青さを知っているし、空の高さ、影の深さ、自分の持つ銃の薬室に弾が込められたときの音が約束する加護、敵の銃の薬室に弾が込められたときの音のもたらす絶望を知っていた。

 クラウディオはカリブ海のダツ、あるいは透き通ったベネチアングラスのようにほっそりしていた。まだ未熟な子どもなのだ。それでも人生に必要以上のものを要求しなければ、味わう絶望が最小限で済むことを知っていた。彼の財産は彼の体を首から腿までがんじがらめにしているタクティカル・ハーネスに入るものだけに過ぎない。三日に一度、木になるフルーツを食べれば平気だったし、大人たちのネックである酒と煙草もまったく必要としなかった。眠ろうと思ったら、高い木の枝まで登って枝が分かれるところに体を落ち着けて眠った。うっかり寝返りを打つと、落っこちて首の骨を折るかもしれなかったが、クラウディオはこれまで一度も落ちたことはなかった。

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