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青髪の封魔4(セイレーン視点)

『麗しの太陽の御子デューイ殿下様


貴方様の灼熱の笑顔に心を奪われ、燃え付きそうです。この小さな胸が灰と化す前に一言お伝えしたきことがございます。わたくしは小さき、小さき胸を震わせながら貴方様がいらっしゃるのを待っております。


会いたくて震えるセイレーンより』




「もうね……文才が無さすぎて、色々と突っ込みたい部分が満載ではありますが、この手紙は何のいたずらでしょうか、王子様?」


眉間に深いシワを刻み、目をつり上げて、目の前に可憐に佇むランセル殿下をグイッと睨む。ランセル殿下は両手を胸の前で握りしめ、うるうると目を潤ませた。


「勝手にセイレーンの名前を使ってごめん。けどアシュレイ姫を助けるためには柘榴石が必要なんだ。国家間の諸々の大人の事情で、私自らデューイ王子に頼めなくてね。お願いだよセイレーン、アシュレイ姫のために一肌脱いで?」



キラキラ目映い(かんばせ)をこちらに向けて、真剣な目で告げるランセル王子。その姿は尊い程に可憐だ。けれどセイレーンは既に知ってしまった。このお姫様みたいに愛らしい王子様が、誰よりも『あざとい』と言うことを。

両手を胸の前でぎゅうぎゅうと握りしめて、庇護欲をそそる潤んだ瞳も、この王子の計算だということをセイレーンは見抜いている。



「そんな可愛い顔してお願いしてもダメですよ。柘榴石と言えば、燐国シュプリーム国の国石じゃないですか!私みたいな一般市民の小娘が簡単に『欲しいからください』ってお願いできるものじゃありません!絶対に無理です!」



そう言って断固拒否すると、可憐で純粋な王子様は『おやっ?』と言うように目を大きく見開いた後、「私の『お願い攻撃』が効かないなんて」と困ったように目を伏せた。

もうね、何から突っ込めばいいかわかりませんよ。それでも一言だけ言わせてもらおう。


「私は貧乳じゃありません!!」


「一番訴えたいのはそこ?」


ぷんぷんと怒って訴えると、ソルト様に無表情で突っ込まれ、ランセル殿下には「大きさは関係ないよ。大切なのは形と質だから」と何だか訳の分からない慰めの言葉を賜った。



そんなこんなで脱線しつつも、最終的にはにはランセル殿下とソルト様に説得されて、デューイ王子に会うことを承諾した。

私自身、陰湿ないじめから助けてくれたアシュレイさんには目覚めて欲しいと、切に願っているから。




校舎裏の大きな木の下で、デューイ王子の赤い髪がさらさらと風に靡く。大きな赤い目がまっすぐに私を見つめる。背が高く体格のいいデューイ王子は、人懐っこい笑みでこちらを見た。


ランセル殿下やエルナンド様のような圧倒的な美しさはないけれど、デューイ王子は間違いなく格好いい部類の人間だった。親しみやすい柔かな表情と仕草と大きな体は、まるで人懐っこい大型犬のような印象だ。


お日様みたいに穏やかな目をしたデューイ王子に、セイレーンは当初の目的を忘れて癒されていた。


(荒んで刷りきれた心が浄化されてゆくようだわ)


ほーっと息を吐くと、デューイ王子がランセル殿下が書いた手紙を背広の胸ポケットから出して見せた。


「手紙ありがとう。なかなか個性的な文章で、衝撃的だったよ」


クスクスと笑うデューイ王子に、恥ずかしくて顔が赤くなる。自分で書いた訳じゃない。けど言い訳を口にすることができず、両手で顔を隠した。


こんな辱しめを受けるなんて。許すまじ、ランセル王子!!


あの王子様が、この国の皇太子だろうと関係ない。心の中でランセル殿下の髪が儚く散って立派な若ハゲになるように、呪いの呪詛を呟いた。


『剥げてしまえ、ランセル!!』

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