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#47 魔族、発生

 シュプレナード南西の丘に、俺たちは移動石で一気に飛んだ。

 ここ最近は魔法の上達にかまけていたため、魔族探知の方が疎かになってしまっていた。

 まさか、シュプレナード領内での発生を見逃してしまっていたとは……不覚っ。


 しかも、南西の丘には、ルルリラが育った孤児院がある。

 一秒でも早く魔族を討たねばならなかった。


「レオン、あそこっ! ウチ先行くっ!」

「おう!」


 いつもなら転移酔いでグダグダになるルルリラが、一目散に駆け出す。

 俺とアリアナ、シェリは追従する。


 少し走ると、すぐに小高い丘が見えてくる。


「ぐあ!」

「ひ、ひとまず距離を取れ!」

「しかし、それでは魔法でやられてしまいますッ!!」


 丘ではすでに戦闘が開始され、血生臭い戦場の様相を呈していた。

 この地域の守備隊なのか、シュプレナードの鎧を着こんだ兵士たち数十名が叫び、剣や槍を振り回している。足元には、事切れた兵士の姿もある。


 彼らの武器が向く先。


 ――血の塊のように赤黒い角を生やした魔族がいた。

 ()()


 リーダーはすでにやられてしまったのか、騎士団の隊列がかなり乱れている。距離を取るのか接敵するのかの意思疎通が上手くいっておらず、間延びしたところに突っ込まれ、阿鼻叫喚となっていた。


「ルルリラ、あれ見ろ!」

「っ!」


 視線を外すと、孤児院の辺りから煙が立ち上っていた。

 まさか、すでに魔族の魔の手が……?


「みんな……!」

「行ってください、ルルリラさん!」「油断だけはするなよ、ルルリラ!」


 俺たちが言うとルルリラは、風のように駆け出し、孤児院へと向かって行った。

 頼む、皆無事でいてくれ!


「…………」


 俺は再び魔族二体へ向き直る。


 その二体は生まれたて(発生したて)とは思えないほど、筋骨隆々とした肉体を誇り、まるで双子かのように連携攻撃を繰り出しては、シュプレナードの兵たちを蹂躙していた。


「俺は突っ込む。アリアナとシェリは負傷者の治療と兵たちの退避をサポートしてくれ!」

「はい!」「わかったわ!」


 ケルベロスウェポンを構え、俺は一気に『ジャンプ』で距離を詰めた。

 目の前に魔族の鬼のような顔面を捉える。


「終わりだ」

「ッ!?」


 剣を横薙ぎに、一閃。

 赤い角が特徴の頭が、宙を飛んだ。


「次!」

「ギ、ギザマァァ!!」


 もう一方の魔族が、首が飛ばされた相棒を認識し逆上する。

 どうやら、この二体にはすでに支配者と被支配者の関係性が出来上がっていたらしい。


 が、お構いなしに俺は剣を振るう。


「ガァ!?」


 二体目の魔族は俺の初撃を腕で受けた。が、そのまま胸の辺りから両断できると確信する。各個、一撃。

 ケルベロスウェポンの柄から、確かな手応えが伝わってくる。


「ギザァマァァ!!」

「っ!? 耐えるか!」


 が、仕留めたつもりだったのだが、その身を分断する寸でのところで刃が止まった。

 なぜだ、確かに一刀両断した感覚があったのに。


 ウェポンを一閃してすぐ後、ヤツの周囲で魔力が煌めいたような気がしたが、なにかの防御魔法か回復魔法の類を使用したのかもしれない。


 やはり魔族、侮れん。


「オマエェ、コロスッ!」


 大きな筋肉をたたえた腕で、自らの身体に刺さったケルベロスウェポンをわし掴み、そのまま俺ごと投げつけようとしてくる。


 が、目には目を、歯には歯を。

 そして、筋力には筋力で対抗だ。


「投げられてたまるか」

「グ、ググゥ……!」


 牙を剥き出して力む魔族だが、俺は微動だにしない。よし、ヤツらの筋力に対抗できている。

 というか、まだ全然余裕がある。


 目の前の魔族は発生したばかりなので強力な上級魔族とは比べられないが、ある程度ならば対抗できると思ってよさそうだ。


「終わりだ」

「ッ!!」


 俺は握った柄に力を込める。

 今度こそ終わらせる――と思ったのだが。


「「「なんだお前ら、負けてんのかよ?」」」


 やけに軽薄な声が聞こえた瞬間。


 ()()()

 全身が泡立つ感覚があった。


 これは……魔力だ。

 恐ろしいほど密度の高い、圧迫感すらある魔力。


 その圧力で押し潰されてしまいそうだ。


「「「使えねぇのな。もう死ねよ」」」

「ッ?!」


 身体にケルベロスウェポンが食い込んではいたが、まだ息のあった眼前の魔族。

 が。


 ぱん、と吹き飛んだ。


 接近していた俺は、返り血でまみれる。


「いやああああああっ!」「……ッ!」


 血を浴びた俺の姿を見たからか、はたまた俺の視界に入ったおぞましい“それ”を目視したからなのか。


 アリアナの悲鳴と、シェリが息をのむ声が聞こえた。


 顔が三つ、腕が六つ。

 見上げるような巨大な体躯。


 そして――天を衝く赤き大角。


 禍々しき、魔族の姿。


「「「俺が魔王様だ。頭が高ぇよ、オメェら」」」



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【魔族殺し】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました


貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

読者の皆様の応援が書く力になっています!

更新がんばります!

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