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青の封魔7(セイレーン視点)

山盛りの柘榴石を手に入れてからの、フェルナルド先生の仕事は早かった。プラチナブロンドの台座の中央に、青髪の封魔の魔力を染み込ませた丸い柘榴石が二つ。まるで双子石のように並んでいる。


装飾にもう少しこだわれば他のものに見えなくもないのだが、つるんと丸い石が並ぶ様は、まるでおっぱ…いや、自主規制しよう。いまの私には、どうしてもアレに見えてしまう。


「斬新ナ形デスネ…」


得意気に完成した封魔の指輪を見せびらかすフェルナルド先生に、どうにか理性的に答えた。


「へー?私が手に入れた石と、エルナンドが持っていた石をくっつけたんだね。…何だろう?何だかいやらしい形をしているね」


ランセル王子はもじもじと頬を染めながら、身をよじらせた。私と全く同じことを妄想したらしい。エルナンド様は、フェルナルド先生の手にある指輪をツッ…と指で撫でた。艶かしいその手付きに、さっと目を反らす。ランセル王子がゴクンと生唾を飲むのが聞こえた。


無表情に指でのの字を書くように指輪を撫でるエルナンド様。この方にだけは、指輪がアレの形に見えないのだろう。なんせ、アシュレイさん以外には無関心な方だもの。


「おっぱいみたいだな、これ」


無表情を崩すこと無く、エルナンド様がポツリと告げた。


見えてたー。ちゃんとアレに見えていましたよ!その上でこねくり回してたんですよ、このお方!!どういった神経をお持ちですか、エルナンド様?いえ、エロナンド様!!


「直球だな」


「え?お、おっぱ…?そんなはっきり」


ぷっと吹き出すソルト様。ランセル様は顔を真っ赤にして完全に逆上せてる。王子様はむっつりだけど初だった。



フェルナルド先生の話によると、純度が高く、それなりの大きさの柘榴石がひとつあれば、アシュレイさんの体の中に残っている大魔法使いの魔力は十分封印出来るらしい。


であるにも関わらず、指輪に不自然に2つも石をはめ込んだのは、アシュレイさんへの愛が暑苦しいランセル王子とエルナンド様が、封魔の指輪に使うのは、自分が持っている柘榴石だ。と言って一歩も引かなかったからだ。まぁ、フェルナルド先生のセンスの無さも、問題だったのかもしれないけどね。


指輪なら2連にすれば可愛かったのに。


「そうそう。同じ指輪を2つ作っておいたよ。君たちのことだから、どっちがその指輪をしてアシュレイ嬢を助けるか?で、また言い争いそうだったから」


糸みたいに細い目を、ますます細めて微笑むフェルナルド先生。まるで寛大な心で子供のわがままを聞いてあげているような雰囲気だけど、その手には、もうひとつ封魔の指輪があった。


「2個も作っちゃったんですか?そのおっぱい指輪!!」


あ、口に出して言っちゃった。慌てて両手で口を塞ぐ。淑女たるもの『おっぱい』なんて破廉恥な言葉を口に出しては行けません。


「セイレーンの言う通りだね。そもそも2個作るならおっぱい指輪じゃなく、ピアスにすればよかったんじゃない?」


「私はおっぱい指輪で問題ないぞ?そもそもアーシュの封印を解くと言う大役を、私以外の人間に任せるつもりは微塵もない。例え、それが協力体制と言う形でもな」


この国のトップに立つ高貴な方々は、惑うこと無く『おっぱい』と口にした。ってかさ、2個作るなら柘榴石2個つなげて、『おっぱい』にする必要なかったよね。


兎にも角にも、自分一人でアシュレイさんを目覚めさせるのだと言い張るエルナンド様を説得して、ランセル王子とエルナンド様の2人でアシュレイさんの中の大魔法使いの魔力の欠片を封じることになった。


おっぱい指輪を指にはめたランセル王子とエルナンド様が、指に集中して指輪に封魔の魔力を集める。彼らが魔力の流れに集中している傍らで、シャツの胸元からペンダントを出したソルト様が、彼らと同じようにペンダントの中央に燦然と輝く柘榴石に魔力を集中させた。


「は?ソルト様?その石はどこから?」


ソルト様の胸元で輝く柘榴石は、見たこともないほど大きかった。


「シーッ。内緒ね」


口に指を当てて、そっと口止めをされてしまった。腹黒いよ、ソルト様。


十二分すぎるほどの封魔の魔力によって、アシュレイさんは目覚めた。


赤と青の織り成す光の帯に包まれて目覚めるアシュレイさんは、まるで美の女神のごとく神々しかった。

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