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#102 攻勢

「リバース連合軍、あのでかくて黒い三つ頭のドラゴン、倒すわよ!!」

「アレの前身はおそらくエンシャントドラゴンだ! 大丈夫、絶対に倒せる! みんな、俺に続け!!」

「「「うおおおおおお!!」」」


 着岸したリバース、シュプレナード、ロマンラングの大部隊が、ユースティナとヴァンを先頭にして押し寄せてくる。

 高い士気で突き進んでくる皆の姿は、なんとも心強い。


「『ファイアレイン』!!」

「『ラストブリザード』!!」


 軍団の後方からは、アリアナとシェリが強力な攻撃魔法を詠唱していた。炎の雨と氷結の風が、エンシャントギドラへ向けて吹き荒れる。


 が。


『『『クヒハハ、効かねェって言ってんだろッッ!!』』』


 先ほどと同じく、魔法がギドラに届こうかという寸前でかき消えてしまう。やはり、オートで魔法を防御する障壁が張られているようだ。


「アイツの近くには魔法を自動で防御する壁が展開されてる。魔法は利かない!」

「了解しました! でも、現象それ自体が消えているわけじゃない、目くらましぐらいにはなると思います!」

「そうよ! まだまだ、やってみなくちゃわからないんだから!」


 確かにアリアナの言う通り、ダメージは与えられなくとも、近くで爆発したりすることで視界を塞ぐ効果はあるかもしれない。その隙を突けば、物理攻撃で押せる可能性だってある。


 が、その前に。


「アリアナ、シェリ。クロエが魔王に負傷させられた! 治癒をお願いできるか?」

「クロエさんが!? はい、私の全力を尽くします!」

「本当!? よーし、任せて!」

「ありがとう! ちょっと待っててくれ!」


 俺はアリアナの返事を聞き、その場から一気に『ジャンプ』でクロエとルルリラの元へ飛ぶ。


「レオン!」

「すまん、待たせた!」

「さっきの激しい光、大丈夫だったわけ!?」

「ああ、危なかったが問題ない! ルルリラ、クロエ。みんなが来てくれた!」

「えっ」「……ガゥ!」

「説明してる暇はない。一気に飛ぶぞ。近くに寄ってくれ!」


 言って、俺はすぐさまジャンプする。


 戦線の後方へ戻ると、ルルリラを見たアリアナとシェリが、一瞬驚いた顔をした。

 そして。


「ルルリラさん!」

「ア、アリアナ……!」


 ルルリラと一番長い付き合いのアリアナが、真っ先に彼女に抱きついた。


「よかったね」

「シェリ……」


 その後、二人を包み込むようにシェリも手を回す。

 抱き合った三人の姿は、戦いの最中にあっても尊い光景に思えた。


「よかった……本当によかった……」

「ア、アリアナ! 今はクロエを!」

「そ、そうでした! クロエさん、傷口を見せてください!」

「ガウ……」


 感動の再会も束の間、アリアナはすぐにクロエの傷を確認し、治癒魔法の詠唱に入った。

 よかった、これで一先ずは安心だ。


「俺は前線に戻る。皆は魔法での撹乱を引き続き頼む!」

「はい!」「おっけ!」


 アリアナとシェリはクロエの治療をしつつ、軽快に返事をくれた。


「あ、レオン! 『忍び』のスキル『遁術』は魔法障壁に無効化されない。ウチも連れてけよ!」

「わかった! 行こう!」


 そう言うルルリラを巻き込む形で、俺は再度ジャンプする。

 次の瞬間には、一気に最前線へと躍り出た。


『『『虫ケラどもがぁ、目障りなんだよォォ! ウロウロと小賢しいクソがァァァァ!!』』』


 詠唱も魔力の溜めもなく、息をするように魔法を乱発するエンシャントギドラ(魔王)。

 ただ、魔法の正確性に関しては、あの巨体や有り余る魔力を持て余しているのか、かなりコントロールが乱れている。


 分散して四方八方から攻撃をしかけている連合軍の面々に魔法を当てられず、手を焼いているようだ。


 さらにそこへ、クロエの治療が終わったらしいアリアナとシェリの魔法攻撃が間断なく続く。魔法によるダメージはなくとも、視界で爆炎が上がったり吹雪いたりするのは、かなりの鬱陶しさがあるだろう。


 自分の視界を確保しようと、ヤツがその巨体を身じろぎさせた。


「今の隙を逃すな! ヤツが地上にいる間に畳みかけるぞ!!」

「「「うおおおおおおお!!」」」


 俺の掛け声に合わせて、連合部隊がギドラへと襲い掛かる。

 彼らの中には、リバースの海岸にて魔族の大群を返り討ちにした力自慢もいる。


 見せてやれ、物理特化のリバース魂を!


「「「うおおおおおおおおお!!」」」

『『『クソどもがぁぁ! 目ざわりなんだよォォォォ!!』』』

「っ! 『ルームーブ!!』


 皆の攻撃が利いたのか、怒り狂った魔王が叫び、ギドラの大きな尻尾が振り回される。

 ステータス強化されていない者たちがあれの直撃を喰らえばひとたまりもないと思い、俺は咄嗟にルームーブで彼らを逃がした。


「「でやあああああああ!!」」


 と、そこへ今度はユースティナとヴァンが同時攻撃を敢行。

 両名とも、可憐な美少女の見た目とは裏腹な、野太い裂帛の気合で武器を振り下ろしている。


 あの二人、怒らせたらやばいぞ。


「おらああああ!!」

「ちょっとヴァン! もっと力を込められないのかしら? そんな気の抜けた攻撃じゃ、あのデカブツどころか、リバースの誰一人相手になりはしないわ!」

「うるっせ! お前こそ少しはお嬢様らしくしろっつーの!」

「まぁ! 失礼しちゃう!!」


 とかなんとか、激しい連撃繰り出しながらやり取りを交わしている。

 さすが、ゲーム本編ではパートナーとなる二人、息ぴったりだ。


『『『俺を、俺様をぉぉ、馬鹿にするなァァァァァァァ!!』』』

「「「ギギャアアアアアアアアアアアア!!」」」

「っ!?」


 攻勢に出ていた俺たちを黙らせるように、エンシャントギドラが六つの翼を大きく展開した。

 瞬間、周囲に竜巻のような強風が吹き荒ぶ。


 まさか。


『『『調子に乗るんじゃねぇぇぇぇ!!』』』

「みんなとにかく散れ! ヤツからできる限り距離を取るんだっ!」


 俺はヘルバーニングの気配を感じ取り、叫ぶ。

 この場にいる全員をルームーブすることはできない。そうなると最早、全員が効果範囲に入らないよう、逃げてもらうしか手はない。


『『『――と、見せかけて。クヒハハ!!』』』

「なっ!?」


 しかし。

 俺の指示で、皆がギドラに背を向けた刹那。


 魔王が――笑った。


『『『だぁれを殺すか。さぁ、死に腐れや――デスドミネイション』』』


 ヤツの、はじめて聞く魔法名詠唱。

 それはある意味、完全に魔法を発動させるべく、宣言しているということ。


 ――デスドミネイション。

 確実に誰かを即死させる、凶悪な魔法。


「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」


 俺の叫びは、空しく響いただけだった。



:【知力】が上昇しました

:【運】が上昇しました

:【魔剣王】の職業熟練度が上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました


貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

読者の皆様の応援が書く力になっています!

更新がんばります!

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