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#93 関門突破

「クロエッ!!」


 俺は叫び、クロエの反応を見る。

 だが、クロエはこちらに顔を向けることはなく、牙をむき出すようにして唸っているだけだった。


 おそらく、洗脳が成功してしまっている。


「く……!」


 ヌエバミの洗脳魔法『ソウル・スレイヴ』は、成功したかどうかが外見だけでは判断できない厄介なものだ。

『LOQ』のゲーム画面ではステータス異常として表示されるものだったが、今はこうして反応から判断するしか方法がない。


 ソウル・スレイヴによる洗脳状態は、術者であるヌエバミを倒せば解ける。

 こうなれば、ヤツを瞬殺する他ない。


 俺は再びヤツに刃を向ける。


「ヒヒ、させんよ」

「ッ!?」

「ガルゥゥ!!」


 が、こちらの思惑を読んでいたヌエバミが、クロエを壁として立ちはだからせた。

 狂暴で鋭い眼光を向け、その巨体で持って威圧感を放ってくる。


 俺は身を捻り、振りかぶったケルベロスウェポンを途中で引っ込める。

 クロエに攻撃を当てるわけにはいかない。


「ガルゥ!!」

「くっ!?」


 が、そんな隙をヌエバミが見逃すはずもなく、クロエが噛みつき攻撃を放ってくる。俺は咄嗟にウェポンを手放し、両手でクロエの上下の顎を抑えて防御した。


「……ごめんな、クロエ。俺が油断してたばっかりに」

「ガルゥ、ガウッ!」


 謝罪の言葉が、思わず漏れる。

 ヌエバミの洗脳魔法は精神力のステータスによって完全にガードすることが可能だ。俺のステータス値ならば恐れるに足りずと、高をくくってしまっていた。


 ……それもこれも、一人で戦うつもりでいた俺が招いた事態だ。


「今、助けてやるからな……!」

「ガウ、ガルゥゥ!?」


 俺は態勢を変え、瞬時にクロエの身体の下に潜り込む。そして、筋力ステータスに物を言わせてその巨体を宙に持ち上げる。

 こうすればクロエの動きを制限しつつ、致命的な攻撃を喰らわないようにできる。


 少々荒っぽくなるが、許してくれよ、クロエ!


「ヒヒ、今じゃアウロラ! 魔法を叩き込めっ!!」


 が、両手が塞がる上、ヌエバミたちから見れば標的が一ヵ所に集まっているのだ。

 さぞ隙だらけなことだろう。


 魔法の詠唱を開始したアウロラが、こちらを滅さんと巨大な魔力を練り上げていく。


「くらえぇ! ヴォルケーノ・インフェルノ!!」


 アウロラが渾身の力で魔法を放つ。

 ヴォルケーノ・インフェルノは最強クラスの火属性攻撃魔法で、その名の通り地獄の炎が、火山口のように足下から噴き出すというもの。


 かすりでもすれば、痛みすら感じる間もなく人間の肉体は溶け滅びるだろう。

 が――俺はこれを狙っていた。


「『ルームーブ』!!」

「ぎゃあああああああああああ!!」

「なっ、ヌエバミッ!?」


 俺とクロエを燃やし尽くさんと足下から噴き出した炎柱を、空間魔法によって()()()()()()()と転移させる。


 足下から出現した業火によって、ヌエバミは物言わぬ消し炭となった。


 ヌエバミには実は『被洗脳者が取った行動を回避できない』という弱点があった。

 ゲームではヌエバミの洗脳は『混乱状態』のような扱いになるのだが、そのせいで被洗脳者が敵味方を問わず巻き込む全体魔法などをぶっ放した際、回避することができず巻き込まれて無様にやられたりすることがあったのだ。


 そのシーンを実況者が配信し、切り抜きとなってプチバズりしていたっけ。


「こんのぉ……クソドモガァァァァ!!」


 自らを利用されたことに腹を立てたアウロラが、美しい相貌を怒りに歪め、身体を赤く染めていく。バーサーカーモードである。


 ヌエバミによる洗脳にも怒りを抱いたらしく、一気に勝負を決めるつもりだ。

 ……望むところだ。


「レ、レオン! は、離して!」

「っ!? ご、ごめん!」


 と、頭上から美少女クロエの声がしたので、慌てて降ろす。子供を『たかいたか~い』するみたいになってた。

 無事、洗脳も解けたようだ。


「ごめんレオン……ボク、敵に操られてたみたいだ」

「いいんだ、あれは俺の落ち度だ。それより、今は目の前の敵に集中しよう!」

「うん!」

「クソガ、クソガァァ!! ヤケシネェェェェ!!」


 再び、ヴォルケーノ・インフェルノを使おうとするアウロラ。

 ヤツはバーサーカーモードにより、魔法の威力の増大と効果範囲の拡大の補正を受ける。


 だが――もう遅い。


「アウロラ、終わりだ」

「……ハァ?」


 すでに鯉口を切っていた紅呉魔流を、俺は一閃する。


 ――居合い斬り。

 ギンリュウから授けられた神速の剣が、最後の四天王の身体を一刀両断する。


「ガ……ハ…………っ!」


 倒れ伏したアウロラが、黒い粒子となって中空に消えた。


 魔族四天王、撃滅。


「行くぞ、クロエ。本番はここからだ」

「うん!」


 俺たちは勝利の余韻に浸ることもなく、魔王城へ向かって走り出した。



:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【魔剣王】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました


貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

読者の皆様の応援が書く力になっています!

更新がんばります!

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