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日常へ戻っていく
クラウディオが意識を取り戻したとき、イヴは目をつむり、クラウディオの額に手を置いて、鼻歌を歌っていた。それは子守歌のように安らかで、冬の暖炉で燃える甘い香りを放つ薪のように温かかった。イヴはマスクをつけていなかった。
「何ていう名前なんだ?」
イヴがまぶたを開けた。「わからない」少しためらってから付け加えた。「夢のなかで教えてもらったから」
「きみの名前がききたかったんだ」
「イヴ」少女はこたえた。「あなたは?」
「クラウディオ」
「そう」
イヴは立ち上がると、マスクをつけた。
「動ける?」
「ああ」クラウディオは上半身を起こした。「助けてくれてありがとう」
「借りを返しただけよ」