破壊と創造の神ゼヌス4
学園の女子生徒がエルナンドお兄様に胸を撃ち抜かれ、女子生徒のみならず男子生徒までもがランセル王子の愛くるしさに悶絶する。王都学園では当たり前の光景。
目の前で繰り広げられる、ごく当たり前の日常に、ゼヌスの膝の上に抱っこされたままの全私がつっこむ。
(誰か、この異常事態に気づきやがれ!!)
今朝、最初の授業が始まる前に自己紹介をしたゼヌスは、すたすたと私の席までやって来た。そしてあろうことか涼しげな顔で軽々と私を持ち上げ、私を膝の上に抱っこした形でその席に座ったのだ。
膝抱っこ。かつバックハグの状態に、何の羞恥プレイですか?と顔を真っ赤にして慌てふためく私の目の前で繰り広げられるのは、当たり前の学園風景。
「では授業を始める。教科書の123ページを開いて。デューイ王子君、①から読んでください」
いつもと変わらぬ飄々とした姿で授業を進めるフェルナルド先生。隣の席に座るデューイ王子は「はい!」と実に良いお返事で、ハキハキと教科書を読み始めた。
他のクラスメート達は、教科書を開いてデューイ王子が読んでいる箇所を目で追っている。
私はゼヌスの膝の上で、恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にしてぷるぷると震えていた。
「そこまででいいですよ、デューイ王子君。では次をアシュレイ侯爵令嬢さん、読んでください」
フェルナルド先生に指名された。いつもなら優雅に立ち上がって一礼した後、読み始めるのだけれど。ゼヌスに抱っこされているため、立ち上がることができない。
ゼヌスに、膝から下ろすように告げようと口を開く前に、実にナチュラルな動作で、ゼヌスが私をお姫様抱っこをして立ち上がった。
ゼヌスの腕の中、教科書を手に持ったまま驚き固まる私に、「早く読め」と耳元でゼヌスが囁く。
いやいや。どう考えてもおかしいでしょ、お姫様抱っこで音読とか。なんのコントですか?
ってか、どうして誰もつっこまないの?
混乱したまま、それでも自分が教科書を読まなければ授業が進まないことに気付き、音読を始める。
恥ずかしさと、居たたまれなさで声が震えるのは仕方ないことだろう。その後の授業でもゼヌスによる膝抱っこ羞恥プレイは続いたが、誰一人として、この異常事態に突っ込みをいれる者はいなかった。
そして現在、昼休み。ランセル王子のみならず、エルナンドお兄様すら私がゼヌスに膝抱っこされていることに言及しない。嫉妬深いお兄様が何も言わないなんておかしすぎる。
背中にぴったりと密着するゼヌスを、疑惑の眼差しで下から見上げる。するとゼヌスは満足げな笑みを浮かべる。
「ふむ、この角度で見下ろすアシュレイも悪くない」
後ろから回されている腕に力がこもる。ゼヌスの赤い目が、欲情で一段と鮮やかさを増した。これだけ密着しているにも関わらず、エルナンドお兄様はにっこりときれいな笑みを浮かべて手を差し出す。ランセル王子も負けじと私に向けて手を伸ばした。
「アーシュ、アーシュが大好きなエルが迎えに来たよ。2人きりで昼ごはんを食べに行こう」
「アシュレイ姫、昼ごはんは当然、婚約者である私と食べるよね」
そんな2人の目の前で、ゼヌスは私の頬を撫で、髪を撫でる。彼らにはゼヌスの姿が見えていないのだろうか?そんな疑問が湧くほどに、誰も彼もがゼヌスに無関心すぎる。
「ゼヌス、貴方もしかして人心を惑わせる魔法をかけたの?」
私の質問に、ゼヌスは赤い舌を覗かせて、艶かしく首を傾げた。




