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なろうラジオ大賞3

ゾンビパニック世界で学園ラブコメ映画を撮りたい

 残念なことに、世界は崩壊してしまいました。

 ゾンビウイルスに侵されてしまったのです。




「うおおおおおお!」


 学校の校門に横付けしたトラック。

 荷台に設置した機関銃を乱射して、迫りくるゾンビたちをハチの巣にする男。


『東門からも来るぞ!』


 無線が入った。


「畜生、きりがねぇぞ」

「なぁ……だいたいなんカットくらい撮り終えたんだ?」

「せいぜい、序盤のあたりくらいじゃねぇか?」

「マジかよ……」


 トラックの運転手は頭を抱える。


 現在、廃校にてラブコメ映画の撮影中。

 俳優たちが校舎の中で撮影を行う間、ゾンビを撃退するのが彼らの仕事。


「くたばれゾンビどもおおお!」


 鉄条網を乗り越えようとしたゾンビたちを、火炎放射器で薙ぎ払っていくモヒカンの男。


「はっはぁ! どんどん来な!」


 クレーン車から吊り下げられた足場に乗って、弓でゾンビを射抜く女。


「この死にぞこないどもがああああああ!」


 丸太を持って暴れる男。


「本当に心強い仲間たちだな」

「ああ、俺もお前を頼りにしてるぜ!」


 トラックを走らせ、ゾンビの群れに突っ込んでいく。


 こんな愉快な仲間たちが戦っている間、校舎の中では……。




「ダメ……もうサトルのことなんて信じられないよ!」

「待てよ! サオリ!」


 長い廊下を学生服を来た男女が追いかけっこする。


「カットカット!」

「え? 今の演技、ダメでしたか?」

「セリフあってたと思いますけど……」

「違う、違う! 音だよ、音!」

「「あー」」


 外から聞こえる騒がしい音。

 爆発、銃声、叫び声。


 どれも学園ラブコメには似つかわしくない。


「もっと静かにやってくれよなぁ。

 いつも注意してるのにさぁ」

「私の出番かな?」


 全身をプロテクターで固め、日本刀をわきに刺した男が尋ねる。


「先生はゾンビが校内に侵入した時の切り札。

 もしもの時はお願いします」

「うむ、任されよ」



 じりりりりりりり!



 火災報知器が鳴り響く。


『校内にゾンビ侵入! 校内にゾンビ侵入!』

「くそっ、言ってる傍から!」


 プロテクターの男は全力でゾンビの討伐へ向かった。


「あの……撮影は?」

「続行だ! 音なんてどうでもいい!

 さっさと続きをとるぞ!」

「「はい!」」


 こうして学園ラブコメの撮影は続けられた。

 出来上がった作品には雑音が入りまくっていたが、たいそう評判が良かったという。




 文明が滅び、ゾンビが占領した世界。

 地獄のような世界で映画を撮る者たちがいる。


 彼らが戦い続ける限り、人々は希望を失わずに生きていけるだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは好きな世界観(*´ω`*) [一言] とてもほのぼのして良かったです!
[良い点] ゾンビがわらわらきてるのに、意外と映画撮る余裕があるんだwww 凄く良いです。人生に娯楽がないと味気ないもの! 校門のところで食い止めている人達が強者感しか無いんですけど、校内にゾンビが…
[良い点] うん。この現実のほうが映画みたい(笑)
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