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私は幸せ者


天気の良い朝。爽やかな心地よい風がそよそよと吹く…


小鳥の囀りを聴きつつ目を覚ますと、メイド達が扉から静かに入ってくる。


「お嬢様、おはようございます。気持ちの良い朝ですね。顔を洗う桶をお持ちしました。こちらに置かせていただいてもよろしいでしょうか?」


笑顔で別のメイドからは

「本日のドレスでご希望はございますか?」


また別のメイドからは

「朝食のご要望がございましたらすぐに料理長にお伝え致します。」


ドレスはもう曜日で色決めちゃおうかな?

朝食の希望?出されたらなんでも食べますよ。


そもそも、顔を洗う桶って!流し行くわ流し!

あーー、蛇口捻っても水しか出ないからって桶にお湯。


って面倒くさいでしょ準備!


しかし、私はまだ4歳になったばかり。何が常識か普通を知らないのに何か言ったら変に思われる。まだ何も言えない。


「貴女達に任せるわ。ありがとう。」とりあえず笑顔で、言っておく。


「なんてお優しいのでしょう!流石はフィルレーツェ家の天使様!」

「私は毎朝、お嬢様のお顔を拝顔させていただくことが

この人生の幸せでございます!」

「まだ4歳でこの輝き!!将来が…!将来が楽し恐ろしゅうございます!!」


「えっ?あ…ははは」乾いた笑いしか出ない。


最初、この人達は媚を売るのに必死なのだと思っていた。褒めるにしても誇張しすぎ。でも…


「お嬢様、こちらの鏡を」とメイドからは鏡を見るように促される。ふーっ、はーっ。


心を落ち着かせて。


ぴかーっと効果音があるなら言ってる。この眩しい黄金の髪。そして美白の顔!白は光を反射されるのよ!!反射板ないのに!目が〜!目が〜!

そして黄金の瞳が子ども特有のキッラキラのまんまるビー玉。喉から手が出そうなほどの輝き…


誰?

あっ、私だ。


慣れん。毎回だか

慣れん。ふーっ、はーっ。


「大丈夫。ありがとう。」

着替えてまた鏡見て、ふーっ、はーっ。慣れん。


最近はまともに鏡で顔を見れるようになった。

でも、チラチラ見る感じ。


イケメンは遠くから眺めるのが丁度いいって言うじゃない?近くだとまともに見れないしドキドキするから。

あの現象が、私の顔に起きとる。


自分なのにドキドキするの。もう大変。


さてさて、今日のご飯何かな〜。人生の楽しみって、やっぱりご飯だよね。昨日のスープも絶品だったし!メイン何かな〜!


扉を開けると、お兄様が「おはよう、アナ。よく眠れたか?」と駆け寄ってきて手を握ってくれる。お父様、お母様は座ったまま、ニコリと微笑んで「おはよう」と挨拶してくれる。


「お父様、お母様、お兄様、おはようございます!」


いつ見ても絵になるな〜、この家族は。

顔面偏差値たっかたかであります。


今日のご飯はチキンのローストとサラダとカボチャのスープか。おおっ、フルーツが盛り沢山。有り難い。

ガツガツ食べたい衝動を抑えてゆっくり食べる。


「今日は仕事で遅くなりそうなんだ。だから先に寝ていて大丈夫だから。」お父様がお母様に伝える。

「まぁ、今日も?最近遅いことが多いけど大丈夫なの?この間だって深夜に帰ってきたじゃない?」

「あぁ、不景気なのはいつものことだが、それに輪をかけて異常気象が起きている。農作物が不作になりそうなんだ。それで色々と対策をたてるのに会議が増えている。」

お父様がげんなりした表情で話す。若き公爵にして宰相。本当に忙殺並の忙しさなんだろうな…


不作か…

この美味しいご飯が今後食べれなくなる…かも…?


「お父様、難しいお仕事をされてるんですね…

そんな難しい仕事をしているお父様、素敵!

無理しないでね。でも頑張るお父様ってカッコいい!!凄い!!」


お父様が嬉しそうな表情で「私の天使からの応援…うんうん。お父様頑張るよ!!アナは何も心配しないで沢山食べなさい!」と言った。


「あらあら、お父様のやる気を一瞬で高めるなんて。流石はアナだわ。」鈴の音の様な声でお母様が私を褒めてくれる。

私を愛してくれる父と母、私に優しい兄。この家庭は穏やかで優しい。ずっとこのままがいい。



光沢のある綺麗なドレスを花のように膨らませ、くるくる体を回転させる。


メイドは部屋にいないからお行儀が…とは言われない!


「はぁ〜!お金持ち最高!美しい顔ありがと~!」


高級ホテルのようなこの部屋が私の部屋!持っているものは最高級のものばかり。凄い!凄すぎる!!歌ってしまいたいくらい!


「わた〜っしはと•おーっても おかぁーねもち〜!♪なにより かおーぉがいぃーん で•す•よ〜♪やっほーほ…」


空いている窓を見ると、口をあんぐり開けたリュウグウノツカイが浮かんでいた。


チリーンチリーン…

「はい、お嬢様。どうされましたか?」

「あっ、メアリー。ドアをしめて、カーテンをしてほしいの。なんだか眠くなっちゃって…」

「かしこまりました。すぐに。」

バタン…ガチャ。シャー。すたすたすた、「でゎ、また何がありましたらお呼び下さい」バタン…


「さーてと〜」ベッドに座り、私はぐぅ〜と両手を上にして体を伸ばした。


「お主は私に感謝してたのではないのか?それとも何か?私らの事を忘れ、己の使命を忘れ、のうのうと生きていたのではあるまいな?」

ベッドを見ると、不貞腐れたリュウグウノツカイ様がジト目で私を見ていた。


「あはは〜、そんなわけないじゃないですか〜」

ダラダラと冷や汗が…

忘れてなんか…いなくも無くもないといえば、そうなのかもしれないような…そうじゃないような…


「はぁ〜、ウツリーネ様のお選びになった魂…。疑ってはいなかったが。グゥノの言う通りに様子を見に来て正解だったかの。」

グウノって誰かな?

「グウノってどなたですか?私会ったことありますか?」


「何を言っておる。お主を天空で追いかけていった私の弟子のことじゃ。おぉっ、あの時は紹介もへったくれもなかったからな。私はリュウと申す。もう1人は私の弟子でグウノだ。」

リュウとグウノ…

「あの、他のお弟子さんでツカイって名前の人もいるですか?」まさか分解した名前って…


「何を言っておる。ツカイなんて名前の弟子はおらぬぞ。」なんだ…ちょっと残念。


「さてさて、話を戻すがな。

グウノがあの者は定期的に発破をかけなければ使命を忘れるか、怠けてしまうやもしれんと言うのでな、4年たった為に訪れたのだ。正解だったのぉ。怠けて、忘れているとは…」再びのジト目…。痛い。心が痛い


「すいません。」とりあえず、謝ろう

「なにをかのぉ?」

「忘れていて…」

「なにをかのぉ?」

「使命を忘れていてすいませんでした!!」

「なんで忘れたのかのぉ?」


うわぁぁっ…こってり絞ろうとしておられる。この人(魚)は根に持つタイプだ。


「その…この環境がとても良くて、幸せ過ぎて…楽しくて…」涙目になっていく。


「ほおほぉ、お主は40歳であったろう。更に4歳加算されよう。なぜ泣く?」


うぐぅ!久々に実年齢を言われた!なんだかキツイ。「今は4歳ですもん!泣くのだって当たり前じゃないですか!」


「違うだろう!お前は他の者とは違う。前世の記憶があるのだぞ?何を言っているのだ!しかもなんだその言葉の運びは?それではまるで幼子ではないか。お主よもや…

今の体の年齢に引っ張られておらんか?」


「はぇ?」年齢に引っ張られている…?


「はぁ〜…、そういう事か。何も見えておらぬのか。

お主は…、この環境がとても良いと言ったか?幸せだと。本当か?この環境は、本当に幸せだけか?何も見えぬか?誰が幸せなのだ?お前だけか?40歳以上のものから見ても、この環境は幸せそのものか?よく見よ!!馬鹿者が!!」




「…様、おじょ…、」ゆさゆさ。誰かが私を揺すっている。「お嬢様!!アナスタシア様!!」

「はっ!私、寝てましたか?」

メイドのメアリーが「えっ?は…はい。なんだか魘されていましたので、揺すってしまいました。申し訳ございません。」

あぁっ、私はリュウグウノツカイのリュウ様と話をしていて…あれは夢だった?カーテンを見る。締まっていた。せれじゃぁ、締めたあとで寝ちゃったのかな?

「いいえ、大丈夫です。起こしてくれてありがとうございます。」

メアリーは少し間をおいてから「お嬢様…」と呼んだ。

「なに?メアリー」


「なんだか、口調がいつもと違いますが…なにかありましたか?」


「はわ!な、なんでもない!!なんか夢でお姉様になってたの!だからお姉さんみたいな口調でいたからその夢に引っ張られたみたい!」

メアリーはほっとして、「なんだ。そうだったんですね!」と笑っていた。


本当に幸せか…?


ふっと、またリュウ様の言葉が聞こえた。

私は幸せでしょ?こんなにも幸せなのに。

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