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#25 スキルの精査

 リバース村の人々とキャビアを楽しんだ翌日。

 心配した二日酔いもなく、俺は朝の散歩を終えたその足で、すぐにシュプレナードへと向かった。


 ふと、スキルの精査をするべきだと感じたためだ。


 今現在の俺のメイン職業は魔族との戦闘に特化した『魔族殺し』だが、確かパッシブスキルで魔族を引き付けてしまうものがあったはず。

 当然、そんなスキルを常時発動させ続けていては危険極まりないので、スキルメモから消去しようと思ったのが発端だった。


『LOQ』におけるスキルは、スキルメモを編集することで使用・未使用の切り替えができる。スキルはメモから消したとしても忘れ去るわけではなく、また編集し記載すれば使用可能になる。


 覚えられるスキル数に制限はないのだが、スキルメモに記載できるスキル数はパッシブとアクション合わせて、80が上限だった。

 なので、その80という上限の中でどんなスキルを組み合わせるのかで、例えば同じ職業だとしても、まったく違う特徴を持ったキャラクターになっていく、という仕組みだった。


 スキルメモの編集自体は自分で持っているのでいつでもできるのだが、自分が今どんなスキルを所持しているのかは一度ギルドに来なければ効果などの自覚ができないため、こうして朝早くやってきたのだった。


 ちなみに辞めた職業のスキルでもメモに記載することで使用可能になるため、頻繁に転職して多種多様なスキルを覚えて強くなる、という楽しみ方もできた。


 この場合だと職業熟練度が上がらないため、複数の職業をマスターすることで転職可能になる最強の職業『究極職』に辿り着くのは遅くなるが、その代わりにスキルが充実してメモの編集が楽しくなる。


 プレイヤーによってはスキルメモの編集が楽しすぎて、半日編集していたというのも聞いたことがある。うん、気持ちわかるな。


「次の方どうぞー」

「はーい」


 そうこうしているうちに、名前が呼ばれた。

 ギルドの受付嬢に会釈して、用件を伝える。


「スキルの確認ですね。ではこちらに手をかざしてください」

「はい」


 言われた通り、カウンターに設えられた水晶玉に手をかざす。

 職業素養を確認する際にも使ったものだ。


「こちらが、レオン・アダムスさんの所持スキルになります。ご確認ください」

「ありがとうございます」


 俺は渡された羊皮紙を確認する。


「どれどれ……」


 お、すでに二十個以上のスキルを覚えているし、有用なもの、かなり強力なものも多い。うん、キャラ育成としてはかなり順調だな。


 そんなことを考えつつ、視線を走らせていくと。

 問題のスキルを見つけた。


:【魔族殺しのパッシブスキル『魔族誘致』】…魔族を惹きつけやすい


「これだこれ」


 魔族殺しが覚える『魔族誘致』は、本来であればゲーム後半、経験値稼ぎで使用するスキルだ。

 ただ、このスキルのせいで人間の大陸にまで魔族をガンガン呼び寄せてしまってはどんな被害が出るかわからない。一刻も早く無効にしなければ。


 俺はメモから魔族誘致のみを消し、それ以外のスキルをすべて記載してもらった。


「ありがとうございました」


 対応してくれた受付嬢に挨拶し、俺はギルドを後にした。


「さて、と。次は……」


 魔族の侵攻に備えて、今やっておくべきことは、山ほどある。

 すでにシュプレナード王にもお願いし、城塞の建設計画を早めてもらう予定だ。これが完成すれば、大陸から攻めてくる魔族にはひとまず対抗できるはず。


 次に警戒すべきは、人間の領土に生まれる魔族への対応。

 これは俺自身が抑止力となり、移動石を使って全国をパトロールしていく以外に現時点では方法はない。

 これに伴って、定期的に魔領域で魔族を狩り、魔族殺しの職業熟練度をとにかく上げまくる。


 そうすることでスキルも強力になり、どこにいても魔族の誕生を察知することができるようになる。


「だがまだまだ、そこまでになるには時間がかかるな」


 先程ギルドで確認したおかげで、スキルはかなり充実してきていた。

 しかし、まだまだ魔族殺しの熟練度は低い。もっともっと経験値を積み上げてステータスアップしなければ、安心・安全の異世界ライフは実現できない。


「……こうなったら、今まで考えていたことを、実行に移すか」


 俺は一度大きく深呼吸してから、人気のない路地裏へと歩を進めた。

 歩きながら、懐から移動石を取り出す。


「主人公に、会いに行ってみよう」


 勇者証明をもらってから、ずっと考えていたこと。

 それは――LOQの主人公、ヴァン・オルフェンに会ってみるということだった。


 本筋の運命シナリオで言うなら、ヴァンが旅立つのは夏の盛りだったはず。まだ季節は、初夏を迎えたばかり。


 このタイミングで、俺ことレオンがヴァンと出会ったら、いったい運命シナリオはどんな風に動くのか。まったく予想がつかなかった。


 けれど。


「……ちょっと見るだけなら、大丈夫だよな」


 人間の好奇心に、勝るものはないのだった。


 ただこのときの俺は、この行動がとんでもない事態を招くとは、露ほどにも思っていなかったのだった。



:【体力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【一般パッシブスキル『積極行動』】を獲得しました


貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

続きが気になる、おもしろかった場合など、ぜひブックマークや★★★★★をいただけると作者、大変よろこびます!


読者の皆様の応援が書く力になっています!

更新がんばります!

よろしくお願いします!!

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