表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/105

#30 業火ヘルファイア

「クロエ! とにかく走れ!!」

「ガルゥ!!」

「お、おいどうしたんだよ!?」


 ヘルファイアの事前動作を察知した俺は、クロエに向けて叫んだ。

 状況を飲み込めないヴァンの声が、背中から届く。


「すまん、今説明してる余裕はない! 逃げなきゃ死ぬ!!」

「マ、マジかよ!?」


 ヘルファイアを見たこともないヴァンには、俺の焦りがあまり伝わっていないらしかった。だが、そんなことはお構いなしに、俺はとにかくクロエを急かした。


 ヘルファイアをくらうわけにはいかない。

 間違いなく死ぬ。


 エンシャントドラゴンの放つ鬼畜攻撃ヘルファイアは、その名の通り辺り一帯を消し炭にする凶悪な攻撃だ。


 端的に表現するなら、大災害級の火炎放射みたいなもの。


 ヤツの狙いが俺たちに向いている今なら、地上に被害が出ることはない。

 ただし、空中という遮蔽物のない場所で、その広い攻撃範囲から逃げ切れるかわからない。


 逃げ切れなければ、終わりだ。


「……っ!」


 駆けだしたクロエの背で、俺は冷静にドラゴンとの距離を目算する。

 ……まずい、この距離じゃどんなに飛ばしても、攻撃範囲外には脱出できん!


「……だったら!」


 俺はそこで考えを転換する。

 遠く離れて回避できないなら――ゼロ距離まで近づくしかない。


「クロエ、反転だ! エンシャントドラゴンの口元に向かって走れ!」

「ガルッ!!」


 指示に合わせて、クロエが迅速に身体の向きを変える。


「お、おい! それじゃ危ないんじゃないのか!?」

「いいんだ! ここからじゃ攻撃範囲外には逃げ切れない! だったら逆に、ヤツに近づいて火炎の死角を突く!」

「わ、わかった!」


 俺はクロエにぐっとつかまり、態勢を低くした。状況に翻弄されているヴァンが、同じように俺の背にしがみついた。

 おや……ヴァン、確かに女の子だ!(こんなときに雑念が!)


 とにもかくにも、今はクロエの瞬発力が頼りだ!


「頼むぞ、クロエ!」

「ガウン!」

「よーし、いけ!」


 風のように、空中を翔るクロエ。速度に比例して風圧がびゅんびゅんと高まるが、歯を食いしばって耐える。


「ギグルルゥゥゥゥ……」


 エンシャントドラゴンが、広げていた翼を一瞬たたんだ。そして顎をさらに引き、射殺すような眼でこちらへ睨みを利かせてきた。その凶悪な面構えからは、こちらへのヘイトがありありと感じられた。


 くそ、パワーチャージが完了したか!?


「ガウッ!?」

「クロエ!?」


 と、そのタイミングでクロエの身体が、不自然にぐっと沈み込む。

 こんなときに、エアリフトの効果が切れた?!


 最悪のタイミング――背筋が、凍り付く。


「我が身に宿る精霊よ、その御身を司る風を巻き起こし、翼となりて我を羽ばたかせよ――『エアリフト』!」

「ヴァン!」


 が、ヴァンが素早く魔法を詠唱してくれる。


「あきらめるには早いだろ!」

「ああ、そうだな!」

「ガウッ!!」


 再びクロエに浮遊感が戻り、速度も元に戻る。

 眼前に迫るエンシャントドラゴンの巨大な顔から、焼け付くような温度が放たれている。


 ヘルファイアが、来る。


「ギギャアアアアアアアアアアアアア!!」

「「間に合えぇぇぇぇ!」」

「ガウルルゥ!!」


 咆哮するエンシャントドラゴンの、洞穴のように巨大な口の奥。

 燃え滾る業火が渦巻き、放たれようとしたその瞬間。


 クロエが滑り込むように、ドラゴンの頭の横を突っ切った。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォ!!


「かわせた!」

「やったな!」

「ガルルゥ!」


 なんとか、ヘルファイアをかわせた。

 俺たち三人は、全員で小さくガッツポーズする。


 が、それも束の間。 


「あ、熱いっ!」


 エンシャントドラゴンの口から吐き出された炎熱が、空中の温度を一気に引き上げている。

 青い空は姿を消し、灼熱地獄と見紛うような真っ赤な炎が辺り一面を包む。


「クロエ! 常にヤツの後頭部へ回り込むように移動を続けてくれ!」

「ガルッ!!」


 ヘルファイアをかわされたと気付いたドラゴンは、俺たちを狙って口をこちらへ向けて動かした。だが、小回りではこちらに分がある。

 この零距離で死角に移動し続ければ、火炎を吐き出している間は攻撃し放題だ!


「反撃のチャンスだ!」


 俺は汗を拭って、叫んだ。



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【運】が上昇しました

:【魔族殺し】の職業熟練度が上昇しました

:【猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【一般パッシブスキル『死角強襲』】を獲得しました

:【一般パッシブスキル『死地脱出』】を獲得しました

貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

読者の皆様の応援が書く力になっています!

更新がんばります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ