秘密
5月初旬
「伊上君、ちょっといい?」
…なんだよ。またかよ。
「はい。相澤さん、どうかなさいました?」
「ちゃんと、ご飯食べてる?困っていることない?良かったら夕飯作るわよ…」
「だ、大丈夫です。ちゃんと食べてます。ご心配ありがとうございます。」
毎度、めんどくさい。ババァだなぁ…バイト先といい、アパートといい…
相澤さんは悪い人じゃないと思うが、うざい。コンビニバイトのオーナーだし、住んでいるアパートのオーナーの奥様でもある。管理している不動産のほとんどを大手に委託して、自分たちは、半分お遊びでコンビニなどの経営をしてる道楽者に感じる。
「伊上君、ちゃんと聞いてる?心配しているのよ?」
「相澤さん。ありがとうございます。だ、大丈夫です。大丈夫。」
本当にうざい。最近、やたらとプライベートまで聞いてくる。この前もアパートに手作りのお稲荷さんを持って来たときには焦った。確かにバイト帰りに、ここのお稲荷さんを良く買って行くが他人が作った物は正直、口に入れたくない。前は母親気取りのように感じたが、それもちょっと違うように感じて気持ち悪い。
ピンポン、ピンポン、ピンポーン。
店内のチャイムが鳴る。
「あっ、」
バックヤードの防犯カメラのモニターに映る人を見て思わず声を出してしまった。
「え、何?…あぁ、あの尻軽女ね。伊上君の隣りに住んでる。よく男を連れ込んで…まったく、あれで役所勤めだなんて。」
「ははは…」
僕は、愛想笑いを少しだけした。隣りに住む加納安希は僕より少し年上で、町役場に勤めている。美人でもないしブスでもない。…と言うか、僕のタイプではない。久野とか言った不倫男のように加納安希が好みの男性もいるだろう。だからといって加納安希に対してまったくの欲がないわけではない。シチュエーションが大事なのだ。洋服姿のアイドルなんて見ても普通としか思わない。水着を着るから欲情する。
彼女だった、美優だってそうだ。付き合って暫くの間は楽しかった。慣れてくると刺激が無くなり飽きてくる。【釣った魚には餌をやらない】まったくそう感じる。
「伊上君、気を付けてね。絶対にあの女、伊上君を狙っているから…わかるのよ。」
「やめてくださいよ。相澤さん」
「いい? 何かあったらすぐに言うのよ。アパート追い出してやるから」
おいおい、やめてくれよ。僕の楽しみが無くなってしまうじゃないか。
「何もないですよ。それでは仕事に入ります。」
そそくさと僕はバックヤードから逃げた。
レジで待機すると、加納安希以外に2人の客がいた。僕は彼女を目で追っていた。視線に気づいたのか、目が合ってしまう。ペコっとお互いに軽い会釈を交わした。まぁ、そうだ。隣人同士なのだから他の客より顔見知りなのだから。
お決まりのコースを回って、他の客がいなくなってから毎回レジに来る。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
僕も返事を返す。
「今日も遅くまでですか?」
そうだよ。毎回同じ質問かよ。
「そうです。夜勤、深夜枠ですから」
定職について役所勤めなんて、僕からしたら喉から手が出るほど欲しい。就職活動に失敗して3年目、まだまだ奨学金も返さないといけない。
この春に美優は就職して僕と別れた。別れる時も面倒くさかった。フリーターの彼氏じゃ親に会わせられない?何様だ!しかも先日、美優から郵送で手紙が届いた。封を開けて書いてあった手紙には【思い出ありがとう】はぁ?なんだ?たったその一言?何なんだ?メンヘラ女か?
僕だって就職していればコンビニのバイトや、昼の宅配サービスなどしなくてもすむのに…
会計が終わると加納安希は、また軽く頭を下げてコンビニから出ていった。
◆
朝5時のこの時間になると肌寒さはあるものの、かなり明るくなった。
バイトが終わりアパートへの帰路につく
コンビニからアパートまでは徒歩30分弱
今は、この30分が異様に重い。
なぜ、僕だけが不幸なんだろう?
なぜ、僕だけが失敗なんだろう?
なぜ、僕だけが無様なんだろう?
ここ最近、そんなことばかり考えてしまう。
白ずむ町中、アパート101号室の明かりが見える。
加納安希の部屋だ。
僕の部屋は隣りの102号室
2階建て1DK 6部屋、築40年以上の古いアパートだ。
僕は、そっと自室の鍵を開け、最小限の扉の隙間から入りゆっくりゆっくりと鍵を閉めた。
自分の部屋なのに、電気も点けず足音を立てずにキッチンから部屋へと向かう。
床がギシっと鳴る場所を避けて…部屋は畳の上にカーペットを引いてあるのでゆっくりならば音はしないだろう。部屋に入り真っ先に向かったのは、開けておいた押入れだ。
上下2段の奥行きのある押入れ。僕は、マットレスを引いておいた2段目の押入れに膝から物音を立てないように慎重に慎重に登った。そして、最後の難関である。開いている押入れの戸を内側から閉め始める。ギ、ギギッ…スーっと慣れた手つきで戸を閉め押入れの中を完全に暗闇化する。押入れの梁に目を寄せると101号室の部屋が見られる。
そう、古い作りのせいか、年数が経ったせいか、梁の隙間から隣りの部屋が見えるのだ。
しかも、加納安希は朝の6時ごろから風呂に入る。脱衣所などないアパートでは扉を閉めないかぎり丸見えなのだ。
加納安希は僕のタイプではない。だが、このようなシチュエーションに興奮するのだ。AVなんか要らない。リアルな素材が目の前にあるのだから。
この、覗いている時間が興奮する。やめられない。だが、誰にも言えない。ばれたら最後、もっともっと底辺の層になってしまう。僕の性癖は絶対に秘密にしなくてはならない。
墓場まで持って行かなくては…
◆
月曜日の朝、僕は安希に恋をした。それも一方的に恋をした。
◆
数日前 土日の宅配、コンビニは休み無く忙しい。
深夜バイトから帰宅しすぐに仮眠をとる。
10時頃から宅配の通知が頻繫に届くようになる。
僕はアプリを操作して夜間のコンビニバイトの時間まで必死に自転車のペダルを漕ぐ。
そして、日曜日と連続してバイトに明け暮れる。
朝にはクタクタになって帰宅するが、日課の覗きは欠かせない。
そして、月曜日
僕は、眠気や疲れなど消し飛ぶような安希を見たのだ。
いや、覗いた時、安希と目が合った。
そして、僕は、声を出してしまった。
「う、美しい…」
隙間から覗く、その姿。ベットにもたれかけ、乱れた髪の隙間から見える充血した赤い目、薄い唇から出る異様に長い舌、微動だにしない体、硬直し乾いた血が残る長い指、首筋には黒い跡、かきむしり瘡蓋になった首周り、乾いた鼻水に唾液、服には小便の跡まである。白い肌が変色し、青い血管が見える。あぁ、なんて妖艶なんだ。僕の心は奪われ目が離せなくなってしまった。
コンコン…コンコン…「安希いるか?…俺だ。開けてくれ」
扉の叩く音? 何時だ?
僕は見とれていて時間を忘れていた。絶対に押入れでは見ないスマホを取り出し、暗い中で時間を確認した。…まだ、朝の8時?
トントン…トントン…「安希、開けてくれ。どうしたんだ?昨日、いきなりメッセージで、仕事を辞めるなんて?訳を聞かせてくれ。」
僕は、不倫男の久野の言葉にじっと耳を向けていた。
ドンドン、「この前怒ったことは、謝るから出てきてくれ。ふざけているのだろ?なぁ、俺と君の仲じゃないか?なぁ、安希!」
「うるさいよ!朝っぱらからなんだ!」
ははは、僕じゃなく、隣の森本さんが出てきた。
「す、すみません。すぐに行きます。」
「まったく、そうしてくれ。夜勤明けだって言うのに」
森本さんは、派遣社員でよく夜間のガードマンをしてるらしい。何度か朝方や夜勤前に会って少し会話をした程度だが
「安希、仕事が終わったらまた来る。食事でもしながらゆっくりと話そう」
「おい!」
「わかりました。行きます!なんだってんだ!」
ははは、醜い不倫男め。もう安希は僕の者だ。そのまま消えろ。
そして、僕は押入れの中で安希を見つめながら眠りについた。
◆
トントン…トントン…「安希、居るのか?携帯も繋がらないし、既読にもならない。大丈夫なのか?」
また、来たのか。しつこい浮気男だな。
「安希、すまないが、このまま、帰るよ。連絡くれ。ドアに買ってきた物を置いておくかえら」
暫くすると、物音がしなくなったので、僕は押入れから出て外に出てみた。安希の玄関のドアノブには、お弁当や、飲み物、お菓子が入っていた。僕と一緒で料理のできない安希。
…周りを見渡し僕は、その袋を部屋に持ち帰った。不在より、仲たがいしてると思ってる久野に、安希が健在であると思わせた方がいいと思ったからだ。
◆
「伊上君、どうしたの?その隈?寝てるの?」
はは、また相澤さんのお節介か?
「大丈夫ですよ。少し寝不足なだけで…でも、元気ですから」
「そ、そう?」
「はい」
「…それにしても、あの女 暫く来ないわね?いつも伊上君が入る時間には来るのに。まぁ、いいわ。来ないなら来ないで」
来れませんよ。安希は…
◆
数日経つと、ますます安希は美しくなった。
水分が抜けていく身体、セミロングで艶のない髪、光を宿さない くぼんだ瞳、カサカサになった赤みのない唇、骨の形がわかる長い指、隙間から安希の匂いが漂う。興奮する。
「あ。」動かないはずの唇が、もごもごと動く。ゴキブリだ。
「可愛い」クスクスと僕は笑ってしまう。
◆
分かってはいたけど、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。
トントン…「加納さん。加納安希さん。いらっしゃいますか?警察です。安否確認で来ました。」
………
「すみません。開けさせていただきます。お願いいたします。」
「はい」
相澤さんの声が聞こえる。
カチャ…
「やっぱり…鑑識呼びます。中に入らないでください。」
トントントントントン…
僕の部屋がノックされる。安希を見ていたいが、そうも言ってられない。
「はい」僕はドアを開ける。
「伊上君、大丈夫? 隣の女、死んでいるのよ」
流石、不動産業の奥様 慣れているわけではないのだろうが経験済みのようだ。
「えっ!なんで?」驚いたふりをする。
「まだ、分からないわよ。これから鑑識が来るそうよ。」
朝から周囲が慌ただしくなる。隣の森本さんも、2階の住人たちも出てきた。
ザワザワするアパートに近隣も気付き始めたようだ。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
「あぁぁ!!! なんで?俺が差し入れた物がお前の部屋にあるんだ?」
相澤さんと森本さんと話をしている後ろで警察と一緒に来ていた久野が叫んだ。
しまった。玄関を開けっぱなしだ!うっかりしていた。
「おい!どういうことだ!」久野が詰め寄ってきた。
「い、いや。」
「どうしました!」警察が僕と久野の間に入り込んできた。
「この男、俺が安希に差し入れた物が、こいつの部屋にあるんだよ」安希だと?僕の安希に…馴れ馴れしい。この不倫男め
「どういうこと?」警察は困惑しているようだ。
「あ、あの…す、すみません。ずっと置いてあるので、勿体無いから頂いてしまいました。」とっさに嘘をついた。
「あぁ????」久野が怒りをぶつける。逆に僕の頭の中は冷静になっていった。
「とりあえず、お話を伺いますので」警察は僕達を遠ざけた。
◆
寝れるはずもなく、隙間から部屋を覗く。
鑑識や警察達が狭い部屋の中をうごめいていた。
やめてくれ、僕の安希に触れるな。
美しく崩れゆく安希を物として扱うな。
自然のままの姿でいさせてくれ。
僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、
僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、
僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、
僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希、僕の安希…
◆
しばらく、僕はバイトを休んでいた。
テレビの報道や、SNS…勝手に安希を食いものにしていく…うんざりだ。
コンコン…また扉を叩く音だ。
ただでさえ、相澤さんや、警察、マスコミの訪問が後を絶たないのに…
やる気がない。そっとしておいてください。
コンコン…「伊上さん、山科です。先日は、お話しありがとうございました。」
コンコン…「伊上さん、いらっしゃるのでしょう?今日は別件で伺いました。」
別件?なんだ?安希の話じゃなければ、刑事が僕に何のようだ?
押入れから重たい体を動かして僕は玄関に向かう。
カチャと鍵を開け、ドアをゆっくりと開けた。
数人…いや、10人近い人がいる。
「伊上さん、すみません。窃盗で逮捕状が出てます。裁判所から家宅捜査の礼状です。あがります。」
山科は、僕を中に押し込むと仲間であろう刑事が2人左右に僕の腕をつかむ。
「山科さん!何なんですか?…久野の差し入れを食べたからって」
「伊上さん、窃盗は窃盗ですから」
「それにしても、この人数は、おかしくないですか?」
「……」
安希の部屋を荒らして今度は僕の部屋かよ。
「山科さん!こっちへ来てください。」
部屋の奥にあるベッドの引き出しから山科の仲間が何かを見つけたようだ。
…何があった?今は使わない小物や壊れたドライヤーぐらいしか思いつかない。
その物を見た山科が僕の所に来た。
「伊上さん これはなんですか?」
手袋をした山科が見せたのは、スマホとキーホルダーの付いた鍵だ。
…どこかで見たような …あ! アパートの鍵だ! このキーホルダーは?
「伊上さん 隣の加納さんですが、殺人でしてね。加納さんのスマホと、このキーホルダーが付いた鍵が部屋から見つかっていないのですよ。」
「!」
「伊上さん 署に、ご同行お願いいたします。それとも、ここでお話しくださいますか?」
「何のことですか?僕が安希を殺したって言うのですか?バカ言わないでください。」
「安希…呼び捨てですか。隣の加納さんとは日記の通りに親しかったようですね。なぜ、先日には、お話ししていただけなかったのでしょうか?」
?????? 日記 ????? なんだ?何なんだ?
「お話しが長くなりそうですから、警察署でお伺いいたします。」
「なんで僕が?」パニックになりそうだ。
「伊上さんはもう十分、参考人ですから…いやいや、すみません。窃盗ですから容疑者ですね。」
両腕を掴んでいた刑事の力が強くなる。
「伊上さん、窃盗の容疑で連れて行きますが、ここから出る時は注意してくださいね。」
「な、なにを注意するって?」
靴を履き、荷物も持たないまま外に出た。
規制線の張られた先から、マスコミが一斉に僕目掛けてフラッシュを焚き、質問の雨を降らせた。
なぜ、警察に連れていかれるのですか?お二人の関係は?女性を殺したのですか?動機は?
殺したのですか?殺したのですか?殺したのですか?
「ぼ、僕はやっていない!!!」思わず大声で叫んでしまった。
山科が僕の壁となった。
「マスコミの方々、別件での小さな事件です。勝手な報道はしないでください。」
無理だ。も、もう僕は安希を殺した犯人だと1分後にSNSで拡散するだろう。終わりだ。
◆
窓のない無機質な部屋の冷たいパイプ椅子に座り山科が喋っている。
だが、まったく耳に入ってこない。
「聞こえてますか?伊上さん」
「…はぁ」
「なんで、スマホと鍵がベッドから出て来たのか伺っているのですが?これも盗んだのですか?」
「…いえ、違います」
「じゃぁ何故、伊上さんの所から出てきたのでしょうか?」
「…わかりません」
「伊上さん と 加納さん は親しい関係でしたよね?」
「…僕が好きでした」
「加納さんもでしょう?」
「…いえ、僕の片思いです」
「それは、おかしいですね。加納さんの日記によると伊上さんとの同棲の事が毎日書いてありましたが」
「日記、そ、そう!日記ってなんですか?」僕はパイプ椅子から腰を上げた。
「い、痛い」他の刑事が僕を抑える。
「まぁ、日記ですからね。知らなくても無理はありませんが5月6日まで書かれてます。なので、7日 日曜日に殺害されたと思って間違いないでしょう」
「に、日記には、な、何て書かれているのですか?お、教えてください」
「…少しですが、私が覚えている範囲でよいのなら」
「お願いします。」
山科達が安希の部屋から持ち出した日記には、僕と安希のアパートでの私生活が書かれていたようだ。
『〇月〇日 正人君 ごめんね。いつもコンビニの お惣菜ばかりで、本当に料理ができなくてスミマセン。でも、私が選んだコンビニの お惣菜を美味しそうに食べる 正人君 好きだよ。』
『〇月〇日 正人君 今日もバイトお疲れ様です。疲れているのに私が仕事に行くまで起きていてくれてありがとうね。いつも見つめくれる 正人君 好きだよ。』
『〇月〇日 正人君 我慢してくれてありがとう。本当に久野って上司 いやらしいの、本当に 同じ マサトって名前じゃなければ、あんな奴とっくに捨てているのに、マサトは正人だよ。』
『〇月〇日 正人君 嬉しい! 彼女だった美優と別れてくれたのね。私も早く久野と別れるから待っててね。あぁ、もうじきだね。本当の恋人になれるの!大・大・大好き正人君』
な、なんて事だ! 安希も僕の部屋を覗いていたのか!
選ぶのが面倒で、安希が買った お惣菜をよく買って帰ったし、久野が来た日は 同じマサトと呼ばれるのがいやで、部屋を出たりした。僕の部屋を覗かないと分からないことだらけの日記だ!
「これでも、付き合っていないと言うのですかね?確かに浮気同士じゃ公表できないが、ここは正直に話してくれませんか?伊上さん」
「そ、そんなこと言っても本当に付き合っていないのです」そうとも、僕は死人の安希に恋していたのであって、生身の安希には魅力を感じていなかったのだ。そんなこと言える訳がない。好きな人が死体だなんて。ましてや、その安希を覗いていたのだ。この日記の内容は『安希が僕を覗いていたから』なんて言える訳がない。
「伊上さんは、美優と言う彼女と別れました。だが、加納さんは久野さんと別れていない。そこで喧嘩となり『カッ』っとなってしまった伊上さんが首を紐のような物を使い殺したのではないのですか?」
「僕は殺してなんかいない!」
「加納さんが死んでいるのを知っていたから、久野さんの差し入れを食べられたのではないですか?」
「そ、それは…」
「どうなのですか!」
「あ、美優!美優なら僕のアパートの合鍵をもってますよ!」
「はぁ…伊上さん。嘘はダメですよ。」
「ウソじゃない!美優が持ってる」
「伊上さんの部屋から押収された物の中に吉田美優さんの手紙がありました。その時に鍵を返されてますね。」
「それこそウソだ!」
「いいえ、嘘ではありません。」
山科は僕にプリントされた写真を見せた。
そこには、『思い出ありがとう。 PS:預かっていた鍵も入れておくね」と写っていた。
「な、なんで?」
「手紙の消印も4月8日になっております。どう考えても鍵の持っていない 吉田さんは部屋に入れません。」
「ど、どういうことなんだ?」
「さぁ、伊上さん もう正直に話してください。」
…僕がやった?死体が見たい為に?…いや違う。安希の死体を見て目覚めたのだから。
…誰なんだ?
ごめんなさい。
間違って一度削除してしまいました。
昨夜、読んで頂いた23名様 大変申し訳ございません。
木尾方