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#91 会敵

 夜が明けきらない暗い海上を、レゾリューション号は進んでいた。

 海上を吹く冷たい風が、身体を震わせる。


 それでも俺は、ぐんぐんと船を加速させていく。


「そろそろ魔領域だぞ、クロエ!」

「うん!」


 船尾の方で船を操舵しつつ、甲板で索敵を担当してくれていたクロエに向けて大声を張り上げる。

 掛け声を受け、クロエは美少女形態から、巨大な犬神形態へと変身していく。

 魔族に与える威圧感はハンパじゃないだろう。


「本当、頼りになる相棒だ」


 言いつつ、俺は体内の魔力を微調整する。

 船は各部に仕込んだ『魔繊維』のおかげで、自分の手足のように動いてくれている。

 航行はほぼ魔力での操作となっているため操舵技術もへったくれもないが、どうせ魔領域とリバースの一往復でしか使用しないのだ。


 多少の無理と無茶は承知の上で、全速力で突っ込んでいくぞ。


「止まらずに行こう。船から飛び出したりしないようにな?」

「ガウッ!!」

「おーけー」


 力強く頷いたクロエに親指を立て、俺も臨戦態勢を整える。


「見えてきたぞ!」

「ガル!」


 スキルのおかげで、夜目が利く。

 ずっと静かだった地平線に、隆起した大陸の山々が見えてきた。

 同じように見えているであろうクロエも、俺に言われるまでもなく警戒心を高めている様子だ。


 あれが、魔領域。

 そして魔王城のある大陸『ジ・ザーストリア』である。


 俺はあらかじめ頭に叩き込んでおいた、リバースから魔王城への最短ルートを思い出す。

 目印となる山から少し南に沿岸を行き、大陸中央へ続く河川へ入り込めば、魔王城へと登っていくことができるはずだ。


「……来たな」


 全速力で沿岸部を航行していると、視界の先で何かが蠢いたような気がした。

 ここはすでに魔族のテリトリーだ。


 いつ何時、どこから魔族が襲い掛かってくるかわからない。


 が、だからこそ。

 全速力を維持したまま、突っ切る。


「ブシャアアアア!!」「グオオオオオ!!」「ビギャアアアア!!」

「っ!?」


 夜目の視界に映ったのは、巨大な水棲魔物たちだった。

 キラーベルーガ、デーモンシャーク、エンシャントフィッシュだった。


 いくらラストダンジョン前の魔物と言えど、今の俺とクロエの敵じゃない!


「ガルルルル!!」

「ブシャア!?」「グゴオオオオ!?」「ビギギギャアア?!」


 唸り声を上げたクロエが先んじて、その大きな顎で魔族共を蹴散らした。

 そして。


「うおらあぁぁ!」

「「「グギャアアアア!?」」」


 俺はトドメとして『移瞬斬』を三連発し、魔物三体を一刀両断する。

 戦闘と同時進行で、引き続き魔繊維へも魔力を送り込み続けている。


「おし、次!」

「ガウ!!」


 雑魚に用はない。サクサク行くぞ。


 魔力を充填した魔繊維の帆が、風を受けてさらに張り詰める。

 どんどん、レゾリューション号は加速していく。


 スピードは決して落とさない。


「魔王城まで一気に攻めるぞ!」


 目指すは本丸、魔王城。

 夜明け前、魔領域の海を、俺たちは駆け抜けた。


◇◇◇


「どけどけどけぇぇ!!」


 俺たちは魔領域の魔物を蹴散らしながら、魔王城へと続く河川を進んでいる。

 魔王のヤツもこちらの動きに対し、ある程度の備えはしていたのか、途中には魔族が乗った船も幾つか見受けられた。


 が、俺たちにとっては物の数ではない。

 そんじょそこいらの魔族が、今の俺とクロエを止められるものか。


 この川の上流に関所のようなものがあり、そこから徒歩での移動となったはずだが……お、見えてきた。


「クロエ、関所だぞ! あそこで船から降りよう」

「ガウ!」


 辺りはすでに明るくなりはじめており、朝もやの中に禍々しい城がそびえ立っているのが見えた。

 もう少しで、魔王城だ。


 と、その時。

 空からいきなり“なにか”が降ってきた。


「ッ!? 飛べ、クロエ!!」

「ガウッ!!」


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオ


 大地を揺るがす衝撃と共に、関所が木っ端みじんに吹き飛ぶ。

 俺とクロエは間一髪で跳び退る。


「オイオイオイ、久々に腕が鳴るって感じかよ」


 周囲を覆う砂塵の中から現れたのは、筋骨隆々という言葉では足りないような偉丈夫。


  ヤツは魔族四天王――ダンティス・バフォメットだ。


「ここはシナリオ通りか……」


 眼前に現れたダンティスのスペックを思い出しながら、俺は戦闘開始へ向けて魔力を練りはじめる。

 ヤツはいわゆる脳筋キャラで、力こそパワーって感じの敵キャラ。


 今の俺のステータスであれば、おそらく楽勝なはずだが――ん?


「ダンティス、いつも言ってるけど、その登場の仕方なんとかならないかしら? 服が汚れて鬱陶しくて仕方ないのよ」

「オイオイオイ、そんなこと言うなよアウロラ」

「……っ!」


 態勢を立て直したダンティスの後方から、もう一人の四天王――アウロラ・アドラメレクが現れる。

 豊満が過ぎる美ボディをこれでもかと主張する、魔法攻撃を得意とする魔族。


 四天王を二人同時相手か……大丈夫、クロエもいるしどうってことはない。


「ヒヒヒ、お二人とも敵に集中しなさい。いくら我々にとって家畜以下の人間とは言え、油断は禁物ですよ」

「……なっ!?」


 が、もう一体の登場によって俺の余裕は崩れ去る。

 最後に現れたのは――四天王の一人、ヌエバミ・デミウルゴスだ。


 お、おいおい。四天王は『LOQ』本編では、一体ずつ順番に戦うはずじゃなかったか!?

 同時に戦うとなると、さすがにちょっとヤバいかも?


 ……だが、ここまで来たらもう後には引けない。


「クロエ、短期決戦だ。力押しする!」

「ガウ!」


 俺は剣を握り込み、全速力で突っ込んだ。



:【体力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が大幅に上昇しました

:【船乗り】の職業素養を獲得しました

:【魔剣王】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました


貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

読者の皆様の応援が書く力になっています!

更新がんばります!

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