＃24 趣味回：食事編 キラーベルーガの卵（キャビア）
「みんなのところにいったかな？」
「「「はーい」」」
リバース村の食堂にて。
アリアナ、ルルリラ、シェリ、そして常駐作業員の皆さんが並んだ長テーブルの上座、誕生日席と言える位置で立ち上がって、全員の顔をゆっくりと見回した。
みんな一日の作業を終えて、それぞれの充実感が表情に出ている。
「えー、今はちょっと大変な時期ですが、魔族の対策は俺がしっかりやっていきますので、村の皆さんはそれぞれ自分の作業に集中してくれればと思います。で、今回は棚ぼたではあるのですが、こうしてここに――」
「レオン！ 話長いってば！ はやく食わせろー！！」
「ごめんごめん」
せっかく全員が集まったので、なんかいいこと言わなきゃみたいに思ってしゃべっていたら、ルルリラがスプーンを掲げて主張してきた。
確かに、仕事を終えたタイミングなうえ、こんなに気を引く食材を前にして、なに話したって内容が入っていくわけないよな。
「それじゃ皆さん、いただきましょう。せーのっ」
「「「いただきまーす」」」
全員で手を合わせ、食事をはじめる。
今、俺の目の前にあるのはかの有名高級食材――キャビアである。
このキャビアは、数日前に獲ったキラーベルーガの卵を塩漬けにしたものだ。
これはアリアナに教えてもらったことだが、どうやら世に言うキャビアというのは、チョウザメの卵のことを指すらしい。アリアナ、本当に博識。
俺はキャビアなんて、前世でも食べたこともなかった。しがない平社員の分際では、食べてみようという思考にすらならなかった。それがまさか、こんな形で食すことができるとは。
キラキラと光る黒いつぶつぶたちを、スプーンですくう。
潰してしまわないよう、ゆっくりふんわり口に含む。
舌の上で、味わいながら転がす。
うん、うん…………。
「ほぉー」
思わず、声が漏れる。
口の中でプチプチと弾けさせると、潮の香りがワッと広がる感じだ。
味で言うなら、肉料理などのようにガツンと濃い味ではないので、すぐに『最高！』となるような劇的な一品ではない。
が、なんと言えばいいのか、絶妙な塩気が後を引く。
「そしてここに……」
口の中に海の塩気が残っている間に、シュプレナードで買ってきた安価なシャンパンを、くいっと流し込む。
「はぁ」
またも思わず、声が漏れる。
キャビアの塩味とシャンパンの軽やかな泡と風味が混ざり合い、口の中に華やかで明るい甘みが広がる。そして、喉元を通り過ぎていくと、鼻に抜けるようなすっきりとした香りで余韻として残る。
くぅぅ、たまらない。
これが巷で聞くマリアージュってやつか……！
すごいな、本当に口の中がゼロになる感じだ。
「もう一回……」
スプーンでもう一度すくって、今度はチーズの上に乗せて口に運ぶ。
「うーん……！」
チーズの独特の香りと塩気が、これまた独特なキャビアの食感と塩気と混ざり合い、口の中にいい意味での“乾き”を引き起こす。
そこにすかさず、黄金色のシャンパンを流し込んだ。
あぁ、また幸福な余韻だけを残して、すんなりと喉を通り過ぎていった。
んー、たまらない。
マリアージュの効果ですぐに口腔内がスッキリとした状態に戻るため、すぐに次の一口を欲してしまう。
本当に、後を引く味わいなのだ。
「んー、上品な味！」
「おいひぃ」
「これ、すっごく絶妙な塩気加減よね！」
アリアナ、ルルリラ、シェリの魅力ある笑顔が咲く。
キャビアには、笑みを引き出す魔力があった。
「はぁ、良い夜だなぁ」
じんわりと、全身に酔いと幸福が行き渡っていく。
色々と大変なことはあるけど、今だけはリフレッシュに集中しよう。
そうして。
またも俺はその晩、飲みすぎてしまった。
頼む、二日酔いだけは、勘弁してくれ……！
願いながら自室のベッドで目を閉じ、深い眠りへと堕ちていった。
：【体力】が上昇しました
：【魔力】が大幅に上昇しました
：【筋力】が上昇しました
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：【運】が上昇しました
：【魔族殺し】の職業熟練度が大幅に上昇しました
：【放蕩者】の職業熟練度が上昇しました
：【猟師】の職業熟練度が上昇しました
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