#97 魔王戦、開幕
「魔王ぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺の眼前で、血を吐いて膝から崩れ落ちたクロエ。
その背後に、三頭六腕の忌々しい巨躯――魔王が立っていた。
姿を目視した途端、俺は突進していた。
「「「ハハ、やっぱりお前かよ。せっかく殺さないでおいてやったのに、よくやるねぇ」」」
魔王は下卑た笑いを浮かべながら、あろうことか苦しみ血を吐くクロエの頭を――踏みつけた。
沸騰するような怒りで、こめかみが脈打つ。
「足をどけろォォ!」
「「「おーおー、どうした怒り狂って? よっぽどお気に入りの女だったのか? ロリコン野郎だねぇ」」」
「黙れっ! クロエをよくもぉぉ!!」
忌々しく不愉快な声を撒き散らすヤツの顔面へ、俺は握りしめた拳を放つ。
だが、魔王は身じろぎ一つすることなく、六腕を駆使して防御する。
「「「肉弾戦かよ? 腕の本数見りゃ勝てないってわかんないかねぇ?」」」
「ハァ!!」
「「「あぁ?」」」
のたまう魔王を無視し、そのどてっ腹を狙い『スクープエクストラクション』を放つ。
内臓こぼれちまえ!!
「「「へー、必死こいて魔法を磨いたみてぇじゃん? でもねぇ、俺には効かねぇんだわ。こちとら魔の王、魔王様だぜ?」」」
魔力操作か何かの障壁か、俺のスクープエクストラクションは無効化される。
が、間髪入れずに俺は『ジャンプ』を使用する。
ついさっき天井高く放ったケルベロスウェポンと紅呉魔流の元へ行き、二刀を刹那で握り込み、連続ジャンプ。
「うらぁぁッ!!」
「「「おぉっ?」」」
魔王に最接近し、二刀の剣を振り込む。
「「「こんな攻撃じゃ……あ、?」」」
余裕ある態度を見せた魔王だが、一瞬でその顔から笑みが消える。
俺の攻撃により、腕が飛んだのだ。
瞬時の判断で、俺は微呉魔流を手放し、宙に遊ばせる。
その代わり、ケルベロスウェポンを両手持ちする。
そして。
「どけェェェェ!!」
「「「ごはッ!?」」」
バッドをフルスイングする要領で、ヤツの腹へとケルベロスウェポンを横薙ぎに振り抜いた。
魔王は血を吐きながら吹き飛んだ。
かなり遠いホールの壁に、めり込むように叩きつけられる。
……ち。
上と下で身体を両断してやるつもりだったのだが、寸前で防御したようだ。
「クロエ、大丈夫か!?」
「……だ、大丈夫……犬の姿に戻れば、多少は、回復、するから…………」
言うと、クロエは目を閉じた。すぐにその身体が光に包まれ、光源が大きくなっていく。
光が晴れた途端、クロエは人型から犬型へと変身していた。
「どうだ、大丈夫か?」
「クゥーン……」
弱々しい鳴き声を漏らしているクロエの身体を、俺はよく検分する。
腹の辺りからまだドクドクと血が流れ出ている。
身体が大きくなった分、人型であるときに比べれば傷は小さくなったのかもしれないが、予断を許さない状況なのは変わらない。
「クロエ、応急処置をしておくから、無理せず横になってるんだ」
「グルル……」
「大丈夫、魔王は俺が倒す。大丈夫だから」
腰の革袋から薬草などを取り出し、クロエの傷の処置をする。
危険な状況を脱するには回復魔法や専門医の手当てが必要だが、今はこうするしかない。
「「「……むかつきやがるなぁ、クソザコの分際でよぉ」」」
「……もう少し寝てろよ、ボケナス野郎」
聞こえてきた不快な声に、思わず汚い言葉で返す。
クロエを治療するためにも、ヤツを瞬殺して早くリバースに帰らねば。
……やってやる。
今の俺なら、やれるはずだ。
さっきの応酬で、俺の攻撃が十分に通用することはわかった。
必ず、勝つ。
「レオン、これ!」
「ありがとう、ルルリラ。キミはクロエを見ててくれ」
と、そこでルルリラが紅呉魔流を拾い上げ、届けてくれた。
俺はそれを受取り、クロエを看てくれるよう頼む。
そして、二人を背にするようにして身構える。
「「「……おい、なんだぁルルリラよぉ? そいつに味方してんじゃねぇよ。お前はもうこっち側だろうが」」」
「どっち側とかない。ウチはもう、レオンたちと生きていくって、生まれ変わるって決めた」
「ルルリラ、よく言った」
再びルルリラを誑かそうとする魔王だが、彼女はその言葉を跳ねのける。
「「「……ハハ、はいはい。わかったわかった。はぁーあ、これだから人間っつーのは…………」」」
魔王は頭のてっぺんをボリボリと乱暴に掻きむしると、甲高い声で笑い出した。
そして。
――禍々しいほどの魔力を、放出した。
「「「全員まとめて捻り潰してやるよ。……虫ケラみてェになァァ!!」」」
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