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学園復帰

「はぁー」


無意識にため息が漏れる。がたごとと揺れる馬車の中、流れ行く町並みを眺める。体調不良と言う名目で休んでいた王都学園に、今日からまた通うことになる。


チラリと目の前に座る人を見て、またひとつため息が出た。


「可哀想な、アーシュ。不安で仕方ないよね。2週間も愚かな魔法使いによって眠り続けていたせいで、学園を休んでいたんだ。


本来ならば、復学するには早すぎる。それになにより、学園になど通わなくても私の手の中で、私に守られながら、その愛らしくて、愛らしくて、愛らしい、天使の笑みを私だけに見せて欲しい。心から愛しているよ、アーシュ」


エルナンドお兄様が、手を伸ばして私の頭を撫でる。


ため息の原因は、わたくしの隣に座るこの蕩けるほどに優しい兄ではない。わたくしの目の前に座る、紫の髪に赤い目をした少年だ。


「ほー、その愚かな魔法使いとは、誰のことだ?返答によっては貴様を毛むくじゃらの醜い虫に変化させた後、踏み潰してやろうか?」


14、15才くらいの見た目の少年は、見た目年齢からは想像できない尊大な言葉遣いで、お兄様を睨んだ。お兄様とは真逆の濃い色彩を放つ少年は、私たちの目の前で腕を組み、腕を組む。




そんなふてぶてしい態度すら、一枚の絵画のように美しい。イケメンって特だわ。


などと明後日の方向に意識を飛ばす。そして諦めるように、深くため息をはいた。





大神殿の地下で、私と従属の契約を結んだ大魔法使いは、表向き執事見習いとして私に仕えることが決まった。エルナンドお兄様も、ランセル殿下も猛反対したけれど、



「大魔法使いを野放しにするわけにはいかない。せっかくアシュレイが彼の者の首に首輪を付けてくれたのだ。彼の者の命運をアシュレイに託すのが道理ではないか?」



と言う、皇帝陛下の完全責任放棄。丸投げ発言丸出しの鶴の一声により、私専属執事になるべく、執事修行も予て、わたくしと供に王都学園に追従することとなった。



ははっと意味もなく乾いた笑いが漏れるのは、面倒なのが増えたことへの失笑でも、皇帝陛下に対しての不平不満を誤魔化すためのものでもない。



人間とは、自分の許容範囲を越える出来事が起こり、脳ミソがパンクすると、ただ力無くヘラヘラと笑うことしか出来なくなる生き物らしい。



とにかく大魔法使い君、学園ではくれぐれも問題起こさないでくださいよ?

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