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#88 完成、レゾリューション号

 船造りがスタートして、三日ほどが経過した。

 船は今、城塞近くの砂浜に急ごしらえした、木造倉庫の中にある。職人さんが言うには、水に浮かべるのは完成してからになるそうだ。


 元々、魔族の連中が乗ってきた小型の帆船をベースにするため、各パーツの補強などで基礎の作業はすぐに済んだとのこと。


 さすが職人さん、仕事が早い。


 船の全長は五メートルほどで、特徴としては、船体の中央に大きな三角形の帆がある。これも職人さんに教えてもらったのだが『フェルッカ』と呼ばれるているそうだ。単独で扱うことも可能な、小型帆船だそう。


 一人で扱える船、というのは俺がお願いした条件だった。


 魔族どもが乗ってきた船には大小様々あり、巨大なガレオン船の残骸もあったので、それを使えば立派なものも作れるとのことだったが、そちらはユースティナに任せることにした。交易用の商船にでもすることだろう。


 俺としては、まずなによりも少数精鋭、取り回しがしやすく、単独での航行が可能であることが第一条件だった。


「ここから先はレオンの方が忙しいぜ」

「望むところです!」


 船大工のリーダー、アルステロさんが声をかけてくれる。いかにも職人然としたツナギを着て頭にバンダナを巻いた、無骨で男らしい容貌の偉丈夫である。


 さて、いよいよ本格的な作業が俺にも回ってきたみたいだな。


「まずは目印のある箇所に、例の魔道具とやらを打っていってくれ」

「了解です」


 指示をもらい、俺はすぐに魔力を練りはじめる。

 例の魔道具というのは、城塞に打ち込んだのと同じ釘型の魔道具だ。


 これを何本か、船体に打ち込むのだ。


 城塞と同じく、船体にも『ディモン・リジェクト』をかければ、もしかしたらめちゃくちゃ強いのでは?と思い、事前にアイデアをアルステロさん達にお話しておいたのだった。


 イメージとしては、ガンガン魔領域の海を突き進みながら、魔族が接近してきたらゴリゴリとヤツらにダメージを与えていく戦闘船、みたいな? 魔族を吹き飛ばしながら進む船、めっちゃ強そうじゃない?


 近づけば近づくほど近づけない、魔族からしたら最悪の船になれたらいい。


 魔法を込めた釘を、船体に数ヵ所ある目印に丁寧に打ち付けていった。


「おーし、次は帆を張るぞ。これにも、なんか魔法をかけるんだっけ?」

「そうです!」


 倉庫にあらかじめ準備されていた帆に、俺は魔力を流し込んでいく。

 帆には、アリアナが魔法研究の過程で発明した『魔繊維ませんい』を編み込んである。


 魔繊維は簡単に言えば、魔力の通り道となる性質がある繊維だ。


 魔法は使用者が体内で練り上げた魔力を使い、術者自身の身体を経由して意図したところから放出させ、それが魔法として発現し、超常現象を発生させる(これ全部アリアナの受け売り)。


 遠距離に使える魔法は、本来ならば高度な魔力操作が必要らしいのだが、俺は理論ではあまりわからないが、使えば使うほど慣れて上手くなっていく感じがあるのは理解できる。


 で、だ。

 魔繊維を使うことで、遠距離の難しい魔力操作なしで、意図した場所へと魔力を送り込み、魔法を使えるというわけなのだ。


「上の方、気を付けろよー!」

「はい!」


 俺はマストの上に昇り、魔力を送り込んだ帆を、風魔法で引っ張る。弱い風を受けて、帆が三角形に大きく張った。

 この船は風の力を利用して進む帆船ではあるが、魔繊維を編み込むことで、魔法でも操縦できるのだ。


 さらに、この魔繊維を船体各所に仕込んでおけば、四方八方へ大砲のように魔法をぶっ放すことが可能、というわけ。


 俺のこの船の定位置となるであろう、操舵位置から各所へ向けて、手作業で魔繊維を張り巡らせていく。魔繊維は細く切れやすいため、ロープなどで補強しながら設置していく。


「ふぅ」


 魔繊維を張り巡らせる作業を終え、一息つく。

 手作業で集中力も使ったが、天へ向かって立派に立つマストを見上げると、かなりの満足感があった。


「よし、これで一通り作業は終わったな。そんじゃ、あとは後日に船体を海上に運んで――」

「あ、それはもう任せてください」


 今日の作業をまとめようとしていたアルステロさんを制止し、俺は再び魔力を練っていく。

 今度は少し、大きい魔力だ。


「むんっ」


 一息、力む。

 完成したばかりの船体を、俺は『ルームーブ』で海へ移動させた。


 さばんっ!と背後の方で水が弾けるような音がした。


「おわー、やっぱすげーな。あんたの魔法」

「恐縮です」


 アルステロさんをはじめとした職人の皆さんが、驚愕したように目を見開いて拍手を送ってくれた。

 ちょっとだけ、鼻高々な気持ちになる。


「で、船の名前は決めたのかい?」

「はい。『レゾリューション号』です」

「へぇ、いい名前じゃねーか!」


 アルステロさんは褒めてくれたが、これはLOQ内で使用されていた船の名前をそのまま付けただけだ。


 ま、なんにせよ。

 海に浮かんだレゾリューション号は、大きさ以上に威風堂々としていて、頼りになる威容だった。


「移動手段は整ったな。次は装備とスキルの精査といくか」


 一仕事終えた充足感を抱きつつ、俺は次にやるべきことを頭に思い浮かべた。

 


:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

└魔力のステータスが最大値に達しました

:【筋力】が大幅に上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【魔剣王】の職業熟練度が上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

└【魔法狩猟師】の職業レベルが『エキスパート』に達しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました

└【ジャンパー】の職業レベルが『エキスパート』に達しました


貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

読者の皆様の応援が書く力になっています!

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