1 エピローグ 〜女神様…女神様?〜
初投稿です。よろしくお願いします。
「私には、過ぎた役割だったんです。ごめんなさい。女神など…。他の女神はあんなに素晴らしい世界を作れるのにっ!私なんて消えても誰も気づいてもらえない」
神殿のテーブルでゆらゆらと蝋燭の炎が揺らぐ。眼の前には啜り泣く女神様。
「そうですか。貴女は過ぎた役割だと思っているのですね。」
とにかく冷静に!淡々と!私は自分の今やるべき事を分かっている。このクライアントの憂いを少しでも軽くするよう努めよう。
この女神には…
私の(次の)人生が関わっているから。
なぜ分かるか?
それは…
これから転生するからである(泣)
私こと、内村七緒(女性)は帰宅途中にトラックにひかれた。
本当に呆気なく40年という人生が終わった。
今は冷静だが、死んだ直後は大変だった。
「死にたくない~~!!生きたい!何で私が死ななくちゃいけないの!?2人を残して死ぬなんて出来ない」
妹の子どもを養子にし十数年育てた。
まだまだ一緒にいたかった。
真っ暗な中、怒りと悲しみの渦で藻掻く。
『死にたくないって本当に思うの?』
と女性の声が聞こえた。
今聞くこと?!
「当たり前じゃない!」と叫んだ。
「翔太の結婚式!真奈美の成人式!これから楽しいイベントが沢山あったのに!!何で私が死ななきゃならないの!」
『そんなこと…貴女がいなくても、結婚式も成人式(?)も時が来たら行い、そして終わるでしょう。貴女がいなくても…』
2回言われた?!貴女がいなくてもって!
「きっと2人は私が死んで悲しんでる。確かに時間が悲しみを癒やしてくれる。でも心の傷を2人に負わせてしまった。…もっと生きれると思ってた。成人式の振り袖とかあーでもないこーでもないって一緒に悩みたかった…」
言葉にしたらより一層死んだことを悔いた。悲しくなった。
『…人の死は時間が経てば傷が癒え、故人の顔も分からなくなる。思い出も会話も少しずつ忘れていく。生きていると価値があると思うだけ。生きることって本当に価値があるのかしらね…』
なんてことを…今死んだばかりの人に普通言うか?虚しくなるわ!話しかけてきて悲しくなることばっかり!
イラっとした失礼な発言に失礼な返答をしたくなった。
「貴女、病んでますね。1度カウンセリングを受けた方が良いですよ?きっと心の病気です。うつ病とか」
伝えた相手がこちらを見た気がした。
『うつ…そう。この喪失した無気力な感じはうつっていうの…』
私はそれを聞いて少し嫌味ったらしく
「私がカウンセリングしましょうか?私の職業はカウンセラーなんで。カウンセリングの後はもちろん、心療内科や精神科への受診が必要な場合があるかと…」
『話を聞いてくれるの。そうしたら、少しは世界が良くなると思う?』
自分がではなく、世界が良くなるか?
その瞬間、眩い光で目が潰れそうになった。
さっきまでの暗い空間はない。
眼の前には白銀の髪で黄金色の瞳をした白いドレスの女性が浮いていた。
女神様が現れたと瞬時に分かった。
そして、これは転生するお話が始まると。
だか、なんだか違和感が…
美しい女神様はよく見ると、目の下に隈。真っ白を通り越してもはや青白い顔。艶のない髪。服がよれよれ。悩みを抱えた暗い表情。
あれ?なんかこんな人見たことあるような…職場で…
「あの…大丈夫ですか?」
思わずだ。思わず聞いていた。
だって、転生する前に女神が現れて『貴方を異世界に転生させます。チートいりますか?』っていうのが鉄板じゃないの?
娘の真奈美が読んでた漫画だとそんな感じだったよ?
『…転生したいですか?私の世界に』
女神様からの質問に、私は反射的に「さっきいた世界に生き返って最後まで寿命を全うしたいです」と答えた。
『それはダメ。』
ダメと言われた。本当にだめなのかな?
『貴女は即死だったんです。体ももう跡形もなくなる位に』
「そうだったんですか。」
仮に生きていても2人に迷惑がかかるか。
「それで、死ぬとこうやって女神様から今後の進路相談をしてもらえるのがあの世のシステムなんですか?」
『?』
女神様が考えてる。
『今回は私が釣り上げたんです。』
どうやら私は魚だったらしい。この世はすべて海ですか?
『貴女は生きたい気持ちが強く、魂が燃えていた。光り輝いていて、羨ましい。私とは正反対…。あっ、ごめんなさい。それで私の世界に来たいですか?』
ネガティブ発言にうつっぽい雰囲気。
その人が作った世界=闇案件。
「あの…お断」
『え?』
「ですから、丁重におこと…」
『なんて?』
全部被せてきましたよ。この女神様!
『なぜ断ろうと?』
分かっててやったのかい!
「今の貴女の存在そのものがその世界に影響を及ぼしてそうだからです。素敵な世界では無さそうな気がします。私はこの世では凄く平和で治安の良い国で、便利な時代を生きてきました。それ以下の世界は無理です!」
なんかクライアントみたいな人で良心は痛むけど。まぁ神様ならメンタルも強いだろう。
『酷い…素敵な世界で無さそうって!!だから貴女を呼んだんじゃない!私だって頑張ってるのに…』
浮いていた女神様が墜落して倒れた。高さ3メートルからの墜落。
でも意識クリア。外傷なし。流石は神様です。
「えっと、確かにお話をお伺いするとのことでしたね。まずはどうして貴女様が私を…釣り上げたのか。そして貴女様の世界について教えてくださいませんか?」
私を釣り上げる。初めて使う言葉だな。
女神様の背中を擦りながら話をする。
『話は長くなりますが…』
女神様基準の長くなる話…気が遠くなりそうだ。
よし、これは仕事、これは仕事、残業手当が発生する。お金は大事。頑張れる。よし!
目の前の女神様はお客様。お客様は神様だから…。あれ?そのままなんじゃ…
『私は創造された世界を管理する役割を与えられた女神、ウツリーネです。』
…うつ様ですか。
それから女神様の話す内容を聞いて、はやくも挫けそうになるのであった。
✜✜✜✜
「そうですか。そんな事が…」
女神様であるウツリーネ様の話を一通り傾聴した。
内容は一言でいうと、『良かれと思って』と言う名のお節介オンパレードだった。
まず、世界が魔王に滅ぼされそうで勇者転生。
はい!注目!!
転生物大好きな人ならお決まりパターンですね!
亡くなった魂から勇者に相応しい人を選び神殿に呼び寄せた。
その後『貴方は勇者としてこれから異世界に転生します』の下りを行う直前、ウツリーネ様より上の神様(面倒くさいので上司と呼ぶ)から急ぎの呼び出しが来た。
そこから歯車が狂い始めたらしい。