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【隙間】  作者: 木尾方
2/2

犯人

二日? いや、三日か、僕は いきなり釈放されたのだ。


真犯人が逮捕されたのだ。


犯人は、やはり美優だった。


でも、どうやって?



マスコミのいない裏口から普通の車に乗せられ警察が用意したホテルへと向かった。


車内は無言だった。


警察署を出る前に山科が一言謝ってきた。


「伊上さん、久野が取り下げましたが…そして、申し訳ありませんでした。窃盗での逮捕であったにも関わらず、加納安希殺害の件と関係していると思い早まった行動をとってしまい、誠に申し訳ございません。」深々と頭を下げたが、気持ちなど入っているようには到底思えなかった。逮捕自体は間違っているとは絶対に言わないだろう。


「最初から疑っていたのでしょう?」


「……」山科は何も言わなかった。


ホテルへ着くと、付き添いの私服刑事と部屋へと案内された。


「すみません。不自由おもいをさせてしまいますが、2、3日こちらにいてください。必要な物があれば、言ってください。」


…マスコミ対策だろ? 僕がマスコミに警察の愚痴を言うのを恐れているのか?

確かに、このままアパートに帰ったらマスコミの餌食になってしまう。


「一人にしてもらえますか?」


付き添いの刑事は軽く頭を下げて部屋から出ていった。





僕が釈放されてから2日目、携帯も使えず、週刊誌やテレビを見る以外何もすることがなかった。


ワイドナショーでは、連日 安希と美優の事を報道している。どこの出身だの学生時代はどうだの、仕事に友人関係、…だが、どういう訳か僕の事がほとんど出てこない。警察の配慮か?いやいや、あいつらは自分たちの保身しか考えてない。窃盗の罪で署に連行され安希のスマホと鍵を見つけ、別件逮捕で僕を殺人者にしようとしてた奴らだ。これがマスコミに知れたら この事件の矢先が警察に向いてしまうだろう。まぁ、それはそれで面白いと思うが、僕が当事者になるのは勘弁だ。


ビー…ビー… 部屋のインターホンが鳴った。あれ?何か頼んだ?


ドアを開けると見た目は若いが白髪の50代であろうスーツ姿の男性が立っている。誰?


「はい?」


「突然、失礼します。〇〇署の署長より承りました。弁護士の和久津と申します。」入口で僕に名刺を渡した。


「弁護士が何か?」僕がマスコミに垂れる前に示談交渉してきたのか?めんどくさい。


「はい、吉田美優さんの件で」


「美優の?」


「はい、わたくし吉田美優さんの弁護人になりました」美優の弁護士が何用だ?


「はい、もうじき警察から発表がありますが、署長様が伊上さんには直接伝えてくれないかと言われたもので…」


「何を?」


「ここでは、なんですからホテルのロビーにある喫茶店に行きませんか?」


僕は言われるがまま、弁護士の和久津さんについていった。





事件当時の日曜 午後3時すぎ



「正人、帰ってくるかなぁ…」

吉田美優が伊上正人の部屋の前で溜息をつきながら座り込んでいた。


「私が就職して勝手に実家に帰るなんて言ったら、そりゃあ正人怒るわなぁ…私、やっぱり正人が好きだから、もう一度やり直したい。」


そこに加納安希が美容室から帰って来た。


座り込む美優に対して、睨みを利かせる安希


「隣のおばさん、なんなんですか? にらんで? 感じ悪いけど!」


「なんで、別れたアンタがいるのよ」


「はぁ?何で知ってるの?気持ち悪い」


「正人君から聞きました」


「正人君?何?おばさん!」


「ふん!なんとでも言いなさい。今の恋人は私なの」


座り込む美優の前を大股で歩く安希


部屋の鍵をバックから取り出し、鍵を開けながら横目で美優に言った。


「あ、それから正人君と私、隣同士でしょ?でも同棲してるのよ。あはははは」


部屋に入って行く安希に対して、美優は駆け出し安希を思いっきり着き飛ばした。


「い、いた」


痛いと言う前に、また突き飛ばす。


「な、痛い!何するの!このバカ!」


「正人は、お前なんか全然相手にしていない! 不倫してるのだって知っているのだから」


ベッドに背もたれながら安希は対抗する。


「アンタだって、正人君と付き合いだしてから、冷たくされているくせに!何でも知っているのよ正人君のことなら!」


美優の記憶が飛んでしまった。


安希を上から何度も何度も踏み蹴りだした。

身をもって丸くして必死耐える。

息が荒くなり、視界のすみにあった安希のバックの紐で後ろから首を締めた。

力いっぱい、安希の背中に足を置き必死に絞め殺した。


「はぁ、はぁ、ババァ。ざまあみろ!」


そう言った瞬間、美優の記憶が戻った。


「な、ど、ど…」辺りを見渡してベッドのタオルケットを引きずり出し安希にかけようとするが、PPPPP、PPPP、安希の携帯が鳴る。焦るが携帯を確認してみる。


久野部長「このババァ、二股かけているのか?」

美優は、携帯と鍵を持ち、タオルケットで自分が触ったであろう場所を拭いて

玄関を出た。


まだ息が荒い。美優は伊上正人の部屋の合鍵を自分のバッグから取り出すと躊躇なく部屋へと入った。


相変わらず散らかった部屋だと思いながら「どうする?」と部屋を見渡した。


すると今度はメッセージが届いた。


『月曜 いつもの時間で』


それを見て、美優はメッセージを返信した。


『すみません。もう、この関係に疲れました。会社も辞めます』

送信すると電源を切った。


考え込む美優は、正人にも怒りを覚えた。


「正人がいけないんだ。あんなババァと付き合うから」


キョロキョロと部屋を丁寧に物色する美優


「……あ、あった。」それは、美優が正人に送った手紙だった。


手紙を取り出すと、小さなテーブルの上にあるボールペンで文章を書き足した。



『PS:預かっていた鍵も入れておくね』 と



そして、開けないのを知っているベッドの引き出しに安希の携帯とキーホルダーの付いた鍵を そこに散乱している衣服で拭き取り直接触らないようにして閉めた。


「正人が悪いんだ」


102号室を出て、その合鍵で鍵を閉めキッチンの小さな窓から手を入れて合鍵を散らかった部屋へと投げ入れた。



そして、美優はアパートを後にした。




しばらくして、事件が明るみになり、少し経ってから警察に匿名で隣の人が怪しいと警察に連絡したのだ。






「これが、わたくしが吉田美優から聞いた話です。」


「……」僕は言葉が出なかった。


テーブルに置かれている水を一口飲むと和久津さんに聞いてみた。


「なぜ、美優が犯人だと分かったのですか?」


「…隣の森本義三さんが、美優さんの行動を見ておりまして…」


見てた?


「いや、安希さんが発見された時 森本さん何も言ってなかったけど、どうして?」ま、まさか…



「…言っていいものなのか、どうか驚かないでください。」


そういうことか。


「森本義三さんは、隣の部屋から伊上さん あなたの部屋を覗いていたようです。覗きがばれるのを恐れて黙っていたようです。」




「あははははははははははははははははは…」




僕は笑いが止まらなかった。喫茶店の誰もが僕を見てもお構いなし、付き添いの刑事が静止しようと声をかけるが笑いが止まらない。





だって、だって、僕だけが見ていると思っていたら両隣が僕を見ていたのだから






                                 終わり


昨日は、大変失礼いたしました。


言い訳 久しぶりの投稿すぎて訳わからなくなってしまい、ダブって投稿してしまい最初を削除いたしました。読んでいただいた23名様 大変申し訳ありません。そしてありがとうございます。


そして、新たに読んでいただいた方々ありがとうございます。


感謝感謝です。m(__)m


また、少しずつですが、書いていこうと思います。


それでは、お会いできる日にw


                 木尾方

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― 新着の感想 ―
[良い点] 次々と意外な真相が明かされていくという構成で、ミステリーとしてとても充実していました。 やっぱり登場人物に特殊な性癖がある作品は、とてもワクワクしますね!
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