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そして神殿へ

大魔法使いの呪縛から解き放たれた私は、今、神殿の地下室で、封印が解けた大魔法使いと対峙している。


何故こうなったのか?それは…


『愛しいアーシュの体と心に入り込み、誘惑した罪』に怒り狂うエルナンドお兄様と、


『なんとも言えぬ敗北を味わわせた根元である大魔法使いに八つ当たり』しなければ気が収まらないランセル王子。


『面倒なことは避けたいけど、ランセルが行くなら護衛しなきゃな』なソルト。


この3人が神殿に向かうと聞き、慌てて着いてきたからだ。


大魔法使いに罪を償わせたいエルナンドお兄様も、八つ当たりしたいランセル王子も、やる気はないけど仕事だから渋々ついてきたソルトも、使える魔法は自然魔法の氷、水、風魔法だ。彼らの魔力と技術は最高級品だけれど、300年以上もの間封印されるほどの凶悪な魔法使いに対抗するなんて無謀すぎる。


そもそも彼らの怒りの発端が私にある以上、見て見ぬふりはできない。と言うことで、封印から目覚めた早々、私は、彼らと共に神殿にやってきた。


「アシュレイが危ない目に遭う必要なんて無いんだよ。帰ろうよ、アシュレイ!」


小さな男の子の姿で着いてきたリンが、私の袖を引っ張って訴える。潤んだ目で見上げるリンのほっぺが不機嫌そうにぷくっと膨れている。


か、かわいい!


愛くるしくて身悶えてしまうよ、リンちゃん!!


そんなリンの訴えも、心を鬼にして退ける。


小説の中の大魔法使いは、アシュレイの命令であっさりと世界の半分を消してしまった。その恐ろしいほどの魔力は恐怖でしかない。


小説の中では、大魔法使いを制御できたのは悪役令嬢アシュレイだけだった。彼女の圧倒的な美しさと禍々しい色香に陥落した大魔法使いは、アシュレイと従属契約を結ぶ。絶対的な主となったアシュレイは大魔法使いを顎で使いまくって、世界に阿鼻叫喚を巻き起こした。


現在、見た目は美しいが中身はごく平凡な一般人である私ごときが、大魔法使いを陥落できるとは思わないが、私の無効化の魔法が役に立つかもしれない。そう考えて、『危険だから』と渋い顔をするエルナンドお兄様やランセル殿下に頼み込んで、ここまで着いてきたのだ。






半分以上封印が解けて、今にも魔力を爆発させそうな大魔法使いを前に、彼の力を抑える方法はないか?と考える。闇のように深い紫の髪を靡かせて、血のように赤い目で此方を睨む大魔法使い。彼に対峙するように、3人の見目麗しい青年が立つ。


「ここで終わりにしよう」


ふわりとプリンセススマイルを咲かせる王子様の目が冷たく光る。八つ当たり全快。珍しくSっ気たっぷりなランセル殿下。


「この程度で、貴様がアーシュに施した卑劣きわまりない罪が償えると思うな。封印などという生易しいことはしない。生きて、生身の貴様の身体に千年続く激痛と苦しみを与えてやるよ」


正真正銘のドSなヤンデレ。エルナンドお兄様。


「ここで助力することで、✕✕が手に入るなら力を貸すか」


ボソッと呟き、意味深にこちらを見るソルト。


悪魔の王みたいにつり上がった目をして、怒りを隠しもしない大魔法使い。


タイプの違う見目麗しい4人の青年たちを見ていて、思い出した。


(この小説、裏設定があったんだ!)


と言うことに。胸の奥の奥の泥を集めたみたいな。人間の欲望や汚い部分を集結させたような描写が続くのが、この小説の本編。いわば原作なのだけど、


この話には裏設定。言わば同人誌が多く存在する。コアで熱狂的なファンによって描かれる同人誌には、成人向けの濃厚なBLモノも多く出版されていて。前世で、ごく普通の一般人だった私は、何を隠そう筋金入りの腐女子でもあった。


正直に告白しよう。


私は、本編よりも同人誌が好きだ!


お気に入りの作家さんや、話題になった作家さんの書いた同人誌を読み漁った。始発電車でコミケ会場に向かい、何時間も開場待ちして手に入れた作品だってある。


それほどまでに読み漁った同人誌。この中でお色気担当筆頭は、大魔法使いだった。本編では、大魔法使いが封印された理由については触れられていない。


が、同人誌で多く描かれている理由は、大魔法使いが淫魔だからというものだった。




各国の王や王子を魅了の魔法で誘惑し、淫らに陥落させた上で国同士を戦わせ、勝ったものが大魔法使いを手に入れる。


「私が欲しければ戦え!戦って、戦って、血を流すのだ!強いものに私をやろう!!」


ふははは!と狂ったように笑う大魔法使い。そして世界中が戦争の渦へとのみ込まれていった。そんな過去を二度と繰り返さぬようにと、彼は封じられたのだ。


そんな淫魔な大魔法使いの封印を解いたエルナンドお兄様とランセル、ソルトが、其々に、淫らに、濃密に、ねっとりと絡み合うのが、裏設定の醍醐味だった。


「むふっ」


美しい男同士のモザイク必須の絡み合いを思い出して、思わず声を出すと、


「どうしたの、アシュレイ?」


キラッキラで純粋な目をしたリンちゃんと目が合った。


(退け、雑念!!)


後ろめたさが押し寄せて、脳内からピンク色の煩悩を追い払った。


下らぬことを妄想してる場合じゃない。大魔法使いを穏便に封じる方法を考えなければ。考えて、考えて、閃いた。


そうだ、男同士で従属の契約を結べば良いんだ!!

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